Cellの9月号から。Namiちゃんのプレゼン。グリオーマの放射線治療において重要な情報。グリオーマにおいて、IDH1/2(イソクエン酸デヒドロゲナーゼ)遺伝子の点突然変異が高頻度に認められることは知られていた。IDH1/2は生体内でイソクエン酸を2-オキソグルタル酸(2-OG)に酸化する。しかし、グリオーマで見られるmutant IDH1/2は2-OGから2-ヒドロキシグルタミン酸((R)-2-HG)まで代謝し、その(R)-2-HGがBCAAトランスアミナーゼ(BCAT1,2)を直接阻害することにより、BCAA(分岐鎖ケト酸)由来のグルタミン酸合成を阻害しているという。グルタミン酸合成経路にはGLS(グルタミナーゼ)経路もあり、mutant IDH1/2のグリオーマにあってもグルタミン酸の合成は代償的に増強され、グルタチオンを介した酸化ストレスの抑制によりグリオーマ細胞死が抑制されているという。そこで、IDH1変異細胞におけるGLS阻害薬を投与すると、細胞死が誘導されることから、実際に、マウスレベルで、IDH1変異細胞ガンに放射線照射する前に、GLS阻害薬を投与しておくと、劇的にガンが死滅するということを明らかにしている。ヒトにおける効果やGLS阻害薬がBBBを通過できるかなど、今後の研究に期待したい。
2018年11 月29日 (木)
2018年11 月28日 (水)
ワクチンアジュバントとメバロン酸経路
Cel 11月号から。Sakiちゃんのプレゼン。メバロン酸経路の阻害が免疫系を活性化することを示した論文。シンバスタチンを一緒に免疫化を行うと抗体価を高めるアジャバントとして働くことを明らかにしている。その作用メカニズムには、GGPP(Rab5 のゲラニルゲラニル化に関わる)の合成量低下によりエンドソーム成熟を抑制し、抗原保持時間が延長することにより抗原提示を増強させるという。がんワクチン療法として有用であることならびに抗PD-1抗体と併用することで、治療効果をさらに高めるという。極めて重要な知見ではないだろうか。水溶性スタチンではなく、脂溶性スタチンが有用であるという。
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2018年11 月27日 (火)
脳腫瘍の新たな治療法!?
Nature 9月号から。Junのプレゼン。治療用のT細胞を脳腫瘍に到達させるホーミングシステムを開発したという論文。BBBを通過させるために、脳腫瘍で高発現しているALCAMという接着因子を利用して、HS T細胞を作成し、T細胞を脳腫瘍選択的に浸潤させ、生存期間の顕著な延長を起こすという。
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2018年11 月21日 (水)
心臓リモデリングとアデノシン2A受容体
Cell Metabolism 9月号から。Sanちゃんのプレゼン。心臓のリモデリングは高血圧負荷に対する代償的な応答であるが心室の拡張や筋収縮障害が起こり、心不全へと移行してしまう。本論文では、マウスを用いて、褐色脂肪細胞におけるアデノシン2A受容体の活性化がFGF21産生を促進し、高血圧負荷時の心臓のリモデリングを抑制することを明らかにしている。この現象が人でも起こりうるかは今後の研究が必要であろう。
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2018年11 月20日 (火)
ERストレスとNASH
Cell 6月号から。Ryokoちゃんのプレゼン。NASHは進行すると、肝硬変、肝がんを発症し、死亡率が高くなる。NASHでは、脂質合成が過剰になり、ERに脂質が蓄積し、ERストレスを誘導すること、NASH患者の肝臓においてCaspase 2の発現が増加することが知られていた。本論文では、ERストレスが起こることで、Caspase2を活性化し、S1P(SREBPのプロセッシング酵素)が切断されることで、SREBPが活性化される。活性化体のN-SREBPは核内に移行し、転写因子として、脂質合成酵素の発現を上げ、コレステロールが増加するというメカニズムを明らかにしている。Caspase-2の阻害薬の有用性とCaspase-2によるS1PのフラグメントがNASHのBiomarkerになりうることを示している。
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2018年11 月 5日 (月)
健康寿命の延長薬!?
Nature Med. 8月号から。Misakiちゃんのプレゼン。健康寿命の延長は極めて重要な社会的課題である。老化細胞(ゾンビ細胞ともいうらしい)の加齢による蓄積は老化の原因とされている。本研究は、本当にそうなのかを明らかにした論文。老化細胞を作成し、マウスに移植すると身体機能が低下し、高齢マウスへの老化細胞の移植が明確に生存率の低下も誘導している。老化細胞死抑制を促す、ダサチニブとケルセチンの併用投与により、老化細胞により低下した身体機能(歩行速度、筋力、持久力)をアップし、高齢マウスの健康寿命を延長するという。移植した老化細胞数は、全細胞の0,01-0,03%にしか過ぎないのに健康寿命が低下するというところはインパクトがある。肥満患者の脂肪細胞には、老化細胞が見られるが、ダサチニブとケルセチンの併用投与により、老化細胞を除去できることで、ヒトにも効果がある可能性を示唆している。老化細胞の移植で、実験的に健康寿命が調べられることは意外。
投稿情報: 07:53 | 個別ページ