先週末は鹿児島での学会出席であった。昔から色々と親身にご指導頂いている大先輩のYamada先生主催の学会であった。西南部会はアットホームの雰囲気があり、懇親会が盛り上がる。今回は日韓合同薬理セミナーも共催であったため国際的な雰囲気があった。スタッフを始め、準備、運営に大変だったと思う.参加者として大変有意義な時間を過ごせた。次の日は、ホテルが錦江湾に近かったため、埠頭を散歩しながら、地元の釣り人と話をし、壮大な桜島を間近に見ながら爽快な時間を過ごせた.昼は、鹿児島で頑張っているMatsujyunに連絡し、ポートにあるレストランで食事をした。おかげで元気をもらうことができた。駅まで、送ってもらい、新幹線で新八代経由で帰ったが、寝る暇もなく、帰り着いた。来年の3月には新幹線が開通すると、九州の西海岸の都市は一気に近接する。福岡出身や鹿児島出身の学生は、熊本まで、充分、通える。アパートに住む必要もなくなるか。新大阪ー熊本が最短2時間59分、熊本ー博多は最速で35分という。35分というと、ラボから生協にランチを食べに行ってラボに帰ってくるぐらいの時間。その間に、もう博多に着いていることになる。もう少しゆっくりしたいな
2010年11 月29日 (月)
前立腺ガンに対する新たな治療法について
Nature Med.のAdvance online pub.に掲載された論文をMatsuyama Shin.が紹介した。細胞間接着因子N-cadherinが前立腺ガンの悪性化に伴い、増加し、従来のホルモン療法に抵抗性を示すガンにおいて発現が高いという特色があることがわかった。さらに、このN-cadherinに対するモノクロ抗体が有効であることが示されている。将来の前立腺ガンの内科的治療の一助になる可能性が高い知見である。
偶然にも、来年から指宿で稼働し始めるガン治療施設の管理、研究部長になっているNagayama君から粒子線治療の話を鹿児島(西南部会)で聞く機会があった。前立腺ガンの外科的切除の問題として、尿漏れによるQOL低下が起こる可能性があり、QOLという観点からも粒子線治療が、前立腺ガン治療にかなり有用であり注目を集めているという.ただし、治療費が高いのが難点であるが、術後のQOLを考えると充分、考慮に値する治療であると言う.様々な治療法の選択肢が増えてくると患者にとっては大変嬉しい話であるが、一方では、どの治療法が自分の病態に最も適しているかを親身にナビゲートしてくれるような人(職)が今後求められてくるであろう。最先端の情報を得、その科学的データの信憑性を正確に判断できる力がないといけない職だろう。
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2010年11 月22日 (月)
徳島への旅とすわくん結婚式
先週は金曜、土曜と福岡経由で徳島の学会に参加した.こじんまりとしていたが、内容は大変充実したものであった.大きな学会より、身近に交流ができる利点がある。
ところで、昨日は、すわくんの結婚式。大変温かい雰囲気のりっぱな結婚式であった。出席者には多くの同級生が呼ばれていたが、驚いたのは、プーさんが既に結婚しており、しかも、来年の5月に出産とのこと(お腹が大きいプーさんが出産する訳ではないが)。想定外のスピード結婚、スピード出産。来年の1月に親族で挙式を行うとのことでした.皆、ハッピーな人生を送って下さい.
