帰国後、優先順位を考えながら、諸々の仕事をこなしていたら、ブラジル出張のその2が今日になってしまいました。お待たせしました。少し過剰サービス気味ですが。
FAP学会において、大きなトピックは、diflunisalの世界共同臨床試験の結果のまとめが発表され、初期の症状の進行を抑制できることが明らかにされたことです。懸念されていた腎障害等の副作用も大きな問題になっていないとのことでした。ただ、慎重に使用することは必要です。症状が進んでいると効果は期待できないようなので、早期からの使用が奨められるでしょう。日本では、医薬品としてdiflunisalを成分として含むものがないのが問題です。古くて安いものだけに個人輸入でなく対応できたら医療経済的にプラスになることでしょう。一方で、ついに、ファイザーが販売するタファミジス(商品名:ビンダケル)が一昨日から日本でも医薬品として販売されました(これまでは、EUでの発売であり、米国はFDAが承認していないという)。こちらは保険が使えますので、患者さんにとって朗報です(しかし、希少疾患の新薬だけに薬価が驚くほど高いため、医療経済的な影響は大)。患者さんが多い一般の医薬品の開発では、数千名の大規模臨床試験が求められ、開発コストが莫大なため、少数の臨床試験で済む希少疾患に対する医薬品の開発が世界中で精力的に展開されている。承認後、売り上げつつ、適用拡大で他の疾患へと展開していくという戦略が経済的にも開発期間の上でも効率が良いのだろう。antisense oligoでTTRの発現を下げるという臨床試験の成績が来年には公表されるだろう。これは、月に1回の注射で、予想以上にin vivoで奏功しているようであり、肝臓移植に代替できる新たな治療法として注目される可能性が高いと思えた。アンチセンス療法は、他の疾患にも応用されており、近い将来、治療法として、一般化されるだろう。また、本研究室で現在展開中のプロジェクトの方向性について、この分野のリーダーたちと直にdiscussionし、Go Forwardであることを確認できた。この領域に新たな選択肢を提供するために頑張っていこう。
その他、今回の出張で印象に残ったことは以下の通りである。
1)なぜブラジルでFAPかということと、なぜブラジルではポルトガル語かということが繋がったこと。移民はポルトガル人が最も多く、その際に、遺伝的な変異も一緒に。
2)食事は、普通であった。ただ、ブラジル料理として有名な、様々な肉の串刺しをテーブルでカットして提供するパーティには、ここまで来るかというくらい肉三昧であり、いい加減にしてくれと最後は目も合わさず断った。胃がもたれるほど。
3)国際空港から市内までの道路の左右に広がる、何とも言えない家並みに驚き、この街で、1年後にワールドカップ、2年半後に夏のオリンピックが本当に実施されるのだろうかと疑った。また、ほとんどのタクシー運転手がポルトガルのみ、英語が通じるのはホテルのフロントのみのような状況には、正直、戸惑った。タクシーの運転手から高額を要求されたが、結果的にうまく乗り切れたのは幸いであった。道は渋滞とともに、運転の荒さが凄まじかった。台湾でも同様な経験をしたが、世界的に見て、日本の社会がまともすぎるのかもしれない。
4)宿泊したホテルは快適であり、コスパカーナという美しい海岸沿いであった。到着した日が日曜日であったため、白い砂浜は多く人で溢れ、大変にぎやかだった(以下の写真)。時差ぼけ対策で海岸沿いをずっと歩き続けた。その際に、気づいたことは、かなり健康的な体格の年配の女性の堂々としたTバック姿、青年たちがほとんどマッチョマンであり、大変明るく楽しんでいる様子、外のカフェテリアのテーブルに物乞いに来る子供やガムやピーナッツを売りつけにくる子供連れの母親、大勢の人が居る中でゴミ箱にある食べ物を漁る大人、ホテルの裏通り(暗い)に寝ている家が無い人たちの多さ、パトカーの多さと警察が1、2人ではなく数人のグループで監視している、などなど、色々なことを考えさせられた世界であった。
5)世界で最も美しい街と言われるリオ。どこがそうなのかと思ったが、ロープウェイで登った、キリスト教像があるコルコバードの丘からの眺めで納得できた。遠目には確かに美しい海岸や島とセットで美しい街であった。
6)ワールドカップの決勝の会場を見学する機会もあった。確かにりっぱな会場が出来上がっていた。周りの風景と新築の会場の違和感が何とも言えなかった。来年のワールドカップが楽しみである。
ホテルの部屋から
コスカパーナの海岸
イパネマ海岸
絵になる風景
学会の懇親パーティの様子
入室が厳重に管理された学会会場
コルコバードの丘
なんとなくーーー。キリストがもう一人
新築のワールドカップ決勝の会場
ピッチに立ったジーコとペレ
(おまけ)先週の日曜日
ホーム最終戦後のセレモニー(真ん中にいます)。
来年こそはと(ただ、プロの世界も色々とあるようでーー)。