Cellの6月号から。Misatoちゃんのプレゼン。女性の性周期によって行動が変化することは知られていた。そのメカニズムは中枢(脳)のレベルで受容しているという報告があったが、本論文では、末梢レベルで、女性ホルモン(プロゲステロン)が感覚神経応答を直接的制御することにより行動変化が起こることを明らかにした。マウスにおいては、鋤鼻神経細胞がフェロモンやカイロモン等を認識し、感覚応答がおこるが、発情間期においてはプロゲステロンが、鋤鼻神経細胞を特異的に、かつ可逆的に抑制するという。この抑制にはPGRMC1が関与し、その下流において、PLCβ2のセリン残基のリン酸化が起きていることも明らかにしている。発情期には、その抑制作用が起こらないが、発情間期では、プロゲステロンの作用によりフェロモン応答が無くなり、交配に無関心になるという。面白いことに捕食者逃避に関する感覚応答の分子機構には女性ホルモンの影響を受けないという。納得いく話である。
2015年6 月26日 (金)
2015年6 月18日 (木)
2015年6 月17日 (水)
喫煙(ニコチン)による体重減少とインスリン抵抗性(高インスリン血症)
Nature Med. 4月号から。ノーマンのプレゼン。喫煙は体重を減少させる一方、インスリン抵抗性や高インスリン血症を発症しやくしている。本論文は、ニコチンが白色脂肪細胞のニコチン受容体を介して、AMPKα2を選択的に活性化し、MKP-1をリン酸化し、最終的にプロテアソームにより分解される。ニコチンによりMKP-1が減少すると、通常抑えられていたp38MAPKとJNKの活性化され、それが、インスリンシグナルのIRS1のリン酸化を促し、IRS1の分解とPKBの阻害を引き起こすという。その結果、インスリンが引き起こす脂肪分解抑制が認められなくなり、脂肪が減少すると共に血液中遊離脂肪酸が増え、インスリン感受性組織でインスリン抵抗性を生じるという。ヒトのデータもクリアに出ており、この知見は間違いないと思う。ニコチン受容体AChRα7が白色脂肪細胞に存在する生理学的な意義は?AChRα7に対する作用がROSを介してAMPKα2を活性化するということは知られていたが、この受容体がROSを発生させるメカは?
いずれにせよ、喫煙はがんだけでなく糖尿病の発症にもつながり、また、ニコチン(ガム)もやせの目的に使用するのはまずいという話。
投稿情報: 08:34 | 個別ページ
2015年6 月15日 (月)
日々ドタバタ
先週の金曜日は、東京にて、上原財団の30周年記念事業に出席してきた。パーティでは、懐かしい多くの先生方にもお会いできたし、何よりも山中教授と久々に挨拶し、握手をしたことが大きな収穫であった。足を運び、運がやってきたような気がした。2次会後にホテルに帰る途中にライトアップされた東京タワーが目一杯、アピールしているように思えた。
熊本に土曜日に戻った後、夕方まで、家で久々ゆっくりして、映画を観に行った。「予告犯」という新しい作品。これに、熊薬の野球部OBで、ドクターを出て、東京で役者を目指した松下君が出演しているとの情報を得て、すぐに観に行くことにした。映画の内容は、現代の雇用問題や人生の生き方の風刺のように思えた。松下君は、少しの間であったが、セリフ付きであった。松下貞治君は、この他、「ゼンタイ」、「恋の渦」などにも出演しているという。他の作品も観たい。今後も応援していきたい。薬学博士(Ph.D.)持ちの俳優はほとんどいないのでは。「恋の渦」のメインキャスト達の写真では、後列左端。一人、サラリーマン風ですので、そのようなキャラで出演したのでしょうね。
そして、日曜。久々にジョギングをした。その途中で、北岡公園に寄った。名前はよく聞いていたが、訪ねたのは初めてだった。近くには様々なお寺もあった。外国からのお客さんを是非連れて行こうと思える、大変趣があり、静かで素晴らしいところでした。竹林が見事ですし、雨に濡れた苔の庭がきれいでした。京都の古寺を散策している錯覚に。
投稿情報: 03:30 | 個別ページ
2015年6 月12日 (金)
新たな肺がん治療薬か
Cancer Cellの6月号から。Okita君のプレゼン。ガン治療に有効なBCL2-BH4ドメイン選択的アンタゴニストBDA-366を化合物スクリーニングにより同定し、そのBDA-366は既存の抗がん剤の問題点をも克服できる極めて有用性の高い治療薬になりうることを示した論文。mTOR阻害薬は抗がん薬として有効ではあるが、BCL2の発現を上げるために耐性が生じる。しかし、mTOR阻害薬にBDA-366を併用すると、より強力な抗がん活性を示すことができ、かつ、正常細胞には影響を全く与えないということで、副作用がない抗がん薬として期待される可能性を示している。
投稿情報: 08:08 | 個別ページ
