Science 1月号。Teramonのプレゼン。マウスでの研究成果であるが、妊娠初期にウイルス感染すると母親由来のIL17aが胎児の脳に影響し、自閉症様の症状を示すようになるということを明らかにした論文。ウイルス感染の代わりにPoly (I:C)を投与している。最終的にanti-IL17a抗体を投与すると自閉症の症状が起こらなかったという。これまで、臨床的には、自閉症の子供の血清中ではIL-17aが過剰に産生されていること、自閉症においてIL17Aのコピー数が増加していること、妊婦のウイルス感染が胎児の自閉症リスクを増加させることなどの報告がある。自己免疫疾患の一つとして捉える説もあるという。妊娠初期のウイルス感染リスクを無くすのが重要であるが、自閉症を病気として捉えるのではなく、受け入れることがより大切なのだと思う。多くの有名な芸術家の多くは自閉症であるという話もある。人類は多様であることが社会にとって重要なことであり、最大の特徴であると思う。近い将来、ロボットが社会活動するのが当たり前になるだろう。それでも、人類は多様であることを守り続ければ、常にロボットの上に立つことが可能であろう。多様を受け入れて初めて進化する。多様であるからこそ進化する。昨今の教育システムのパターン化は、均質化は、将来の日本にとってプラスにならないのではないか。
2016年6 月30日 (木)
2016年6 月29日 (水)
ジカウイルス感染病態のメカ
Cell 5月号とNature 6月号から。Yurippeのプレゼン。ブラジルで流行しているジカ熱。ジカウイルスが主にネッタイシマカを媒介して感染を拡大している。その結果、感染地区では、小頭症の新生児が急増しているが、その病態発生メカニズムはわかっていなかった。この論文では、ジカウイルスが胎盤を介して胎児へ感染し、胎児の発育不全や死をもたらすことを、IFNα受容体を欠損したマウスやIFNα受容体抗体を投与した正常マウスにおいて明らかにしている。そのメカニズムは、胎盤バイア機能を有するトロホブラストで細胞死を誘導しているという。その際、胎児の中脳、後脳で細胞死が観察されたという。ジカウイルスが脳をどう攻撃するのかについては、Nature 6月号に報告された。それによるとジカウイルスはマウス脳皮質において神経前駆細胞を標的とし、神経発生を抑制するという。これらの動物モデルは、ヒトの病態を反映しており、ワクチン開発や治療薬開発のために有用であろう。Nature に、ジカウイルスに対するDNAワクチンができるという論文が本日発表された。ヒトへの応用も近いかもしれない。
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2016年6 月28日 (火)
2016年6 月21日 (火)
食事量を調節するために働く介在神経を同定
Cell 4月号から。Yoshioのプレゼン。「食べ物を認知してから、食事する、または、食事しない」をどのように判断しているかはわかっていなかった。この論文では、ショウジョウバエを用いて、介在神経のIN1が食事をすることを決定する神経であることを明らかにしている。この介在神経は、味覚を伝える神経と運動神経の間をつなぐ神経である。満腹時に食事をとらなくなるメカニズム(IN1が活性化しなくなる)を明らかにしたという。絶食時は、食事後も足りなく、IN1を持続的に活性化することで、食事を続けさせることができるという。ショウジョウバエ1匹の食事量をナノリットルレベルで測定できる装置を自作したことにより、本研究ができたところもポイント。
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2016年6 月20日 (月)
骨形成の新たなメカ
Nature Med. 5月号から。マリアムのプレゼン。LGR4 (leucine-rich repeat-containing G-protein-coupled receptor 4) がRANKL (RANK ligand) の受容体として働いていること、そして、osteoclastの分化や骨吸収を抑制することを明らかにした論文。RANKL-RANK signalingはosteoclastの分化に重要であることは知られていた。今回は、LGR4にナンセンス変異があるヒトは 骨密度が低いことは知られていたが、そのメカニズムが解明されたということらしい。
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2016年6 月14日 (火)
からあげとアルツハイマー
Cell 5月号から。Tubasaのプレゼン。高脂肪食が脳機能に影響することは知られていた。そのひとつのメカニズムとして、高脂肪食により、血液脳関門の内皮細胞に高発現するグルコーストランスポーターGLUT1の発現低下があり、脳内へのグルコースの取り込みを抑制され、アルツハイマーの病状を悪化させるらしい。この論文では、高脂肪食処置の早期には確かにGLUT1の発現が下がるが、ひと月でその低下は認められず、逆に発現が上がっていたという。そのメカニズムとしては、血液内のCD206陽性マクロファージから産生されるVEGFがGLUT1の発現を上げるというものである。肥満とアルツハイマーは密接に関係するが、その悪化を生理的に抑制している物質がVEGFであるという。抗がん作用を期待して、抗VEGF抗体や抑制薬の投与が考えられているが、肥満のアルツハイマー病患者に投与してしまうと症状が悪化してしまう可能性があるという。歳取ってからからあげや豚バラは控えよということか。。
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2016年6 月13日 (月)
腸内細菌から産生されるTMAOは血栓症リスクを上昇
Cell 3月号から。Harukyanのプレゼン。血中のTrimethylamin N-oxide (TMAO)と心血管イベント発症率の間に密接な関係があることが報告されている。TMAOが高い群では、約60%も発症リスクを高めているという。この論文では、その裏付けを取っている。TMAOが直接血小板凝集をin vitroおよびin vivoで起こしているという。コリン食負荷し、塩化鉄誘導性血栓症モデルを用いた実験において、腸内細菌でコリンからTMAを合成し、肝臓において変換されたTMAOが血中にまわると、血栓症が悪化するという。腸内細菌移植実験においてもその重要性が裏付けられている。TMAOのターゲット分子は?TMAOは血小板内に取り込まれて作用するという。この実験において面白いのは、マウスのstrainによって、腸内細菌の生着パターンが異なるというデータである。これまで、strainの違いで病態を発症しやすいのとそうでないのがあったという知見に腸内細菌の違いがその原因であるとすると大変興味深い。
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2016年6 月10日 (金)
2016年6 月 2日 (木)
アトピー性皮膚炎とJAK1-Stat経路
JCIの5月号から。Ture君のプレゼン。アトピー性皮膚炎などの進行性の皮膚炎の機序として、JAK1の活性化点変異 (gain-of-function)によるJAK1-Stat経路の異常活性化、セリンプロテアーゼの発現増加、そして掻痒症状が現れるということを明らかにした論文。SPF環境で症状が現れることから、自然発症であるという。全身の細胞のJAK1に変異が入っているために皮膚のみの現象であるという議論はしずらいが、JAK阻害因子を皮膚に処置したところ皮膚炎の発症を遅らせることができたという。九州大学の津田先生らが明らかにし、Nature Med.に昨年発表した、アストロサイトにおけるStat3の活性化とかゆみ発症のデータと関連づけると興味深い。理研の広報サイトに詳細な説明がある。
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