Nature Med.2月号から。マルちゃんのプレゼン。線維症(肺、肝、腎)や全身性強皮症の治療薬開発において、TGF-βシグナルの暴走を制御することは重要であることは言うまでもない。本論文は、TGF-βのターゲット遺伝子を制御するNR4A1という核内受容体の重要性が示されている。全身性強皮症患者の皮膚のNR4A1のmRNAが上昇していた。将来に検討していくと、TGF-β刺激が長時間つづくとNR4A1遺伝子のヒストン脱アセチル化により発現抑制されるともに、TGF-β刺激時に、AktによりNR4A1がリン酸化されることにより不活性化され、NR4A1によるTGF-βのターゲット遺伝子発現抑制が無くなりコラーゲン合成が増えて線維化が進む。繊維症ではない、通常時は、TGF-β刺激が入るとNR4A1を活性化し、TGF-βのターゲット遺伝子発現を抑制するという。NR4A1アゴニスト Cytosporone Bは繊維化を抑制するという。副作用としては、NR4A1アゴニストの骨格筋における脂肪分解•エネルギー消費促進作用により、線維化患者の体力を消耗することが懸念されている。今後の研究の展開が期待される。このNR4A1のPOCが取れた点で意味がある研究である。
2015年5 月26日 (火)
2015年5 月22日 (金)
Long noncoding RNAが小さいペプチドをコード、これがまた重要
Cell 2月号から。寺本くんのプレゼン。筋肉の収縮弛緩の制御において、SERCAという分子は筋小胞体へのカルシウムイオンを取り込むために重要な役割をしていうことは有名であり、この分子あるいは、このSERCAを制御する分子の変異は重篤な骨格筋疾患などの原因となっている。SERCAの抑制性の制御分子として、phospholambanやsarcolipinは見いだされていたが、これらの分子は速筋以外で発現し、速筋に同様な機能を有する分子はまだ見いだされてはいなかった。今回の論文では、翻訳されないnoncoding RNAの中でも骨格筋特異的に発現するlong noncoding RNA(この定義は、100アミノ酸以上をコードするopen reading frameがないnonvcoding RNA)が実は小さいサイズ(46アミノ酸)をコードしており、それがSERCAの制御分子であったことがポイントである。この分子はmyoregulinと命名され、phospholambanの制御領域と相同性が高い分子であった。心筋においてβ1受容体を刺激した後のA kinaseが活性化されるとphospholambanの16番目のセリン残基がリン酸化され、phospholambanのSERCA抑制作用がなくなり、細胞質のカルシウムイオンの量が増えて心筋収縮力が増大することは明らかになっている。同様な制御機構がmyoregulinにも見いだされれば、骨格筋の収縮力を高める薬が見いだされるかもしれないという。今、noncoding RNAとして扱われているものにも宝が隠されていることが示されたことは大きい。分かった時点でnoncoding RNAとは言えなくなるということか。
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2015年5 月21日 (木)
気道において、細胞外で成熟するウイルスの感染能を抑制するPAI-1
Cellの2月号から。ユリっぺの紹介。ウイルスが細胞内で成熟し、感染能をもつものと、細胞外でヘマグルチニンの開裂により成熟し、感染能をもつようになるものがある。今回は細胞外で成熟するメカニズムを明らかにし、その成熟過程に、細胞外気道プロテアーゼであるTMPRSS2、HAT、tryptaseなどが関与しているが,これらを抑制する感染細胞由来のPAI-1 (plasminogen activator inhibitor 1、uPA/tPAを阻害する血栓溶解システムの制御分子としては有名。抗ウイルス作用は知られていなかった)が極めて重要な役割を果たしていることが明らかになった。この現象は、インフルエンザAウイルスのような細胞外で成熟するウイルスに共通であることも示されている。これまで、プラスミンもヘマグルチニン開裂に関与し、ウイルスの感染能の上昇に関与していることは知られていたが、今回の論文は気道におけるウイルス感染において、気道プロテアーゼの抑制にもPAI-1が重要であることが証明されたことがポイントか。tPAの投与時はウイルス感染が増悪しやすいのか?PAI-1のヘテロノックアウトでも明確に変化があるので重要であるのは間違いないだろう。非特異的なプロテアーゼ阻害薬が良いという解釈もできる。
