Cell 6月号から。Ryokoさんのプレゼン。Johnの座長。これまで、がん細胞において乳酸が免疫監視機構を回避するために機能する免疫抑制分子ではないかということが報告されていた。本論文では、ウイルス感染が行なっていないときは、嫌気性解糖系よりの乳酸がミトコンドリアにあるMAVS (mitochondrial antiviral-signaling)に結合にしているため、RIG-Iとの結合ができず、I型インターフェロンの産生ができないが、ウイルス感染時には、乳酸の産生が抑制されていると、MAVSとRIG-Iが結合し、TBK1-IRF3経路を介して、インターフェロンの産生が促されるということを明らかにしている。この研究により、がん細胞では、有酸素下でもミトコンドリアの酸化的リン酸化よりも、効率の悪い解糖系でATP産生を行い、ピルビン酸をすぐに乳酸へと変換するというWarburg効果の意味が説明できるということである。
2019年6 月26日 (水)
2019年6 月25日 (火)
長生きのための分子メカ
Cell 4月号から。Johnのプレゼン。Teraの座長。寿命の短い、長いはどのように決まっているのか。DNAの二重鎖切断修復能が高いほど、寿命が長く、その能力がSIRT6により高められていることが明らかになった。寿命が長い齧歯類と短い齧歯類とSIRT6のアミノ酸配列を比較した結果、寿命が長い齧歯類に特徴的な配列があり、それを寿命の短い齧歯類に導入すると老化が抑制されたという。強力なSIRT6活性は、抗老化、寿命延長が期待できる。
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2019年6 月19日 (水)
核内に移行したインスリン受容体の役割
Cell 4月号から。Keisukeのプレゼン。Misatoさんの座長。この論文は重要。インスリン受容体が刺激された後、核内に移行して、局在していることはかなり以前から知られていた。しかし、その機能的意味は不明であった。インスリン受容体は核内において、標的遺伝子のプロモーター領域に結合することでインスリンの作用(脂質代謝、タンパク質合成、細胞増殖)に関わっていることを明らかにし、インスリン抵抗性のメカニズムに新たな発想を与えた研究成果である。従来のPI3K経路やMAPK経路を介したインスリンの作用は急性の作用に関与すると考えられ、一部は、クロマチンにおける作用にも関与しているかもしれないという。
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2019年6 月18日 (火)
脳の加齢化を抑制するメカ(マウス編!?)
Nature 4月号から。Shotaのプレゼン。Mariの座長。脳内の掃除役であるミクログリアは加齢に伴い、機能が低下することが報告されていた。これは、アルツハイマーを含む神経変性疾患の原因ともされている。本論文では、in vitro と in vivoのRNA seq解析により、CD22という、ミクログリアのファゴサイトーシスを抑制する分子を同定し、この分子が加齢とともに増加することが問題であることが示された。さらに、CD22抗体の脳室内投与により、加齢による機能低下、アルツハイマーやパーキンソン病のモデルマウスの機能低下を抑制ることも明らかにした。しかしながら、Shotaが他の関連論文を調べた結果、マウスでは、CD22はミクログリアが主な発現細胞であり、ヒトでは、オリゴデンドロサイトが主な発現細胞であるという過去の報告もあることから、この論文の成果はマウスにおける現象かもしれないという。
面白いことに、MRI拡散テンソル画像(DTI)という新しい脳イメージング法により、アルツハイマー型認知症の脳では、白質の異常やミエリン(オリゴデンドロサイトによる形成される)が著しく減少しているという「ミエリン仮説」が注目されているという。オリゴデンドロサイトにおけるCD22の役割はどうだろうか。
CD22のリガンドはシアル酸であることも面白い。
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2019年6 月12日 (水)
食事によるサーカディアンリズム調節メカ
Cell の5月号から。Mariのプレゼン。Teramoto君の座長。仕事をシフトでやっている人が様々な病気になりやすいのではという話に、サーカディアンリズムが乱れるからではないかという研究が多々なされている。光にあたることがサーカディアンリズムの調節に重要であることについては、そのメカニズムはよくわかっていたが、食事によるサーカディアンリズムの調節のメカニズムは十分に解明されていなかった。この論文では、食事により増加してくるインスリンがインスリン受容体やIGF-1受容体に結合後、PI3K-, or PTEN-mTORC経路、および miRNA (24, 29, 30)を介して、Periodの翻訳や転写を調節し、サーカディアンリズムを光とともに調節していることを明らかにしている。不規則な食事は、サーカディアンリズムに多大な影響を及ぼし、シフト労働による生体への悪影響を低減するためには、光への暴露だけでなく、食事を摂るタイミングが重要であることを示唆している。
このサイトは「空腹こそ最強のクスリ」(青木厚氏)からの抜粋で、6回シリーズになっていますが、今日の話を絡めて考えると健康維持のために重要な情報。食事の摂り方も明示している。
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