Cell 4月号に連報であった論文2つから。Kamexの紹介。RNAの成熟に重要なRNA kinaseであるCLP1の変異がtRNAのスプライシングや成熟異常を起こして、小脳の発達や神経変性に影響するという。また、もう一つの論文でも、CLP1の変異がtRNAのbiogenesisに影響し、末梢神経系と中枢神経系の機能の異常を来すという。ダメージのメカニズムは、tRNA合成不全によりp53が活性化され、神経前駆細胞のアポトーシスが誘導されるという。マウスのバックグランドの違いにより、症状が現れる時期が大きく異なることも興味深い。
これらの論文は、脳の発達障害による発育不全や精神遅滞の小児患者やその両親の全エキソームシークエンス解析による網羅的な変異解析によりCLP1の変異が見いだされてきたという。それぞれの論文は異なるグループであるが、両方の患者群はある地域のトルコ人であり、祖先は一緒であろうという。このように、独立した研究グループが同様な結果を見いだしている場合は、信頼性が極めて高い。Cellの表紙にも採用されている。15テスラのMRIを活用している。tRNAの異常がなぜ神経系特異的に影響を与えるのであろうか?