Science 6月号から。L-dopaはパーキンソン病の代表的な薬である。脳へ到達するL-dopaは、投与量の5%以下であり、その有効性に影響するだけでなく、末梢でdopamineに代謝され、副作用発現上昇や有効性低下に繋がるという。これは、体内に存在する芳香族アミノ酸脱炭酸酵素(Aromatic L-amino acid decarboxylase;AADC)が、L-dopaからdopamineへと代謝する酵素が、脳だけでなく、末梢にも存在していたことが原因であり、この酵素を末梢で阻害するカルビドパが併用薬として用いられていた。本研究は、経口投与されたL-dopaは、まず、腸内で、腸内細菌のEnterococcus faecalisに由来するチロシン脱炭酸酵素(TyrDC)により、dopamineに代謝されると共に、Eggerthella lentaに由来するモリブデン補因子依存性ドパミン脱水素酵素(Dadh)により、dopamineがチラミンに分解され、不活性化されていることを明らかにした。故に、腸内のTyrDCも抑制することで、末梢におけるdopamineを増やすことができるという。さらに、本研究では、TyrDCの阻害薬として、AFMTを合成し、in vivoでの効果を見るとL-dopaの有用性を向上させることができるという。さらに、Dadhについては、Eggerthella lentaによっては、1アミノ酸変異があり、それにより、活性があるものと無いものに分類されるという。これが、副作用発現の個人差に関係しているかもしれないという。この研究成果を臨床の現場に届けるために、臨床試験プロトコールをどう工夫していくか大変興味がある。L-dopaでの副作用発現患者を対象に、腸内細菌叢をチェックした後、AFMTの投与量を固定し、L-dopaの有効性と忍容性を考慮しながら投与量を上げていくことになるのだろうか。。少ない患者数で対応できそうなので、開発コストはあまりかからないかも。。