2014年6 月27日 (金)
2014年6 月26日 (木)
新たな血管新生抑制薬の可能性
Cell Metaの1月号から。D1のYokota君のゼミ。血管新生が様々な病態の形成に重要であることは知られているが、血管新生因子VEGFの作用を抑制しても効果がいまひとつであることは有名である。この論文で使用した薬は、PFKFB3阻害薬3-POであり、内皮細胞の解糖経路の重要なステップを抑制する。その抑制は一過性であり、かつ、部分的な抑制であるにも関わらず、in vivoの実験系で良く効いている。解糖経路を完全に、あるいは持続的に抑制すると細胞死がもたらされるが、程よく効いてくれると良いという話。ノックアウトマウスなどの知見とは一致しないので説得力が無いようにも思えるが、そうではなく、理想的な創薬を考えると、完全ではなく、ほどよくが良いということだろう。
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2014年6 月19日 (木)
肺障害の修復機構のメカ
Cellの1月号から。B4のMaryの初ゼミ。しかも日本語で。肺にはBASCs (Bronchioalveolar stem cells) が存在し、肺の血管内皮細胞においてBMP4−NFATc1-Thrombospondin-1(TSP-1)というカスケードを介して、産生されたTSP-1がBASCsに作用し、肺胞2型上皮細胞へと分化させることを明らかにしたという内容。面白いのは肝臓由来の血管内皮細胞との共培養では、細気管支上皮細胞(クララ細胞)へと分化が誘導されること、肺胞にダメージを与えるブレオマイシンによる肺気腫病態時には、BASCsの増殖ならびにTSP-1も増加し、肺胞の修復へと向かうという。逆にナフタレンによる細気管支上皮のダメージ時は、BASCsの増殖はあるが、TSP-1は減少していることから、BASCsの分化は肺胞上皮細胞ではなく気管支上皮細胞への分化へと誘導されるという。BASCsはまだヒトでは確認されていないため、現時点では、マウスにおける現象であるが、今後の研究の展開が楽しみである。
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2014年6 月18日 (水)
悪性リンパ腫に対する抗体治療の効果を増強するシクロフォスファミド併用療法とその機序
Cellの1月号から。cyclophosphamideによりAlemtuzumabの抗がん効果が増強し、いわゆる治療抵抗性を改善するという。そのメカニズムはcyclophosphamideが骨髄において悪性Bリンパ細胞に作用し、acute secretory activation phenotype (ASAP)を誘導するという。ASAPとは、がんの微小環境にTNF, VEGF, CCL4をがん細胞から放出されると周囲のマクロファージを活性化(数も増える)し、がん細胞がマクロファージにより貪食され、除去されるという現象のことである。治療抵抗性を示すがん細胞においては、プロスタグランジン合成酵素3とFc受容体FCGR2Bの発現が増加してくるという。このがん細胞から産生されるPGE2はマクロファージの活性化を抑制し、治療抵抗性に関与するという。他の抗体医薬でも同様な併用効果が認められることから、本知見は治療抵抗性を示すようになった時点で併用薬としてcyclophosphamideを検討する価値があることを示している。すでに臨床試験が実施されているという。ASAPは、cyclophosphamideの投与後できるだけ早く抗体医薬を投与しないとこの併用効果は認められないということに引っ掛けているようである。B4のYoshio君の初ゼミでした。Good.
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2014年6 月17日 (火)
2014年6 月12日 (木)
小胞体ストレスからの生体保護メカ
Cell 3月号から2報をTsureが紹介。我々の体において細胞内の小胞体ストレスが加わると、XBP1のスプライシングが起こり、そのスプライスフォームが転写因子としてGFAT1の発現を促すという。このGFAT1はhexosamine biosynthetic pathwayの律速酵素であり、グルコースからUDP-N-アセチルグルコサミン (UDP-GlcNAc) の生成に関わる。UDP-GlcNAcはタンパク質のN型あるいはO型糖鎖修飾、ERADを介したタンパク質分解、オートファジーの活性化、などなどを介して、細胞をストレスから保護していることが、2報の論文から証明された。大変画期的な研究成果である。GlcNAcの投与でも効果があるという知見もあり、昨日のセミナーの内容も考えあわせると、薬ではなく、食事や環境をうまく活用することにより、病気の予防や緩解が可能になる時代が近い将来やってくるような気がする。この2報の論文が掲載された雑誌の巻頭にレビュー「Sugarcoating ER Stress」があった。その最後の文章は以下の通りである。
”The UPR and the HBP play important roles in neurodegenerative and metabolic diseases. The new studies highlight a physiologically significant mechanistic link between these pathways and could open avenues to new therapeutic approaches. In particular, the protective effects of supplementation with HBP metabolites may represent a promising therapeutic strategy.”
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2014年6 月11日 (水)
腸内細菌とアレルギー性気道炎症
Nature Med. 2月号から。Harukyanの紹介。食事が西洋化したことによる疾患の増加は明白である。本研究では、ハウスダスト吸入気道炎症モデルにLow fiber dietをやるとBALF中の炎症細胞が増え、血中のIgE、Th2サイトカインが増加し、Tcellを活性化できる樹状細胞が増える等、気道炎症が悪化し、High fiber dietをやると逆に治療的に作用するという。Microbiota(腸内細菌叢)がfiberの量によって大きく変わり、これは、可溶性食物繊維によるという。可溶性食物繊維の影響で注目される成分は善玉菌から産生されるプロピオン酸である。本論文ではプロピオン酸を直接投与しても同様の効果があることを明らかにしている。さらに、プロピオン酸の受容体として、GRP41(別名:遊離脂肪酸受容体3、FFAR3)であることも同定している。GPR41は樹状細胞に発現しており、プロピオン酸は、活性化した樹状細胞やヘルパーT細胞のみを減少させる。プロピオン酸は肺に直接ではなく、骨髄を介して間接的に作用するという。食物繊維と発酵メニューが多い和食がベストですね。お金がかかる薬ではなく、日常に毎日摂食するもので病気が治療あるいは予防できたら、高齢化と医療費の高騰に伴う問題の多くが解決し、かつ、マラソンを走れるくらいの体力、筋力を有する高齢者には年金を増額し、社会貢献していただくという社会が良いのかもしれないですね。
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2014年6 月10日 (火)
変異mRNAの新たな分解機構
Cellの1月号から、B4のMisatoちゃんの紹介。本論文では分泌タンパク質のシグナル配列の一部に変異を導入、その変異タンパク質の産生制御におけるmRNAの品質管理機構を解明している。小胞体におけるタンパク質の品質管理機構が機能すると、変異タンパク質の翻訳抑制、フォールディング機能の向上、変性タンパク質の除去効率の増加などが起こる。しかしながら、これらの機能には、多くのエネルギーを必要として、効率が悪い、変異タンパク質のみの産生を特異的に抑制できない、変異タンパク質の潜在的な毒性を防げないなどの問題があるという。今回の論文では、mRNA品質管理機構(合成されたmRNAが細胞のもつ品質管理機構によって識別され、異常なものは分解除去できる。)が存在し、シグナル配列の変異により変異タンパク質のmRNAが減少し、変異シグナル配列の翻訳後には、SRPは結合できず、Argonaute2 (Ago2)という分子が結合するという。Ago2はRNA切断活性があり、miRNAやsiRNAなどと結合することでも分解するということは知られていた。本論文から、変異特定的なRNA分解機構が存在することが明らかになった。このメカは変異タンパク質が小胞体ストレスを起こす前に機能することから細胞機能維持にとって有用な防御機構である。
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