Nature vol.560から。ハルキャンのプレゼン。寒冷刺激は体内のエネルギー消費を促す刺激であり、交感神経系の活性化を通して、β3受容体刺激を介している可能性が示されていたから、β3受容体アゴニストが痩せ薬として期待されたが、臨床試験では有用性が認められなかった。そこで、寒冷刺激が交感神経系非依存的経路で、褐色脂肪細胞を活性化している可能性が考えられた。寒冷刺激時に、震えた筋肉から産生されたコハク酸は褐色脂肪細胞特異的(SLCトランスポーター)に取り込まれ、ミトコンドリア中でフマル酸に代謝される際に発生するROSによりUCP-1を活性化し、熱産生を上昇させるという。色々な示唆を与える研究成果である。
2018年9 月21日 (金)
2018年9 月20日 (木)
寒冷刺激による精子のepigenetic変化が子供の熱産生を促す
Nature Med. 7月号から。父マウスと母マウスを1週間8℃で寒冷刺激すると、父マウスを刺激した時のみ子マウスの褐色脂肪細胞が多くなり、熱産性能が向上し、インスリン抵抗性の改善や白色脂肪蓄積の現象が見られたという論文。そのメカニズムには精子のエピジェネティック変化が関わっているという。人においても寒い時期に親が妊娠した子供は、褐色脂肪の蓄積が多く、成人でも寒い時期に親が妊娠した場合は、活性化褐色脂肪を持つ人の割合が多かったという。人にできるような事実であれば、面白い。健康政策にも関われる可能性はあるのだろうか。
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2018年9 月11日 (火)
ALL白血病細胞が中枢へ転移するメカと抑制薬
Nature 8月号から。Misatoちゃんのプレゼン。固形がんの脳転移の多くが脳実質にみられる一方、急性リンパ性白血病 (ALL) の転移は軟髄膜領域においてみられ、稀な現象であること、Idelalisib (PI3Kδ阻害薬) はALLマウスモデルのCNS転移を抑制することは知られていた。しかし、IdelalisibはBBBを通過できず、ALL細胞の増殖能など直接的な作用はないことからメカニズムは不明であった。Idelalisibはα6 integrin発現を抑制する。α6 integrinは、laminin陽性の脳微小血管と相互作用する。ゆえに、ALL細胞は骨髄とくも膜下腔を直接通過する血管(基底膜のlaminin)に沿ってCNSに侵入し、この現象は髄液内のケモカイン (CXCL12) により誘引されているという。ただ、血管腔内の血液を介しない、血管の外側を介した浸潤メカニズムがイメージがあまり湧きにくい。臨床においてもα6 integrin発現が高いALL細胞はCNS転移能が高いという。IdelalisibはCLLの治療薬としてのFDA認可を受けている薬であるが、今後、ALLの治療薬との併用薬として重要な位置を占めるかもしれない。
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