Nature Med. 2017 11月号から。Sakiちゃんのプレゼン。グリオブラストーマは悪性度が高く、治療抵抗性を克服し、患者の予後を改善する治療法が求められている。グリオーマ幹細胞を標的とした治療法は重要であり、これまで、網羅的な転写プロファイルとDNAメチル化の解析により、血管領域にあるがん幹細胞と低酸素領域にあるがん幹細胞があることがわかり、がん幹細胞の不均一性が治療困難性の一因ともなっている。血管領域にあるがん幹細胞では、H3K27me3修飾因子であるEZH2の発現増加、低酸素領域にあるがん幹細胞では、H2AK119Ub修飾因子であるBMI1の発現増加が見られており、EZH2阻害薬とBMI1阻害薬のそれぞれの併用経口投与により、脳内担がんマウスの生存率を有意に上昇させることを明らかにしている。ここで使われたそれぞれの阻害薬は現在、他のがんに対する臨床試験が行われているものでもあり、特に、脳内のがん幹細胞をターゲットできている薬という観点から、今後の臨床試験に期待したい。
2018年3 月22日 (木)
2018年3 月20日 (火)
キックオフシンポ
参加者総数:247名(一般183名、学生41名、来賓5名、海外連携研究者等18名)で、大盛況でした。
その様子は、TKUやNHKの地方版のニュースで放送されました。
http://www3.nhk.or.jp/lnews/kumamoto/20180319/5000001837.html
投稿情報: 09:48 | 個別ページ
2018年3 月14日 (水)
特発性肺線維症と甲状腺ホルモン
Nature Med. 1月号から。Kojiharuのプレゼン。特発性肺線維症(IPF)に対する治療薬に良いものがない中、甲状腺ホルモンT3のエアロゾル投与あるいは甲状腺ホルモン受容体の経口投与により、肺上皮細胞におけるミトコンドリア機能を改善することで、肺の線維化を抑制することを明らかにした研究成果。明確な差が認められ、信頼度は高い。これまでもIPF患者において甲状腺機能が低下していると予後が良くないということがわかっていた。また、甲状腺ホルモンの活性化に関わるDIO2のノックアウトはマウスの線維化を悪化させること、IPF患者では、代替的にDIO2の発現が上昇していることなど、甲状腺ホルモンの関連を示すエビデンスは多い。面白い。
投稿情報: 08:20 | 個別ページ
2018年3 月13日 (火)
抗PD-1抗体とLXRβアゴニストの併用の有効性
Cell 2月号から。Taiseiのプレゼン。抗PD-1抗体による免疫チェックポイントの阻害は有用であるが、ガン奏功率は必ずしも十分であるとは言えず、その抵抗性のメカニズムと併用薬の探索が行われ来た。本論文では、LXRβアゴニストの併用により、免疫抑制性の細胞であるMDSC(骨髄由来免疫抑制細胞)がアポトーシスにより減少して、抗PD-1抗体の効果が増強するということを明らかにした。がん患者によって、血液中のMDSCのレベルが異なり、その細胞が多い時は、抗PD-1抗体の有効性は低いという報告もある。この論文では、がん患者において、RGX-104というLXRβアゴニストを投与したところ、MDSCを減少させ、活性化CD8+T細胞を増加させるということを示している。
投稿情報: 08:36 | 個別ページ
2018年3 月 8日 (木)
キム教授の引退
私が30歳の頃、研究テーマとして、ハムスターの気管上皮細胞系をDr. Kim(ボストンにいた頃)の論文を参考に、立ち上げ、薬理評価に用い、その後、ATSの学会でPKCの関与を明らかにしたポスターを発表した時に、動揺した感じで、質問に来たのが最初の出会いでした。その後、宮田教授を紹介し、熊本との交流がスタートしました。それから、ボルチモアのメリーランド大学で独立したのを機会に、久恒先生や学生たちを派遣するシステムがスタートしました。彼とは、国内外で機会があるたびにテニスをし、いつもコテンパンにやられていました。ボルチモアの家にも何度も宿泊し、色々なところで食事をしていたことを思い出します。アルバカーキーにてセミナーをしたこともありました。宮田教授に会って最後の別れのために熊本に来ました。大変熱い、慈愛深い研究者であり親友であり、色々な薫陶を受けた恩師でした。お疲れ様でした。このリタイアセレブレーションの後、クリスチャンミッションでエチオピアに行かれます。ずっとかどうかはわかりません。
以下のように、完全に退職されるという案内をいただきました。関連がある卒業生もいますので、ここにアップしました。
投稿情報: 08:55 | 個別ページ
アドレナリンβ受容体遮断薬が前立腺がんの悪化を抑制!?
Science 10月号から。Shotaのプレゼン。アドレナリン受容体阻害薬が内皮細胞におけるβ2受容体をブロックして、抗がん作用を示す可能性を明らかにした論文。プロプラノロールを用いた前向きな臨床試験、特に、これまでの抗がん薬との併用においてどうなるかを期待したい。
投稿情報: 08:40 | 個別ページ
2018年3 月 7日 (水)
新生児早老症様症候群とAsprosinと肥満治療
Nature Med. 11月号から。ニラジのプレゼン。Asprosinは、異常に痩せる新生児早老症様症候群(Neonatal progeroid syndrome, NPS)患者の原因遺伝子として発見され、脂肪から産生されるホルモンで、肝臓でグルコースの血中への放出を促すことにより、血糖値を制御していることがわかっていた。本研究では、新生児早老症様症候群患者の食欲が非常に低いことから、Asprosinが食欲にどのような影響を与えるのかを研究するために、NPSの遺伝子変異を持つモデルマウスを作成した。このマウスは、NPSの特徴である極限まで痩せた体型と低い食欲を示したという。このマウスにAsprosin(BBBを通過できる)を与えると食欲が上昇することも明らかにしている。さらに、Asprosinは、食欲促進のAgRPニューロンを活性化すると共に、食欲を抑制するPOMCニューロンを抑制することで食欲を増進することがわかった。肥満のヒトやマウスでは、血中Asprosinの濃度が異常に上昇しており、Asprosinを標的とすることで肥満や体重過多の患者、さらには2型糖尿病を治療できる可能性が示されている。
投稿情報: 10:02 | 個別ページ
2018年3 月 4日 (日)
セレノタンパク質の生体必須性の証明
Cell 1月号から。Imai 君のプレゼン。セレノタンパク質は生体における希少タンパク質であるが、セレノタンパク質のうち、GPX4は発生過程では必ずしも必要でなく、あるタイプの中枢ニューロンの生存に重要であることを本論文は明らかにしている。ゆえに、セレノシステインを含有するGPX4が欠損すると、致死的なてんかん性発作を起こすという。GPX4がセレノシステインを含有することにより、フェロトーシスが起こらなくなるという。フェロトーシスは,細胞死の1つの機構と考えられていますが,アポトーシスやネクローシスやオートファジーの3つの細胞死とは異なる特徴を有し、フェロトーシスでは,鉄依存的な活性酸素種の発生と過酸化した脂質の蓄積によって,細胞死が起こる。セレンの生体における必須性について、発見から200年経ってようやく明らかにしたという重要な研究成果である。
投稿情報: 09:31 | 個別ページ