Nature 2月号から薬学科の5年のRuikoちゃんのプレゼン。オートファジー調節は様々な病気の治療ターゲットとなる可能性があることは知られていた。オートファジーを特異的に誘導する薬は未だ存在しなかった。ある種のウイルスはオートファジーを調節することで自己に有利な環境を作り出していることを基に、beclin1の267-284番目のアミノ酸がNefとの結合に必要であることを明らかにし、その後、可溶性を上げるアミノ酸の置換とともに、細胞透過性を上昇させるためにTatを融合し、beclin1を基盤にしたオートファジー調節ペプチドを作成することができた。また、Beclin-1をゴルジ体にトラップするGAPR-1が内在性のオートファジー抑制因子であることを明らかにし、Tat beclin1の作用メカニズムとして、Tat beclin1がゴルジに存在するbeclin1とGAPR-1の相互作用を解離させ、beclin-1を細胞質放出させ、オートファジーを誘導することがわかった。さらに、ハンチントン病、AIDS、チグングニヤ熱、ウエストナイル熱の治療に有用である可能性も in vitroやin vivoで明らかにしている。高濃度処置では毒性はあるが、有効量では、副作用もないという。懸念されることは、抗原性が出てくることであるが、チグングニヤ熱、ウエストナイル熱が新生児において問題なっていることから、新生児のころだけに単回投与だけで生存率ががあがるのであれば良いのかもしれない。サプリメントのfugureだけで27個あった。データ量(様々な観点から、これでもかと抑えのデータを取る)は信頼性高い研究成果としてアピールするには必須である。プレゼンは大変高いレベルであった。質疑応答も立派であり、内容をきちっと自己消化されていることが伝わってきた。発表時の声の張りも良い。後輩や演習で参加している学部2年生にとっても見本になるゼミであった。
2013年5 月14日 (火)
2013年5 月13日 (月)
立て続けに 祝 論文
関西学院大学の関博士が独立して、初めてのオリジナル論文がついに発表されます。発生学の領域で有名なDevelopmnentという専門誌に受理されたとのことです。ラボオーガナイザーとして独立して初めての論文は大変嬉しいものです。おめでとう!立て続けに、投稿されているもう一つの論文も楽しみです。今年は論文を量産していくということ。ポジティブループですね。後輩達にも良い刺激になります。沖米田博士の良い先駆者として、お互い切磋琢磨しながら、さらに成長していくことでしょうね。
先週の腎臓学会でもトピックでしたが、慢性疾患はヒストン修飾を含め、エピゲノムで説明するしかできないのではと思います。多因子性疾患の創薬は一つのメカニズムの薬ではコントロール不可能であろうと思います。さすが関君です。先見の明が素晴らしいです。
紹介される論文の概要は以下の通りです。
『始原生殖細胞の増殖が世代を超えるエピゲノム変異を修復する』
我々は以前、卵・精子の元になる始原生殖細胞が、DNAのメチル化などのエピゲノム情報をゲノム全体から消去することを明らかにしました。今回の論文では、始原生殖細胞がDNA複製時のメチル化維持に関わるUHRF1の発現を抑制し、さらに活発な細胞増殖を行うことで、DNA複製依存的にDNAメチル化情報を希釈することを突き止めました。DNAのメチル化は食事・環境などによって変化し、特に始原生殖細胞が存在する胎児の子宮環境が生まれてくる子供だけではなく、次の世代の疾患(糖尿病・心疾患)を誘起することも分かってきています。今回の報告は、始原生殖細胞の増殖活性が世代を超えて伝達するエピゲノム変異の修復機構を担っていることを示しており、始原生殖細胞の増殖活性を指標とした世代を超えるエピゲノム変異原のスクリーニング法の開発が期待できます。
投稿情報: 17:18 | 個別ページ
沖米田ラボ発進!
カナダにおける7年間の研究生活から帰国し、この4月から関西学院大学理工学部でラボをスタートした沖米田博士から論文受理と新聞掲載の報告がありました。カナダ時代の主たる研究がNature Chem. Biol.に昨夜、WEB公表されましたとのことです。神戸新聞にも紹介されました。既に独立している関博士と共に、協力し合いながら頑張っていくとのことです。その意志表明をしている沖米田博士を偶然 youtubeで見つけました(あごの贅肉をさわっている様子がちょっと気になりました)。中々、いい雰囲気でラボがスタートしたようです。教え子、第一号達と共に、頑張っていってほしいです。近いうちに、関西学院大学における成果も発出されていくでしょう。
今日の神戸新聞から
「関西学院大理工学部(三田市)の沖米田司准教授(37)らの研究グループが、40歳までに亡くなることの多い呼吸器や消化器の遺伝病で、白人を中心に世界に患者が約7万人いる「嚢胞性(のうほうせい)線維症(せんいしょう)」について、治療薬開発につながる原因改善の仕組みを発見した。同症は根治療法が確立しておらず、研究成果は12日の英科学誌「ネイチャーケミカルバイオロジー」電子版に掲載された。
肺や腸管などの表面を覆う上皮細胞の膜には本来、「CFTR」と呼ばれる膜タンパク質があるが、それが遺伝子の異常で膜に現れないため同症を発症する。CFTRは粘液の成分や水分量を制御し、細菌感染の防止に重要な役割を果たす。日本ではまれだが、同症は国から難治性疾患克服研究事業の対象に指定され、主に肺の慢性的な感染症を引き起こす。
従来、CFTRが細胞膜に現れるよう改善する低分子化合物は見つかっていたが、作用する仕組みが不明だった。沖米田准教授とカナダのマギル大医学部のグループは、化合物がCFTRのどこに作用するのかを解明。作用する部分が違う3種類の化合物を併用することで、異常があったCFTRが膜に現れ、ほぼ正常な機能に戻ることを発見した。
