Cell 12月号から。B3のSanaちゃんのプレゼン。自閉症スペクトラム障害 (Autism Spectrum Disorders: ASD) は自閉症、アスペルガー症候群、レッド障害、小児期崩壊性障害などの様々な神経発達障害の総称である。2014年のNatureで多数の遺伝子変異がASD発症に関わっていることが報告されていた。本論文では、2013年の著者らの報告において、ASDなどの患者において、分岐鎖ケト酸脱水素酵素キナーゼのホモ変異があることを同定した知見を基に、必須アミノ酸であるロイシン、イソロイシン、バリンなどの分岐鎖アミノ酸 (BCAA) の低下、すなわち、末梢から脳へのBCAAの定常的な供給がなくなった結果が脳の機能異常を起こしているのではと検証した。つまり、BCAAを脳への輸送するトランスポーターとして、血液脳関門に局在するLAT1 (Large neutral amino acid transporter 1) に注目し検討した結果、LAT1ノックアウトマウスの解析からASD発症に密接に関係し、脳室内にBCAAを投与することで、ASD関連の行動異常が改善したという。さらに、LAT1のホモ変異の患者の臨床症状が一致することも明らかにしている。ゆえに、脳内におけるBCAA濃度の維持が極めて重要であることが明確になったことから、今後、LAT1に変異が無くても、母体あるいは乳児期の栄養障害が、ASD発症あるいは症状悪化に関係しているか否かを調べてみても良いかもしれない。