長年、本ブログに記載していた、朝7時半からのセミナーの論文は、研究室のFacebookにて紹介しています。私の解説や感想はありませんが、活動は継続しています。
https://www.facebook.com/molmed730
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Cell 8月号から。Akimasa君のプレゼン。ジペプチダーゼ1(DPEP1) というジペプチドを分解する膜結合の酵素が炎症時に好中球が肺や肝臓に浸潤するときに接着受容体として機能することを明らかにした論文。in vivoモデルとして、LPSの腹腔内投与で調べているが、その生存率がDPEP1ノックアウトで完全に抑制されていることから重要な分子であることは間違いない。このDPEP1に結合し、阻害するLSALTというペプチドをLPS投与後に投与しても有効であることから、敗血症の治療薬として、ショック後に、このペプチドの静注あるいは点滴でも有用である可能性がある。現在、カナダの企業がPhase 1の試験中という。LPS受容体であるTLR4の阻害薬は、事前投与で有効であるが、臨床の現場を考えると、LPSがTLR4に結合した後の現象である好中球の影響をブロックする、このペプチドの方がより効果的ではないだろうか。なお、DPEP1は酵素であるが、今回の作用には酵素活性は関係ないことも明らかにしている。故に、酵素阻害薬は有効ではないだろうとのこと。
Cell 8月号から。Tatsuoのプレゼン。糖質制限を徹底したケトン食は、ダイエットや健康維持に効果があると言われ、様々な疾患の治療などに有用であることが知られている。過去にケトン食が炎症を抑えるというNature Med.の論文が報告されたりした。今回の研究は、腸の働きを担う腸管上皮細胞へと分化する腸管上皮幹細胞において、ケトン体がHMGC2というケトン体生成に関わる酵素に影響し、HDACを抑制し、その結果、NOTCHシグナルを活性化し、腸管上皮幹細胞の維持、傷害後の組織再生に関わることを明らかにしたという。グルコース食は、この経路を抑制し、例えば、放射線による腸管ダメージに対して腸管再生が起こらないという。ケトン食はそもそも小児てんかんの治療食として知られ、この治療していた子供の腫瘍も小さくなったという事例もあったという。食は大事。
Nature Med. 9月号から。Rickyのプレゼン。精神的なストレスががん患者は、治療薬の効果、抗がん免疫を抑制するという分子メカニズムの一端を明らかにしたという報告。ストレスがかかるとグルココルチコイドを増加させ、腫瘍成長を促進するが、そのメカニズムとして、腫瘍内の樹状細胞におけるTsc22d3(グルココルチコイド誘導性転写制御因子であり、かつ、抗炎症や免疫抑制メディエーターとして機能する)を介して、治療時の抗がん免疫応答を抑制するという。これまで、心理的なストレスの度合いで、がん患者の死亡率が変化するという大規模メタ解析の結果もあり、今回の論文は、そのメカニズムの一端を明らかにしたという。がん治療中の患者に、ストレスが少ない環境を与えてあげることは、周りができる唯一の手助けなのかもしれない。
Cellの1月号から。B3のShotaroのプレゼン。Krasというがん遺伝子は有名であり、がん細胞におけるタンパク質の合成を盛んにし、癌増殖に大きく関わっている。この研究では、METTL13というメチルトランスフェラーゼの一つがeEF1Aというタンパク質合成に重要な酵素の55番目のリジンをジメチル化することにより、eEF1AK55の酵素活性が上がり、KRASによるがん細胞の増殖作用をさらに促進することが明らかにされた。細胞やマウスで、METTL13を欠損させると癌の増殖を一部抑制することも明らかにし、さらに、METTL13の欠損下に、OmipalisibというPI3KとmTORを阻害する抗がん薬を投与すると、Kras遺伝子変異がんを劇的に抑制することを明らかにしている。METTL13の阻害薬の開発というのは、創薬で狙い目なのか。。
Cell 5月号から。B3のTinaさんのプレゼン。NAFLDの治療、予防は重要である。今回の論文では、小胞体とミトコンドリアの接触領域にあるミトコンドリア融合因子Mfn2が小胞体からミトコンドリアへリン脂質のホスファチジルセリンの輸送に関わっており、正常なリン脂質代謝に関わっており、NASH、NAFLDにおいてMfn2の発現が低下していることによって、そのリン脂質輸送が障害を受け、ミトコンドリアの機能障害をもたらすという。小胞体ストレスは、炎症や線維化には関与しているが、脂肪酸合成には関与していなかったという。ところで、小胞体ストレスは本日のノーベル賞発表の話題でもある。今日のセミナーは運命を感じる。森先生には、これまで何度か熊薬にて講演をお願いした。共著論文も発表した。将来のノーベル賞候補者が招待されるという、ストックホルムでのシンポジウムにも応援に行った。もうそろそろである。
Cell 2月号から。B3のMegumyのプレゼン。JAMAの8月号に、「Association of Gluten Intake During the First 5 Years of Life With Incidence of Celiac Disease Autoimmunity and Celiac Disease Among Children at Increased Risk.」という論文発表があった。1型糖尿病やセリアック病関連HLA抗原遺伝子型を有する小児6605例を対象に、グルテン摂取量にセリアック病自己免疫やセリアック病との関連があるか多国籍出生コホート前向き観察研究で検討している(TEDDY研究)。この結果から、5歳までにグルテンを高摂取するとセリアック病のリスクが上昇するという。セリアック病の患者はグルテンフリー食を生涯に渡って摂取しないといけないというが、そのメカニズムは何かということを明らかにしたのが、今回、紹介されたCellの論文である。セリアック病では、グルテンを摂取し続けると腸内で慢性炎症が起こり、最終的には絨毛の萎縮により吸収不良を起こし、関連の症状が起こってくる。故に、腸において何が起こっているか。腸管上皮における免疫監視には、組織常在性の腸管上皮細胞間リンパ球(IELs)が関与している。IELsの大部分がαβT細胞とγδT細胞で構成され、今回の論文によると、セリアック病では、γδT細胞が関わっており、γδT細胞の中でも組織型のVδ1+細胞が関与し、かつ炎症性サイトカイン産生が高い性質を持つものに変貌しているという。その性質の変化は、TCR遺伝子再構成によるものであり、その変化は、腸管上皮細胞に発現するブチロフィリン様分子(BTNL3/8)と結合できなくなるγδT細胞Vδ1+となり、正常な免疫応答を維持することができなくなるという。すなわち、γδT細胞Vδ1+の性質の不可逆的な変化が、セリアック病がグルテンフリー食で予防するしか手がない理由かもしれない。。
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