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2015年5 月20日 (水)
心筋細胞の修復に必要な分子
Nature Med.から。マリの英語でのプレゼン。虚血心臓において、心筋細胞が修復する過程において、Reg3β依存的なマクロファージ蓄積が必要という論文。心筋梗塞等の初期に、オンコスタチンMというIL-6ファミリー分子が単球、マクロファージや好中球などで産生されることは知られていた。このオンコスタチンMが心筋細胞の脱分化の重要なメディエーターであり、心筋保護作用があるという。今回の論文では、このオンコスタチンMの下流にReg3βがあり、心筋細胞から産生されたReg3βが産生され、Reg3βがオンコスタチンMを産生するマクロファージをさらに心筋細胞に呼び寄せ、さらに、修復を促進するというポジティブフィードバックループを形成していることが明らかになった。Reg3βのノックアウトマウスでは、心筋のダメージ時のマクロファージの集積を顕著に抑制し、その際、好中球の除去が不十分になるなど、障害が顕著になるという。
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2015年5 月19日 (火)
フィリピン出張
先週14日に、福岡空港からフィリピンに向かって旅立った。夕方に空港に到着し、空港からタクシーでホテルまで向かった。距離としては20kmくらいだが、大渋滞のため1時間もかかった。交通ルールもあってないようなもの。ホテルの近辺は治安も良く、素晴らしい環境であるが、そうでないところとのギャップの大きさは何度見ても驚くばかりである。夜、食事をし、早めの就寝。翌朝は、8時には1日契約したタクシーでマニラからロスバニョスまで向かう。行きは2時間かかった。交通事情が特殊なだけに、乗車中は緊張しっぱなしで、無言であった。大学の近くに来ると、「private pool」のサインを持った人たちを見かけるようになり、何の意味かわからなかったが、温泉地であることをようやく認識できた。タクシーの運転手もフィリピン大学のロスバニョス校は初めてであり、標識通りに行くと、次第に山を登り始め、山深い急坂など不安感いっぱいであった。山の中腹の広大な森林の中に点在する建物。それがキャンパスであった。その斜面から降りていったところに有名な稲の研究所と試験田があった。何のためにここまでやってきたのかはうまくいってから紹介したい。MOU締結の話を含め、face to faceでたっぷりdiscussionができて本当に良かった。メールでは、このような関係構築は絶対無理である。「運を運びたければ足を運べ」まさにこの言葉につきる。帰りは比較的スムーズに戻れたが、それでも1時間半。夜は、フィリピンに在住の知り合いの日本人家族と会食。翌日は朝早くホテルを出て、空港に向かった。土曜日の朝でもあり、30分で到着。後は、戻るだけ。福岡には2時くらいに到着。今からスタート。
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祝 論文掲載
アトランタの海外ジョイントラボからの報告。
マツケンから論文の掲載の連絡がありました。ミヤチンも共著者です。おめでとう!
以下、マツケンより
「私・Ji-Yunのダブルファーストで投稿していた論文(電子版)が先日The Journal of Immunologyに掲載されましたので、改めてご報告させていただきます。本論文では、心疾患・認知障害の治療薬Vinpocetineが、中耳炎の起因菌(肺炎球菌)によるmucin過剰産生を抑制すること、およびその分子機構を明らかにしました。また、今回興味深い知見として、肺炎球菌感染後にVinpocetineを投与することで、難聴の改善および細菌クリアランスの促進が認められました。今後も中耳炎に対するVinpocetineの有用性、および点耳投与におけるVinpocetineの安全性等について更なる検討を行っていき、実用化を目指して研究に励んでいきたいと思います。
この研究を始めてから論文になるまで、約1年半強かかりましたが、家族や先生方、友人達の多くのサポートによって無事やり遂げることができました。今後も皆様への感謝の気持ちを忘れず、grant workや別の論文で良い報告ができるよう頑張っていきたいと思います。」
投稿情報: 10:58 | 個別ページ
ドパミンアゴニストが全身の炎症を抑制できる!?
