皆から祝ってもらいましたが、複雑です.もうイチローの背番号と一緒になりました。まだまだ若いぞ。20前後の学生達といつも一緒にいるせいか、言葉遣いも気持ちも学生の頃と変わらないと思っていますが、学生達と一緒に写真に映るといつも一人浮いています.仕方ないのですがーーー.
2011年10 月27日 (木)
ワクチン療法の副作用軽減のために
2011年のNature Med.8月号の論文から薬学科4年のタニグチ君のプレゼン。水酸化アルミニウム(Alum)は免疫増強のためのアジュバントとして使われ、子宮頸癌ワクチン(サーバリックス)にも添加されているが,副作用としてアレルギー反応が出るという.IgEの産生を促すことがその一因とされている。この論文は、Alumが投与局所の細胞を破壊し、遊離されたDNAがIrf3経路を介して IL-12の産生を促し、抗原を認識した局所の炎症性単球が近傍リンパ節に遊走し、樹状細胞に成熟後、Th2経路を介してIgE産生を促すことを明らかにした。ワクチンと共にIL-12抗体を局所に投与すると、IgE産生は50%程度抑制され,一方、IgG1産生は影響受けないという。副作用が少ないワクチン開発において重要な知見かもしれない。
追加情報(OBのFukuda君より)
「確かに動物実験ではアルミアジュバントはIgEの産生を増強するために加えることが多く、ヒト用のワクチンアジュバントとして承認されたのがアルミしかなかったのは不思議でした。
ワクチンメーカーの方に伺っても副反応(ワクチンの世界では”副作用”ではなく”副反応”と呼ぶらしい)としてアナフィラキシーは知られており、特に製造過程に卵を使用するインフルエンザワクチンでよく知られているようです。
このIgEの産生を抑制する試みは以前から検討されており、リポソームを用いた方法は面白いと思います。
http://www.mendeley.com/research/suppression-specific-ige-antibody-responses-liposomeconjugated-ovalbumin-mice-sensitized-ovalbumin-via-respiratory-tract/
http://www.ingentaconnect.com/content/ben/cdtiemd/2003/00000003/00000002/art00003
IgEを抑制するだけでなくCTL活性も誘導できるようになるようです。
http://www.jstage.jst.go.jp/article/dds/25/1/29/_pdf/-char/ja/
現在いろんなタイプのアジュバントが研究されていますが、免疫の反応を制御できるアジュバントと言うのも魅力的ですね。
アジュバントの承認には米国が非常に慎重なため(サーバリックスのアジュバントはアルミについで2番目)、開発する壁は高いですが、実用化される事が期待されます。」
投稿情報: 12:48 | 個別ページ
エストロゲン補充療法
更年期障害や閉経後の骨粗鬆症に対してエストロゲン補充療法がある一方で、乳癌治療に抗エストロゲン薬が使われる。さらには、数年前には、エストロゲンには抗肥満効果があると報告がある。エストロゲン受容体には、ERαとERβがあるが、ERαに変異が入ったマウスは肥満になるという報告やノックアウトマウスは不妊という報告がある。ERαは骨、肝臓、筋肉、脂肪、生殖器、中枢神経系に発現しているが、どの組織に発現するERαが代謝や生殖能調節に重要であるかは不明であった.2011年10月号のCell Metabolismに報告された論文が、中枢神経系の視床下部の腹内側核と弓状核におけるERαを特異的にノックアウトすると肥満になったり、不妊になったりすることを明らかにした.このことにより抗肥満薬の新たなターゲットになりうるというが、組織選択的に作用させることは困難であろう.学部4年のイホリンのナイスプレゼンでした.
