2014年12 月26日 (金)
博論提出〆切と忘年会
今日は、午後1時が博論〆切です。Ryo-chinとMatsu-shinが昨夜までどたばたやっていました。午後3時からバスに乗って、天草の大矢野の旅館で、忘年会です。街中で、2次会までやる経費を考えると、トントンだと思います。この時期は、旅館はお客が少ないので、歓迎され、サービスも良い(はず)です。以前も年末の忘年会を天草で1泊というのをやっていましたので、その再開となります。美味しい魚ですので、飲み過ぎて戻すともったいないから、飲み過ぎないように学生には伝えていますが。。。。
忘年会の様子
帰る際にホテルの前で。数名は夜と朝早くに帰りましたので少なくなっています。多くの娘、息子と共に撮ったファミリー写真のようですね。
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祝 論文受理
1.Nature Commun.
GSUで頑張っているMiyachin、Seiko夫婦の努力で論文が受理されました。もうすぐ公開です。内容はその時に。リバイスの時に私も少しはヘルプしました。共著論文です。来年からは、関西学院大学のオッキーラボのスタッフで頑張るとのことです。
2.J. Virology
エイズ研で頑張ったゴーやんの研究成果です。共著論文です。ゴーヤんは現在、エール大学で新たに頑張っています。
3.J.Neuroscience
東大で頑張っているChihara准教授の研究成果です。「Dscam (down syndrome cell adhesion molecule)受容体がTBCD(tubulin folding cofactor D)の機能を介して微小管ダイナミクスを制御すること。それにより軸索伸長、樹状突起分岐が調節されていること」を明らかにした論文とのことです。もうすぐ公開されるでしょう。「background変異をマッピングするという今時珍しい「根性論的なアプローチ」で最終的に論文発表に至ることができ、指導教官として学生の粘り強さに感服した一報になりました」ということです。さすがChihara博士、レベルとオリジナリティが高い研究を展開していますね。今後もさらに大きく進展していくのが楽しみです。来月、HIGO最先端セミナーで講演をお願いしています。
投稿情報: 09:26 | 個別ページ
0.1 msのパルス幅の微弱電流の作用機序
PLoS ONEに受理された論文が、今月、公表された。Matsu-shinのドク論の一部である。博士号の権利が確保された。以下は、プレス発表用にまとめた文章の一部です。先月の臨床の論文と共に、重要な位置づけの論文です。
【メタボリックシンドローム、肥満2型糖尿病患者に朗報】
臨床実験で有効性が認められている新しい物理的刺激「特定微弱パルス電流」の作用メカニズムを解明
〜科学的根拠を確立した医療機器開発へ〜
熊本大学大学院薬学教育部遺伝子機能応用学分野博士後期課程 3 年、松山真吾、甲斐広文教授ら、同大医学部代謝内科学分野近藤龍也助教、荒木栄一 教授らと共に開発してきた、日本発医療機器 (今後、薬事申請、上市予定) が発する特定条件の微弱パルス電流の作用メカニズムを、実験モデル生物を用いた解析で証明しました。
本医療機器は、医薬品開発と同様の基礎研究によって、最適化した微弱パルス電流を採用していることが極めてユニークな特徴であり、この微弱パルス電流(MES)と温熱刺激とを同時に処置することによって、メタボリックシンドロームおよび肥満 2 型糖尿病患者を対象とした臨床試験で有効性が確認されています(EBioMedicine, 2014)。現在、糖尿病治療薬を服用しているが効果が不十分な患者に治療薬と併用しても有用であり、過体重や高齢のために運動療法が困難な状況の患者に対しても、適切な治療が可能となる画期的な医療機器です。本医療機器は、経済産業省医工連携事業化推進事業 (平成 24 年〜平成 26 年度) のプロジェクトとしても委託を受けています。
本研究では、本医療機器の最大の特徴である微弱パルス電流の生体への作用メカニズムを、実験モデル生物(線虫)を用いた検討により明らかにしました。微弱パルス電流が有する、ストレスに対する保護作用や過剰な脂肪蓄積に対する抑制作用が、 “生体のエネルギーセンサー”と呼ばれる分子 AMPKを活性化することで得られていたことが大きなポイントです。
本研究では、遺伝学的に優れた実験モデル生物である線虫 (Caenorhabditis elegans) を活用することで、個体レベルで微弱パルス電流の作用およびその作用メカニズムを解明に着手した。
線虫に対して、微弱パルス電流 (2 V/cm、パルス持続時間 0.1 ミリ秒、55 パルス/ 秒) を、1 日 1 回、1 回あたり 20 分間の処置を行った。
その結果、微弱パルス電流を処理した線虫では、
(1) 酸化ストレスや温熱ストレスによる致死的なストレス条件下での生存率の延長
(2) グルコースによる過剰な脂肪蓄積の抑制
が認められた。