よしお君のプレゼン。Cellの1月号から。NLRP3 inflammasomeは種々の病態の発症に大きく関与している。この論文では、代表的な神経伝達物質であるドパミンがドパミン受容体D1を介してNLRP3 inflammasomeを抑制したことを明らかにした。その下流のメカニズムとして、Gsを介して細胞内で増加したcAMPが直接NLRP3 inflammasomeの活性化をオートファジーの誘導により抑制することを明らかにしている。cAMPが増加することにより、NLRP3とMARCH7(E3リガーゼ)の結合が促進された結果という。ドパミンが脳内炎症を含む全身の炎症の抑制に関わるという。これまで、ドパミン受容体がほとんどの免疫細胞において発現していることは知られていた。パーキンソン病においてドパミンニューロンの変性があるが、このドパミン不足は黒質線条体部における脳内炎症を増強していることも考えられる。このドパミンの作用が見られた時のドパミンの投与量が多いように思う。この論文は一貫してマウスあるいはマウス由来の細胞を使っている。種差があるのではないだろうか。修士の頃に、マブテロールというβ2アゴニストの薬理作用を亜硫酸ガス暴露の気道炎症モデルで調べていた時に、抗炎症作用のような現象が認められていた。当時は、β2アゴニストに抗炎症作用がある訳ないという意見だったが、今回の論文のメカニズムが関係していたかもしれない。種差の観点での知見がほしい。。
投稿情報: 07:59 | 個別ページ
2015年5 月10日 (日)
色々あり、感謝と今からの縁
5月7日の木曜日は、九州保健福祉大学薬学部を訪ねました。先輩である本屋薬学部長にはお忙しいところ色々とお世話になり、貴重な情報収集ができました。夜には、同級生のチカコさん、白崎教授、山崎教授も一緒に会食。楽しい時間でした。そして、金曜日の朝はやくからとんぼ返りで、恒例の薬学部長杯ソフト(50年以上は続いている)の開会式で挨拶と始球式(昨年、久しぶりの優勝でした。優勝カップ返還でした)。そして、夕方からは、大学院講義(本分野OBの女性研究者3名による)。そして、5時半から、Bチームのソフト試合。学生に負けずと、しっかりホームランを打ち、毎年1本のノルマは達成しました。満足です。忙しいので、あとは、Aチームの決勝の試合に出るだけと伝えています。そして、その後は、本日の大学院講義の講演者たちとの会食(というか、いろいろ意味で激しい飲み会)。土曜日は、昼から、熊本分子機能研究会2015と称する、総勢21名のリレー式の講演会。多くの人材が、多方面で活躍している様子が学生たちに伝わったことでしょう。また、演者間の新たな縁が生まれたようでした。最後に、私が近況報告と決意表明を45分間。その後、生協の食堂で宴会(総勢130名くらいか。よく入ったものです)。その様子は、後日、写真付きでアップしていきます。皆、それぞれに笑顔で、かつ、新たな縦、横のつながりが生まれたようです。オーガナイズした首藤先生、野口さんをはじめ、在ラボの学生、お疲れさまでした。また、遠くから駆けつけた多種多様なOB、先生方に心より感謝いたします。学生たちにとっても大変良い機会になったことでしょう。私の同級生も十数名駈けつけてくれました。午前3時頃まで味噌天神界隈は大変賑やかだったようです。2次会で吐きまくった女傑、1次会会場のトイレで深夜遅くまでひとり眠ってしまった女傑(誰にも気づかれず、建物は鍵がかけられていた)、などなど、今の時点の情報だけでも挙げたらキリがないようです。日々の世界を忘れる、重要な空間と時間だったようです。多忙なヤナギくん(マン)も参加してくれ、一緒に写真をと皆からモテモテでした。感謝、感謝。
投稿情報: 14:55 | 個別ページ