沖米田准教授は「さらに効果的で安全性の高い化合物を探索し、新薬の開発に貢献したい」と話す。(藤森恵一郎)」
投稿情報: 17:09 | 個別ページ
祝 出産
元 秘書のAIさんから第2子誕生のメールがありました。4月30日で、3180gです。名前は「生まれた子供は百花と同じように花いっぱいの道を歩んで欲しいと思い「さくら」と名付けました。」とのことです。親の思いと愛情がたっぷりですね。おめでとうございます。
AIさんからのメールに重要なコメントがありましたので掲載します。今後、出産する人も考慮してみたらどうでしょうか。
「今回は産後なるべく早く体力を回復させたいと思い、硬膜外麻酔による無痛分娩にしました。麻酔が効くまでは陣痛の痛みはそれなりにあったのですが、麻酔が効いてからは痛みもなく落ち着いて赤ちゃんを迎えることができました。回復も早く、産後3日目には家に帰りたいなあと思うくらいでした。無痛分娩が主流になっている欧米の産婦人科では産後3日程度で退院させられるというのも納得です。「お腹を痛める」という価値観が根付いている日本ではなかなか普及しないようですが、もっと定着すれば、痛みが怖くて子供を諦めている人も選択肢が広がるのではないかと思いました。」
そういえば、私の家内がサンフランシスコで次男を出産した時は、出産から24時間以内に退院をさせられました。名前も退院までに決めないといけないということで、前もって、男と女の子の名前を用意していました(出産まで定期検診もなく、男か女かも生まれてくるまで知りませんでした)。硬膜外麻酔でも何でも無かったです。夜中に破水し、すぐに病院に行ったにも関わらず、4時間ほど待合室に待たされ、それから陣痛を促すために病室を歩き回るように言われ、そして、陣痛促進剤を点滴され、ひどい陣痛に苦しみながら病院到着から14時間後に出産であったにも関わらず、24時間以内に退院でした。家内もあまりにも疲労していましたので、私も1週間ラボを休み、長男の世話や家事をしていました。懐かしい思い出です。保育園での送り迎えで、昨日、出産したというお母さんが来ていたのは驚きでした。出産は病気ではないという発想なのでしょうか。ちなみに、その時に知り合った台湾からの人は、台湾では、日本と同じようにしばらく入院して安静にすると言っていました。国によって様々なのでしょう。とにかく、少子化社会を改善するための施策は大事ですね。社会が子供を責任もって育てるシステムが必要です。親に任せるのではなく、子供は社会の宝という認識です。
投稿情報: 16:47 | 個別ページ
2013年5 月 8日 (水)
糖尿病とアルツハイマー
昨日の日経新聞ニュースから。
アルツハイマー患者の脳内の状態(遺伝子)が糖尿病と同じ状態に変化していることが、88人の脳の解剖の結果、明らかになったという。糖尿病患者は脳内の代謝が悪いため、神経細胞が死んでアルツハイマーの発症や進行の危険因子になるという(糖尿病を患うとアルツハイマー発症率が3〜4倍に高まる)。PuB Medで「diabetes mellitus alzheimer」を検索してみると、多くの関連の報告がなされているが、日本人で、解剖脳で、遺伝子レベルで証明されたことに意味があると思う。
投稿情報: 09:56 | 個別ページ
サーカディアンリズム創薬が可能!?
今朝は、Cell Metabolism 2月号に連報で明らかになった研究成果を薬学科5年のMoriuchi-が紹介。サーカディアンリズムの異常により、生活習慣病等、種々の疾患発症・悪化が起こることがわかっていた。サーカディアンリズムは光や食事によって影響を受ける。昼夜逆転や不規則な食事が体調を狂わせるのである。これまで、光を介した調節メカニズムはかなり明らかになっていたが、食事(血中グルコースの上昇)による詳細な調節メカニズムは明らかになっていなかった。サーカディアンリズムに関わる代表的な分子はBMAL1、CLOCKであり、その下流分子であるPER、CRYである。今回の論文で明らかになったことは、細胞内に取り込まれるグルコースが増えてくると、ヘキソサミン合成経路を介してPERがO型糖鎖修飾を受け、PERの(カゼインキナーゼによる)リン酸化を競合的に阻害し、PER/CRYによるBMAL1/CLOCKの転写活性の抑制が解除される(BMAL/CLOCKによる転写調節が亢進)。さらに、CLOCKもO型糖鎖修飾をされると、ユビキチン化を受けれなくなりタンパク質分解を受けない。したがって、BMAL1/CLOCKの核内量が増える。したがって、PERとCLOCKの糖鎖修飾により、BMAL/CLOCKによる遺伝子発現調節が活性化され、発現調節リズムが明確になる。一定のリズムで遺伝子発現が高くなったり低くなったりすることが生体の機能を維持する、いわゆる健康を維持するために重要である。二つの異なるグループによる研究成果により、間食や夜食がよくないという詳細な分子メカニズムが明らかになった。創薬という観点からは、病態を考慮しながら、O型糖鎖修飾を担う糖転移酵素や糖分解酵素が創薬ターゲット分子になりうるのだろうか。しっかり勉強していることを伺い知ることが出来る、情報を良く整理した良い朝ゼミだった。Moriuchi-は来月から実務実習が始まる。実習中も研究マインドを忘れずに頑張るだろう。期待している。
投稿情報: 08:30 | 個別ページ
2013年5 月 7日 (火)
2013年5 月 1日 (水)
低栄養下におけるガンの悪化のメカ
投稿情報: 08:12 | 個別ページ