Nature Med.2011年4月号の論文。
神経線維のミエリンの障害による神経変性疾患である難病。欧米に多く、日本では人口10万人には8-9人という。平均の発症年齢は27歳。自己免疫性疾患ということで、現在の治療法としては、ステロイドパルスや血漿交換法、IFN-β療法、免疫抑制薬があるが、根本的治療法は確立されていない。今回の論文で注目した分子は、RGMaという神経細胞表面だけでなく骨髄由来樹状細胞にも発現している分子で、これに対する中和抗体が有用であることを証明した内容である。中和抗体が末梢のRGMaに作用して効いているのか、中枢で作用しているのかが不明な点で、色々と議論されるのであろうが、どこで作用するにしろ、副作用なく、最終的な表現型が改善されていれば良いのではと思う。この知見が将来、患者を救うことに貢献できることを心より願いたい。現在、日本では、ONO-4641というS1P受容体に作用する化合物がPhase II試験中であるが、その有用性が現在用いられている療法と比較してどうだろうか興味が持たれる。
5/10(火)
本ブログを見てコメントをくれている、OBのFukuda氏から関連情報の提供がありました。
「多発性硬化症の治療はここ数年で劇的に変わる可能性がありますね。
SP1受容体に作用する薬剤ではノバルティスのGilenya (FTY720)が世界で最初に承認されています。
http://www.novartis.com/newsroom/media-releases/en/2010/1445917.shtml
http://www.novartis.com/newsroom/media-releases/en/2011/1504993.shtml
この化合物のオリジネータは吉富製薬で、冬虫夏草からの抽出物由来だそうです。
国内ではノバルティスと田辺三菱製薬と共同で申請中のようです。
http://www.jpma.or.jp/medicine/shinyaku/development/com0450.html
今までの治療法に比べて圧倒的に有効性安全性に優れ、ブロックバスター(全世界売上1,000億円以上)になると見込まれています。」