投稿情報: 12:37 | 個別ページ
2011年10 月20日 (木)
飽和脂肪酸が糖尿病病態を引き起こすメカ
創薬生命薬科学科4年のYukiちゃんの6回目のセミナーの論文はCellの9月30日号から。飽和脂肪酸がインスリン抵抗性を引き起こし、不飽和脂肪酸が逆に治療的に働くことは知られていた。飽和脂肪酸により、JNKを活性化し、インスリンのシグナルを抑制することも知られていた。しかし、飽和脂肪酸がどのようにしてJNKを活性化するかはわかっていなかった。この研究により、炭素鎖16個以上の飽和脂肪酸が細胞内に取り込まれた後、細胞膜のマイクロドメインへのc-srcの集積を促し、c-srcが自己リン酸化により活性化されると、JNKやMLK3をリン酸化(活性化)していくことがわかった。肉食から魚食へ変えることが何よりの薬かなとより一層強く思えてきた話でした。しっかりした良いプレゼンであった。
投稿情報: 14:22 | 個別ページ
PICT1とガン生存率
Koyama君がNature Med.8月号から論文を紹介.内容は、細胞核の核小体の中に、PICT1が存在し、正常な細胞の場合、PICT1はリボゾームタンパク質RPL11と結合しているが、PICT1を消失させると、RPL11が核小体から出て、がん抑制タンパク質p53を分解するMDM2と結合し、その機能を阻害した結果、p53の量を増加させることがわかった。また、がん患者のPICT1と生存率の関連について調べた結果、食道がんでは、PICT1が少ない患者の5年後の生存率が1.7倍になり、大腸がんでも1.3倍になることが確認された。創薬ターゲットになりうるかどうか。
投稿情報: 13:55 | 個別ページ
2011年10 月18日 (火)
膵臓の糖転移酵素が糖尿病発症に影響する
Nature Med.9月号から、Matsu-shinが紹介。高脂肪食により、血液中の遊離脂肪酸が増える。遊離脂肪酸が膵臓のβ細胞に酸化ストレスを与える。その結果、転写因子であるFOXA2とHNF1aの発現量低下、あるいは核外移行がおこる。すると、そのターゲット遺伝子であるGLUT2と糖転移酵素 (N-acetylglucosaminyl transferase: GnT-4a)の発現が低下する。GnT-4aはゴルジ体において、GLUT2にN型糖鎖修飾を行なう。糖鎖修飾されたGLUT2は細胞膜上に運ばれ、膜に存在するGalectin9と結合し、細胞膜に安定的に存在するようになる結果、β細胞において、血液中のグルコースを効率よく取り込み、インスリンの産生を促すという。膵臓β細胞特異的にGnT-4aを高発現させたマウスに高脂肪食を与えても糖尿病への進展は抑えられ,一方、GLUT2の高発現マウスでは硬化が極めて弱いことから、GnT-4aが重要であるという。これらのメカニズムは糖尿病患者のβ細胞でも重要であることを示しており、大変面白い知見である。結局は、酸化ストレスを抑える薬で良いのかということも言えるが、抗酸化薬の臨床試験は、私が調べた限り、明確な結論は出ておらず芳しくない。創薬にどう活かせるか。
投稿情報: 11:49 | 個別ページ
2011年10 月17日 (月)
どたばたでも
昨日は、チャーリー永谷によるカントリーゴールドが南阿蘇のアスペクタであった。秋空の素晴らしい天気でした。私は、3時から別用があったため、開演から2時間だけ聴き、熊本市にトンボ帰りでした。昨年もそうでしたが、大変素晴らしいイベントで、大自然の中でカントリーミュージックを満喫できます。遅くまでありますので、行かれる方は毛布持参が良いかもしれません。駐車場は遅く行っても止められます。短い時間でしたが、タコスとチリビーンズを食べながらカントリーを楽しめました。一人で運転していったので、生ビールもワインも飲めなかったのが残念でした。毎年、10月の第3日曜日に開催されます。海外のカントリーミュージシャンも参加し、良い雰囲気です。北海道、本州からのリピーターが多いですよ。
携帯で撮った写真ですが、ボケています.毎年2万人の参加者のようです。カメラアングルからは人は少ないように見えますが、斜面のためにそうみえるだけです。
投稿情報: 17:26 | 個別ページ
巣状分節性糸球体硬化症:FSGSの原因分子!?
M2のFukuda君のセミナー(Nature Med. 8月号)。巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)は腎糸球体内での巣状化、局所性の糸球体硬化を示し、家族性と特発性がある。高頻度で腎不全に陥るという。原因は糸球体上皮細胞ポドサイトの足場構造の破綻である。腎移植をした場合も再発することが多く、血漿交換により治療ができることから循環血に含まれる因子が重要であろうとされてきた。本論文で注目されている分子は、urokinase-type plasminogen activator receptor (uPAR)の遊離型であるsuPARである。このsuPARが腎移植後再発したFSGS患者の血液中で高いこと、血漿交換治療により低下すること、uPARをノックアウトした腎臓を持つマウスに対してもsuPARによる腎障害が発生すること、suPARの抗体やsuPARの結合部位であるβインテグリンの阻害薬で腎障害が改善することが明らかになった。このことは、suPARを定量することにより,腎移植後の予後の診断が可能になり、また、suPAR抗体療法も可能であるのかもしれない。このsuPARの産生細胞として、炎症細胞が考えられているため産生抑制薬も今後期待されるだろう。
投稿情報: 12:43 | 個別ページ