2015年6 月10日 (水)
シスプラチン耐性がんにTGF-βシグナルが関与
Cell 2月号から。Wakkyのプレゼン。がん組織は不均一な性質を持ったがん細胞の集団からなり、また、その起源は、がん幹細胞である。今回の論文は、TGF-βががんの悪化にあるいは抗がん剤耐性、再発にどのように関与しているかを明らかにした。TGF-β応答性のがん幹細胞と非応答性のがん幹細胞があり、応答性のがん幹細胞においては、酸化還元関連分子およびグルタチオン代謝関連分子の発現が顕著に上昇しているという。このシグナルの上流には、p21-NRF2系が活性化されることが関与していることがわかった。がん幹細胞におけるグルタチオン代謝の活性化は、シスプラチンの不活性化を促し、抗シスプラチン耐性を示すという。TGF-β阻害薬との併用療法もひとつの選択肢らしいが。。
投稿情報: 08:36 | 個別ページ
2015年6 月 9日 (火)
飢餓状態時に膵β細胞がインスリン分泌を抑制するメカ
Scienceの2月号から。Tsubasa君のプレゼン。オートファジーはインスリン分泌を促進する作用があることは知られていた。本研究において、栄養飢餓時の膵β細胞ではインスリン顆粒の分泌を抑制し、リソソームにてそのインスリン顆粒を分解する(これをStarvation-induced nascent granule degradation :SINGDという)ことでインスリンタンパク質をエネルギー源として、結果的にオートファジーを抑制するという。ゆえに、強制的にオートファジーを誘導するとインスリンの分泌が増加するという。これは、細胞内のタンパク質を非選択的に分解する通常のオートファジーではない。膵β細胞においてはSINGDによりインスリン初期分泌顆粒のみを分解する。分解産物としてアミノ酸が増加するのでリソソーム膜でmTOR活性が上昇し、それが通常のオートファジーを抑制するという。膵β細胞において、栄養飢餓時には、p38δMAPキナーゼが活性化された結果、PKD1がリン酸化され不活性化され、SINGDが起こるという。PKDは栄養があるときは、活性が上昇して、インスリン分泌を促進することは報告されていた。膵β細胞ならではのオートファジー非依存的メカニズムらしい。
投稿情報: 08:14 | 個別ページ
2015年6 月 4日 (木)
がん細胞特異的AMPKユビキチン分解機構
Cellの2月号から。Moriuchyのプレゼン。AMPKの活性化と抗ガン作用については、多くの報告があり、メトホルミンが副作用が少ない抗がん薬として期待されているが、有効であるという報告と無効であるという報告がなされている。本研究は、がん細胞には、AMPKの分解に関わるユビキチンリガーゼTRIM28とMAGE-A3/6という結合タンパク質が共存している例があり、患者の予後との関係が示唆され、そのMAGE-A3の発現が高いとAMPK活性化薬は無効である可能性を示している。今後、がん細胞におけるMAGEの発現あるいは活性を評価する臨床試験が行なわれるだろう。本論文は、明確なデータで明らかにしている。
投稿情報: 07:49 | 個別ページ
2015年6 月 3日 (水)
MEK阻害薬とプロテアソーム阻害薬の併用によるガン治療
Cellの2月号から。ジョンのプレゼン。この論文は、BRAF変異のある悪性黒色メラノーマに対する抗がん薬として認可されているMEK阻害薬と多発性骨髄腫に対するプロテアソーム阻害薬を併用すると、単独で使用しても全く効かないガンが劇的に効果を示すようになるということを示した基礎的な研究成果である。その併用のメカニズムとしては、がん細胞においては、MEKがERKをリン酸化し、タンパク質の翻訳を促進をすると共に、リン酸化されたERKがMEKをリン酸化し、そのMEKがHSF1を活性化し、分子シャペロンHSPの発現誘導を促進し、過剰なタンパク質をも構造的に安定化させ、がん細胞の増殖及び生存を促しているという。一方、MEKを阻害すると、HSPの発現誘導が抑制され、異常構造のタンパク質が増えた結果、細胞内に凝集体(アミロイド?)が形成され、がん増殖を抑制してしまうという。この際に、プロテアソーム阻害薬を併用しておくと、さらに凝集体形成が促進され、がんが完全に抑制されるという。この分野の研究をやってきただけに、何となく、なぜCellに受理されたのか、あるいはガンの専門誌ではなく、Cellだから認められたのかという気持ちもある。担ガンモデルマウスに劇的に効くが臨床的には効かないガン治療法は過去、数多く報告されてきた。担ガンモデルマウスは、臨床とは異なり、ガンの成長が極めて速いだけに、これらの現象が捕まった可能性も否定できない。この論文の評価は、今後の臨床的な視点での研究および考察次第であると思う。
投稿情報: 08:25 | 個別ページ