Science 6月号から。L-dopaはパーキンソン病の代表的な薬である。脳へ到達するL-dopaは、投与量の5%以下であり、その有効性に影響するだけでなく、末梢でdopamineに代謝され、副作用発現上昇や有効性低下に繋がるという。これは、体内に存在する芳香族アミノ酸脱炭酸酵素(Aromatic L-amino acid decarboxylase;AADC)が、L-dopaからdopamineへと代謝する酵素が、脳だけでなく、末梢にも存在していたことが原因であり、この酵素を末梢で阻害するカルビドパが併用薬として用いられていた。本研究は、経口投与されたL-dopaは、まず、腸内で、腸内細菌のEnterococcus faecalisに由来するチロシン脱炭酸酵素(TyrDC)により、dopamineに代謝されると共に、Eggerthella lentaに由来するモリブデン補因子依存性ドパミン脱水素酵素(Dadh)により、dopamineがチラミンに分解され、不活性化されていることを明らかにした。故に、腸内のTyrDCも抑制することで、末梢におけるdopamineを増やすことができるという。さらに、本研究では、TyrDCの阻害薬として、AFMTを合成し、in vivoでの効果を見るとL-dopaの有用性を向上させることができるという。さらに、Dadhについては、Eggerthella lentaによっては、1アミノ酸変異があり、それにより、活性があるものと無いものに分類されるという。これが、副作用発現の個人差に関係しているかもしれないという。この研究成果を臨床の現場に届けるために、臨床試験プロトコールをどう工夫していくか大変興味がある。L-dopaでの副作用発現患者を対象に、腸内細菌叢をチェックした後、AFMTの投与量を固定し、L-dopaの有効性と忍容性を考慮しながら投与量を上げていくことになるのだろうか。。少ない患者数で対応できそうなので、開発コストはあまりかからないかも。。
2019年7 月24日 (水)
2019年7 月23日 (火)
悪性リンパ腫とSIRT3
Cancer Cell 6月号から。Nasuくんのプレゼン。悪性リンパ腫の治療抵抗性に関わる分子が見出された。SIRT3がびまん性大細胞型B細胞リンパ腫において、高発現していることがわかり、このSIRT3がミトコンドリア内のGDHを活性化し、TCAサイクルを活性化し、がん細胞におけるオートファージを抑制し、病態を悪化すること、その現象は、SIRT3のノックアウトや抑制薬により抑制されるという。
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2019年7 月18日 (木)
老化した膵β細胞の除去がI型糖尿病の発症を抑制
Cell Meta. 5月号から。Namiさんのプレゼン。老化した膵β細胞から遊離してくるSASP因子が正常β細胞の細胞死を誘導し、病態が悪化していくということを明らかにした論文。故に、老化した膵β細胞の生存に関わり、かつ、発現が上昇しているBcl-2を抑制するBH3 mimetics (ABT-737, ABT-199) を投与すると、老化した膵β細胞の細胞死を誘導し、I型糖尿病病態進展を抑制したという。BH3 mimeticsは抗がん剤としての承認を受けているという。
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2019年7 月17日 (水)
ガンに対する新たな抗体医薬
Cell 6月号から。Sakiさんプレゼン。MIsatoさん座長。NK細胞によるガンの殺傷効果を最大限にする3機能抗体医薬を作成し、その効果は、従来の抗体医薬より抗腫瘍免疫が高いことを明らかにした論文。NK細胞上のCD16だけでなく、NKp-46と結合しつつ、がん細胞側のCD19を認識するというもの。Obinutuzumabを比較対象に動物実験を行なっているが、少なくともマウスレベルでは明確な差がある。臨床試験の結果がどうか。あるいは、この論文のものとは違う進化型が、臨床試験に導入されようとしているのか。今後の展開が楽しみである。
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2019年7 月 4日 (木)
なぜ微小な細胞のダメージでは炎症は起こらないのか
Cell 4月号から。Sanくんのプレゼン。Harucanの座長。怪我をした時には、好中球が集積し、炎症を起こしつつ、マクロファージによる貪食が起こり、修復されていることは知られている。しかし、微小な細胞のダメージは炎症は起こらずに、修復していく。微小な細胞のダメージに対して、なぜ、好中球は集積してこないのだろうか。この答えを導いたのが本日のセミナーの内容。シングルセルレベルでのダメージが起こると、細胞内からATPやAGEsなどが遊離してくる。それを、近傍にある組織常在性マクロファージが認識し、そのダメージ細胞を取り囲む(クローク)。その結果、好中球の集積が抑制され、過剰な炎症反応も起こることはないという。全身の組織で同様なことが起こっているという。例えば、適度な筋トレをすると、筋肉に微細なダメージを受けても炎症反応は起こること無く、修復されつつ、筋肉量の増加に繋がっているのではないかという。
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2019年7 月 3日 (水)
加齢性の神経変性疾患に対して抗体療法が可能か!?
Nature Med. 5月号から。Sanaさんのプレゼン。tureの座長。高齢の方の血清中にVCAM1のsolubleタイプが増加していたり、高齢マウスの海馬歯状回の血管内皮細胞のVCAM1の発現が高いということもあり、加齢性変化に対するVCAM1の影響は?というのが今回の研究。高齢マウスの血清を老化血清としてマウスに投与すると血管内皮細胞のVCAM1の発現上昇や神経前駆細胞の活性低下、ミクログリアの活性化を引き起こし、血管内皮細胞特異的なVCAM1欠損や抗VCAM1抗体投与により、老齢マウスの脳機能障害や認知機能障害を改善することも明らかにしている。すなわち、抗VCAM1抗体が加齢性の神経変性疾患の治療薬になるのではという。この抗体は、日本でも潰瘍性大腸炎やクローン病で承認されている医薬品である。
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2019年7 月 2日 (火)
ガン組織における神経細胞の由来:非選択的なベータブロッカーの有用性
Nature 5月号から。Junのプレゼン。Yoshioの座長。脳由来の神経前駆細胞が、血流を介して、がん組織に浸潤し、がんの発生や進行を促進していることを明らかにした画期的な知見。がん組織における神経前駆細胞は、アドレナリン作動性神経へ分化するという。2015年の臨床のレトロスペクティブな研究成果で、非選択的なベータブロッカーが生存期間延長に極めて有効であり、β2受容体の関与が示されていた。
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