これらの線虫では、ストレスを抑制する遺伝子(SODや HSP等)の著しい発現上昇が観察された。一方で、脂肪合成を制御する遺伝子(SREBP)の発現および核内移行が抑制されていることが観察された。しかしながら “生体のエネルギーセンサー”と呼ばれ、代謝応答やストレス感受性の決定に重要な分子である AMPK およ びその上流分子 LKB1を持たない変異株線虫では、微弱パルス電流による上述の効果は確認されなかった。
また、微弱パルス電流を処置した哺乳類細胞や線虫において LKB1-AMPK 経路が活性化されているか否か検討を行った結果、本経路の顕著な活性化が観察された。さらに、この経路の活性化は、微弱パルス電流がミトコンドリア活性を一時的かつ僅かに抑制することで細胞内のATP量が減少したことが原因であると考えられた。
以上、本研究結果は、微弱パルス電流が LKB1-AMPK 経路の活性化を介して、個 体へのストレス耐性付与と脂肪蓄積の抑制をもたらしていることを示している。LKB1-AMPK 経路は、糖尿病の経口治療薬メトホルミンに代表されるビグアナイド系薬剤の標的経路であるが、本薬剤は副作用がしばしば問題になっている。その一方で、我々が開発した、微弱パルス電流を応用した新規医療機器は、その安全性および臨床的有効性を基礎研究・臨床研究で示してきた。
本知見は、微弱パルス電流の作用メカニズムを裏付け、本刺激を応用した新規医療機器の積極的な臨床応用を促すものになる。
投稿情報: 09:08 | 個別ページ
英国薬理学会
12月15日からロンドンへ。初めて参加する英国薬理学会。来月から日本薬理学会の国際誌Journal of Pharmacological Sciences(JPS)がエルゼビア出版になり、オープンアクセスの電子ジャーナルになるため、その広報紙を持って宣伝に行くのも一つの目的であった。滞在中、1日だけ晴れて、後は、曇りか、雨。英国薬理学会は、世界各地からの参加者がいるにも関わらず、人数的には西南部会の2-3倍くらいの規模のようにも思えた。初日と3日目のポスターは基礎薬理学、2日目のポスターは臨床薬理学(ほとんど薬物動態研究)であり、日本とは異なり、臨床薬理学と合同の学会であった。確かに、英国薬理学会はBritish Journal of PharmacologyとBritish Journal of Clinical Pharmacologyの雑誌を出している。今回、エルゼビアのブースにJPSのポスターを置いてもらうと共に、ポスター会場で、しっかりしたデータを示しているポスターを訪ね、発表者にJPSへ投稿してくれるように頼んだ。ほとんどの発表者がJPSのことを知らず、私が説明するとIFが2.1〜2.5の間である雑誌であることを知り(European J. Pharmacology並み)、そんな薬理学雑誌が日本から出ていたことに驚き、投稿先の候補として前向きに考えてくれていた。現在、JPSへの海外からの投稿はほとんど中国であり、韓国、トルコ、ブラジルがそれに続く感じであるが、日本の薬理学研究者が国際学会に発表で行った際に、ポスター会場で、今回のような広報をすることで、知名度も上がり、IFも3を超え、世界の薬理学雑誌の5本の指に入るのではと思った。多くのシンポジウムなど聴きながら感じたことは、用いられている実験方法は、昔ながらの生理学的な手法が多く、分子よりも表現型の解析こそが、薬理学として重要であると言うこと。Pharmacology=Chemical control of Physiologyという言葉は改めて考えさせられた。当たり前であるが、Physiologyがあっての薬理学である。Physiologyを考えず、分子だけを調べただけの研究では、薬理学(病気を薬で治療、予防する学問)とは言えないと思えた。初めての参加であったが、日本の薬理学会とは趣が異なり、原点に戻れたような感覚になり参加して良かった。ただ、1度だけで良いかな。
羽田に向かう機上から、阿蘇山と取り囲む外輪山がきれいに見えた。
コンベンションセンターはビッグベンのすぐ近く。
エルゼビアのブースの一番前にJPSの広報パンフレット
投稿情報: 08:48 | 個別ページ
今年の米国細胞生物学会
久しぶりのブログである。12月4日からサンフランシスコのDr.GruenertとSuzuki君に会いに行き、情報交換をした。天気はあいにくの霧でGGブリッジは何も見えず、Dr.Gruenertの家を訪問した後、ダウンタウンで食事。その時の写真が以下の通り。Chosa君は学振の面接があり、夜の食事から合流。Revise中のNature Commun.がうまくいくことを願って別れる。
