2013年5 月 1日 (水)
低栄養下におけるガンの悪化のメカ低栄養下におけるガンの悪化のメカ
今朝のセミナーはM1のChosa君。ガン組織では、グルコースの供給が枯渇するため致死的な代謝ストレスが起こり、常に細胞死の危険にさらされているにも関わらず、ガン細胞は生存している。実は、低栄養状態で、ガン細胞が生存し続けるメカニズムはわかっていなかったという。Mol.Cell 3月号においてそのメカが解明されたという。グルコースが少ない状態では、小胞体ストレスが誘導される。ガン細胞では、持続的な小胞体ストレスが起こると、p58 IPK(ストレスによって誘導される分子シャペロンであり、PERKに直接作用する)を介して、PERK-CHOP経路を抑制することにより、アポトーシスが抑制されていることがわかった。さらにXBP1やATF6経路は活性化されることにより細胞保護効果が認めれられるという。小胞体ストレスは細胞死誘導と細胞保護の2面性があるが、ガン細胞は、小胞体ストレスをうまく細胞保護に活用している。ガン細胞を殺すために、小胞体ストレスの誘導薬を使う場合は、気をつけないと逆に悪化することになる。低グルコース下、低酸素下にがん組織において、p58 IPKを抑制する薬は抗ガン薬として有用かもしれない。また、もし抗ガン薬の耐性とp58 IPK誘導が関わっていたら面白い。