ブログを見ている人がかなり増えてきたのは実感している.その中で、研究論文の内容はスルーして、その他の情報を楽しみにしている人が多いという.特に、サッカー情報が最近無いという指摘があった。実は、すわくんの結婚式が終了後、直ちに運動公園に直行した。ユースの公式戦があり、京都相手に0−2で負けたが、チームとしての力がまとまってきた感がある試合運びであった.来年は、他チームと同様に3年生が主体のチームになることから(現在は1,2年生が半々ぐらい)、どのような試合が展開できるかが楽しみである.今年は、大阪でのガンバ戦はハラディーファミリーが応援に来てくれていたと次男が喜んでいた.時間があるときは、アウエイの試合では、応援を宜しく御願いします.今週の日曜日、KKウイングでのトップの公式戦(対 北九州)前に前座試合があり、トップのOBチームと試合をするという。時間がある人はどうぞ。
投稿情報: 14:33 | 個別ページ
2010年11 月17日 (水)
肺炎とカルジオリピン
Nature Med. 9月号からM1のMikiちゃんが紹介してくれた論文は、肺炎の重篤度を決める分子としてカルジオリピンがあり、この分子の肺胞腔から組織への取り込みに脂質ポンプであるAtp8b1が関わっていることを明らかにしたもの.肺胞腔中のカルジオリピンをトラップするペプチドを投与すると肺炎が抑制される。このカルジオリピンは細菌細胞壁成分であるが、ほ乳類も産生しうることがわかり、肺サーファクタントの活性を抑制するだけでなく、上皮細胞のアポトーシスも誘導するという。肺炎患者の肺洗浄液に多く存在するという。治療的にはAtp8b1の発現を増加させるのは難しいので、カルジオリピンのヒト型モノクロ抗体を吸入するということか。中々難しい。それにしてもほ乳類でカルジオリピンが存在するという生理的意義、役割は何であろうか。細菌が肺に感染した時に発現が高くなり、細菌の悪さのお手伝いするという。長い長い進化の過程で、細菌がミトコンドリアとして入りこむ際に持ち込まれた、細菌側の仕掛けた(隠しておいた)武器かもしれないと考えると興味が引かれる。
昨日は、セレンディップ研究所の山津社長と新澤さんが熊本に訪ねてきてくれた。大変、楽しい話が沢山できた.私がエーザイに入社してからのおつきあいですので、もう25年になる。銀婚式ですね。人と人との出会いがあり、その付き合いは、短いもの、長く続くもの、様々である.その長さの決定因子は何だろうか。うまく表せないが「空気の色」が決定因子ではないだろうか。空気には無限に様々な色があるのではと思う。年齢や趣味や仕事内容はまったく関係なく、お互いが感じる、呼吸する空気の色が同じ、あるいは極めて近い時、付き合いが長く続くのではないだろうか。同様に、ひとつの考え方として、真にコミュニーケーションに長けた人は、相手が好む空気の色が見え、カメレオンのように色を同調させうるのであろう.自分の色にこだわるのも良いが、カメレオンの方が、人生、悩まず楽しめそう.
投稿情報: 10:58 | 個別ページ
2010年11 月16日 (火)
うつ病とセロトニン受容体
今朝は、M1のトミーがScience Translational Medicineからうつ病の新たな治療法に関する論文を紹介してくれた.うつ病には、SSRIが汎用されているが、30%の患者が耐性を示したり、1年以内に40-50%の患者に再発が見られるなどの問題点があるという。脳内のセロトニン量を増やす薬の開発は多いが、セロトニンの受容体5-HT1Bの発現を上げるという試みはなかった。様々なイオンチャンネルの細胞膜上発現に関わるp11という分子がうつ病発症に関わっていることがわかってきた。ある種の抗うつ薬では、p11の発現をある程度増加させること、ノックアウトマウスはうつ病症状を示すこと、さらに、今回の論文では、側坐核のp11の発現をアデノウイルスベクターで増減させることによりうつ病症状をコントロールできること、うつ病患者の側坐核のp11発現量が50%低下していることなどが明らかになってきている。論文で提起されている治療法は、アデノ随伴ベクターを用いて、側坐核にp11を強制発現させるという遺伝子治療であり、現在、パーキンソン病の治療で実施されている手法の応用であるが、うつ病は環境的な影響で起こりやすいことを考えると、エピジェネティックな発現変化がp11で起こっており、そこに関わる酵素をターゲットにした治療薬の開発も可能であるかもしれない.また、取り急ぎ、臨床の現場で取りうる方法としては、p11の発現を増加させるという抗うつ薬とSSRIを併用するという処方も有効であるかもしれないなどと考えはつきない。
投稿情報: 11:05 | 個別ページ
2010年11 月15日 (月)
論文受理と退院の報告
先週水曜日、全身麻酔下、手術が無事終わり、金曜日退院でした.今後は自分でリハビリをまじめにして、完全復活します。
ところで、先週の金曜日にYano君のリバイス中の論文が受理されました.ドクターの目処が付き、一安心です.タイトルは、Glucose Uptake in Rat Skeletal Muscle L6 Cells Is Increased by Low-intensity Electrical Current through the Activation of Phosphatidylinositol-3-OH kinase (PI-3K)/Akt Signalingです。
バイオメトロノームの作用機序の一端を示す重要な知見です.筋肉収縮を誘発しないレベルの、最適化された特定の微弱電流がPI3Kの活性化を介してグルコースの取り込みを促進するという内容です.
また、以前、熊本に実験に来て、共同研究をしていましたKakiuchi先生から論文受理の報告もありました。論文のタイトルは、Inhibition of human tumor cell proliferation by the telomerase inhibitor TELIN. です。
先生は、お茶の水女子大学で教育と研究に頑張っていらっしゃる研究者です.皆、それぞれの環境で頑張っています.