金曜日の夜にはフィラデルフィア入り。ホテル代が高いので、空港近くのホテルにした。先月のアン先生が泊まったホテルと同じ。周りにほとんどなく、不便ではあったが、ダウンタウンまでアムトラックで20分。ダウンタウンの駅と学会会場が繋がっているので便利と言えば便利だが、ダウンタウンの駅の雰囲気はあまり良く無い。土曜日の夜は、GSUのDr.Liと一緒に彼が宿泊するマリオットで食事。わざわざフィラデルフィアまで訪ねて来てくれた。3時間くらい話をしただろうか。楽しい時間であった。日曜日から学会。朝9時から夕方までみっちり。画期的な電子顕微鏡の応用技術により細胞や組織の映像が3Dあるいは4Dで飛躍的に向上し、新たな細胞生物学の時代が来ている感があった。個々の分子が、細胞のどこで、どの分子がどう影響するのかが、より具体的に可視化できる時代がそこに来ている。多くのポスター発表があり、例年より活気があるように思えた。企業ブースのほとんどが顕微鏡であった。フィラデルフィアは、私にとっても初めてであったが、東海岸に共通する古い、歴史ある建物が多く、他の都市よりも歴史を感じた。自由の国、アメリカが始まった街だけある。今回の細胞生物学会への出張は、先月からの連日の飲み会と出張がたたり、舌炎、口内炎が最悪の状態であった。ぼろぼろで木曜日の夜に帰熊。金曜日、土曜日、日曜日とそれぞれに用があり、そして、月曜日からロンドンへ。
投稿情報: 08:33 | 個別ページ
2014年12 月 3日 (水)
アルツハイマー病の新たな治療薬?!:GABAが悪玉
Nature Med. 7月号から。Wakkyの紹介。反応性アストロサイトからのグリオトランスミッター(ATP, D-serine, GABAなど)のうち、GABAがアルツハイマーモデルマウスの記憶を低下させることを明らかにした論文。韓国のグループの発表。反応性アストロサイトにおいて、アミロイドβ(Aβ)が作用するとプトレシンがMAOBによってGABAが合成され、Bestrophin 1を介して細胞外へ放出されることが明らかになった。MAOB阻害薬であるセレギリンを処理すると記憶障害などが改善するという。アルツハイマー患者脳において、MAOB発現レベルとGFAP (glial fibrillary acidic protein:反応性アストロサイトマーカー)の発現レベルが高い相関性を示すことも明らかになっている。これまで、アルツハイマーの患者の脳脊髄液のGABA濃度が高いという知見もあり、興味深い。ただ、用いられているモデルマウスが昔のタイプであること、GABAという抑制性の神経伝達物質がだらだらと放出されるだけで、進行性の神経脱落が起こりうるのかなど、どこまで、ヒトのアルツハイマー病の治療薬開発に貢献できる知見であるかどうかは不明である。2008年にGABA受容体抑制薬がアルツハイマーモデルマウスに有効であるという報告が、理研のグループによりPLoS ONEになされていた。今回のNature Med.はそのGABAの産生機序を明らかにしたというところに価値があるのかもしれない。Discussionには、現存のMAOB阻害薬の臨床試験では効果はなかったようであると記載してあったという。
追記:同じ時期に、Nature Communicationsにもペンシルベニア州立大学から同様な報告があった。この論文の結果は、少なくとも使われたモデルマウスでは間違いないだろう。
投稿情報: 08:01 | 個別ページ
2014年12 月 2日 (火)
有益なブログ
ラガーの葬儀にも来ていた、熊薬のOBでもある山本雄一郎君が書いているブログ「薬歴公開 byひのくにノ薬局薬剤師」は、業界では大人気。彼は、有名な日経DIで「山本雄一郎の薬局にソクラテスがやってきた」という連載コラムのコーナーも持っている。日経DIは有料であるが、面白い。様々な分野で様々な形で、世の中に貢献している卒業生がいることは嬉しい限りである。
投稿情報: 13:45 | 個別ページ
解糖系をターゲットにした副作用が少ない白血病治療薬開発のために
Cell 9月号から。B3のMaru-chanのプレゼン。解糖系をターゲットにした白血病治療薬を開発する際に、正常な血液系細胞への分化、増殖に影響しない(副作用がない)ように、白血病細胞の増殖を抑制させるためにどうすれば良いかを示唆した論文。以下の図を基に、この研究で実施したことをまとめる。通常、造血幹細胞(Stem cell)、造血細胞(progeniter cell)の分化•増殖、白血病細胞(がん細胞)の増殖には、乳酸への好気的解糖が必要であるが、PKM2(M2 pyruvate kinase isoform:ホスホエノールピルビン酸をピルビン酸に代謝する酵素)をノックアウトすると、代償的にPKM1の発現が増えるが、元々、発現量が少ないため、その影響が少なく、ピルビン酸の量が少なくなり、乳酸量も減るという。その場合、造血幹細胞は影響は少ないが、造血細胞および白血病細胞は増殖等が抑制される。また、LDHA (Lactate dehydrogenase A:ピルビン酸を乳酸に代謝する酵素)をノックアウトすると、乳酸が全くできなくなり、酸化的リン酸化が顕著に促進され、活性酸素が大量に産生され、造血幹細胞、造血細胞の分化•増殖、白血病細胞の増殖が顕著に抑制されるという。このことから、解糖経路をターゲットにした抗がん薬の開発において、造血幹細胞の機能を保持しながら、白血病細胞を治療するためには、解糖のレベルをfine-tuningすることを考えないといけないことを示唆している。
本論文のまとめの図
投稿情報: 08:31 | 個別ページ