投稿情報: 15:58 | 個別ページ
2010年11 月 9日 (火)
すごい話。
今朝のセミナーは薬学部 創薬・生命薬科学科3年のIhorinがCell8月号から紹介してくれたインパクトのあるものであった.現在、筋ジストロフィの臨床試験が実施されているというActRIIBの阻害(受容体のデコイ)分子が、癌の悪液質(体重減少、筋肉量の減少)、生存期間を劇的に改善するという。このような内容の研究成果がCellに掲載されるのは珍しいので興味津々でしたが、期待以上の知見であった.癌の増殖を止めるものではないが、QOL良く生存できることで、癌自体をターゲットにした治療をする機会を与えることができる。思わず、父親のすい臓ガンでの急激な体重減少と筋量減少、食欲不振を思い出した。QOLが悪すぎた。発症が10年遅かったら、このデコイ薬のお世話になれたのかもしれない。現場でガン患者で接している医療関係者はこの論文、あるいは、このデコイ薬の動向に注目してほしい。最終的に筋量が低下してくる様々な疾患にも応用可能ではないかという視点で検討しても良いのでは.
投稿情報: 08:57 | 個別ページ
2010年11 月 8日 (月)
大分への旅
土曜日は熊薬同窓会大分県支部の総会に行き、講演をし、その後の宴会で午前様でした。大変盛り上がる支部であり、熊薬出身者が大分の薬剤師会をリードしている様子が感じられました.2次会のフグ刺し、肝の美味しかったこと。感動でした.再度の訪問を誓いました.
ところで、行きは、ミルクロードから大観峰、久住、長者原、山下湖、湯布院から高速、大分入りしました。紅葉が終わりつつありましたが、見事な景色の連続でした.写真を沢山撮りました。また、7月末に事故にあったカーブの側の宿泊施設に救急車を呼んで頂いた御礼に寄りました.色々と話をしていると、その方がこの近辺のリゾート施設のオーナーであることが分かり、大変、夢のある素晴らしいリゾート開発の話を聞くことができました。事故に会わなかったら、この出会いはありませんでした。人生、不思議なものです。シェタニ瀬の本店を誘致した話、そして、今、シェタニ瀬の本店が大変人気があり、他店を引っ張っていっている存在だとか。確かに客が多く、店員も多く、賑わっていました.一度、訪ねてみる価値有りです。写真は、退院後に掲載していきます.次は、来週に更新します.
投稿情報: 18:40 | 個別ページ
2010年11 月 4日 (木)
カプサイシンと高血圧
疫学的にではあるが、中国の四川省など辛い食べ物を摂取する地域では、高血圧の罹患率が低いという。肥満も少ないということも知られているが.今朝のセミナーは、学部3年のYuki-chanがCell Metabolism 8月号から、カプサイシン含有の餌を摂取したマウスが高血圧になりにくいということを明らかにした論文を紹介した。カプサイシンはTRPV1という受容体(カチオンチャネル)に作用するが、このTRPV1をノックアウトすると血管に対する作用が消えることから、カプサイシンと抗高血圧作用の関係を強く示唆していた.ただ、カプサイシンの生体利用率(バイオアベイラビリティ)が低いため、本当に血管内皮に対する直接的作用か、あるいは、消化管上皮を介した何らかの間接的作用か、不明だと思っている。興味深いのは、カプサイシンの長期経口摂取により、TRPV1の発現が高くなっていることである。まだまだ、メカニズムは明確ではないと思うが、効いたという事実は事実として受け止めてみたい。辛味成分と共に、塩分を多く取ってしまうと胃癌との関係も出てくるので、日頃の食生活では、意識して、塩分なしの香辛料だけで味付けをすることを勧めたい。今日のプレゼンも2回目とは思えないくらい、良く理解して、落ち着いたものであった。今後もこの調子で力を付けていってほしい。
125周年記念事業での話。熊薬アンサンブル部に式典前の演奏、祝賀会前の演奏、祝賀会後半での演奏とフル出演してもらった。祝賀会参加者の一部は、熊薬の学生達ではなく、本学、あるいは、どこかのグループに依頼して演奏してもらったのだろうと思っていたらしい。それぐらい見事にマッチした演奏であった。大変、素晴らしかった。万歳三唱の前に、熊薬逍遥歌と熊本薬学専門学校の校歌の演奏は、メロディーだけしか残っていなかった楽譜を基に、自分たちで原曲の雰囲気を残したままアンサンブルとして見事にアレンジしていた。まさしく、後輩から先輩への敬意と先輩から後輩への伝統の継承が行なわれた瞬間だと思った.熊薬の同窓会のホームページ上で聞けるようにしようと思う。
投稿情報: 10:05 | 個別ページ