JCBの5月号からOkaちゃん。上皮ー間葉転換(EMT)という現象はガンの悪化プロセスとして知られている。ゆえに、このEMTに関する研究は盛んに行われている。ガンの骨転移部位においてガン細胞と破骨細胞の融合細胞が認められていた。今回の論文はこの融合細胞の形成のみならず破骨細胞融合において関わる分子、Srcの基質であるアダプター分子Tks5、を見いだしている。この分子の発現を抑制すると、破骨細胞への分化は正常に機能するものの、ポドソーム(破骨細胞の成熟に必要)の形成、破骨細胞同士の融合、ガン細胞と破骨細胞の融合に必要なインベードポディア(浸潤突起)が抑制されたという。破骨細胞の融合の過程は、細胞膜融合面における局所的なPI3Kの活性化ーTks5を含む機能分子群の集積とSrcによるTks5のリン酸化ーポドソーム形成ー細胞融合であることが示唆されている。細胞の基本的な機能制御とガンの悪性化は密接に関わっていることがガン治療薬開発が困難であることの主因でもある。それでも研究者はロマンを求めて、前進していく。本研究の主任研究者は若手研究者である。現在の医療体制ではまだまだ不十分である故に、まだまだ苦しむ患者がたくさんいるが、次世代の研究者達がこのような研究を続けていくことで、苦しむ患者を救う。Srcの特異的阻害薬AZD0530がタモキシフェン耐性乳癌のタモキシフェン感受性を戻すことが臨床的に示されていることが報告されている。現在PhaseI ?!
2012年6 月12日 (火)
2012年6 月 8日 (金)
先輩からのメッセージ
企業で大活躍されている、私の尊敬する先輩から、本日、メールを頂きました。私のブログの再掲記事を見られての後輩達への心温かいメッセージです。大変有り難いです。
「人生の悩み方ですが、私の場合、20歳代後半に入った頃に「神様しか解決できそうもないことは取りあえず棚に上げ、自分自身が頑張れば解決できそうなことに集中する」という割り切り方をすることにしました。棚に上げたものを折に触れ思い出し、「今なら解決できそうだ」と思えれば、一所懸命に自分自身で解決しようと集中することを繰り返し現在に至っています。少しずつでも棚に上げたものが少なくなっていることが、自分のレベルが上がったという尺度になるかと勝手に解釈しています。」
「先行き不透明感、将来不安感は、有史以来5,000年、何も変わっていない。人生とは不安だから努力する訳で、不安に囚われて悩んでばかりいると、何時しか不安が恐怖感に変わり、恐怖感が高じると手も足も出なくなる。不安の状態で考えろ、行き詰ったら行動しろ。行動したら誰かと出会い、何かに遭遇する。そこから新しい展開がある」
投稿情報: 14:22 | 個別ページ
2012年6 月 7日 (木)
再掲:私の好きな言葉
最近の講義でも再度学生に紹介しました、以下の格言も再掲します。
投稿情報: 12:04 | 個別ページ
再掲:人生を生き抜くための忘却の回路の重要性
昨年の正月にブログに記載した内容をそのまま掲載します。ではでは。
以下、再掲の内容
新年早々、高校3年の時のクラスの同窓会があった。70歳になる担任の先生も参加していたこともあり、雪山を超えて行ってきた。50年も生きてきた記念でもあった。懐かしく楽しい時を過ごせた。ただ、クラスの仲間が2名も引きこもりと聞いた。昔、あんなに明るくしっかりしていた二人が、まさか50歳になっても。その事実を知り、大きな衝撃を受けた。私は、大学全体で5名しかいない学習・研究悩み事相談員を設立当初からずっと担当してきたこともあり、研究室内だけでなく、学生や教職員の多くの悩みの相談に乗ってきた。色々と悩んでいる人は多い。どうにか救える方法はないかといつも考えてきた。私なりのひとつの考えを以下にまとめてみた。悩みそうな時に参考にしてほしい。
受験勉強で解いてきた問題には、かならず正解があった。どんなに難しくても、解けなくても、悩んでも、かならず正解があった。だから、もし精神的に苦しんでも解放される瞬間は必ずあった。ところが、社会に出て、送る日々の中で遭遇する問題には、正解がないことが極めて多い.また、自分で一生懸命悩んで出した答えも違うことが多い。そして、必ず正解があるはずだと悩み苦しんでしまうと自分自身を追いつめ、正解に到達することができなかったということで自信もなくしてしまう。誰に聞いても正解なんか無いことなのに悩み続けてしまう.社会で遭遇する問題を、正解が必ずある試験問題と同様であるはずと無意識に考えてしまうのだろうか、そうなると苦しみが続いてしまう.正解を出さないと解決しないのではないか、進展しないのではないかと必死に思い込んで、また、悩み苦しんでしまう。
私も、人生経験が少ない若い時、失敗や屈辱的なことをいつまでもグジグジと悩み苦しみ、眠れない時を過ごしたことがあった。当時、元来、そういうタイプ(遺伝的)だとあきらめていた感もあった。しかし、ある時から、意識が変わった。いや、変えたのだろう。私のきっかけは、単に「苦しむ時間がもったいない」と思っただけ(非遺伝的).
では、具体的にはどうしたのか。それは、失敗の大小に関わらず、悩み苦しみそうなことに遭遇したら、瞬間的に「嫌なことは忘れる」という神経を強く活性化させるように意識しただけ。後に引きずりそうなことはその場で忘れるように強く意識しただけ。悩み苦しんでも正解など無いこと、あるいは、あったとしても正解を出すまで時間がかかることは、出来るだけ早く「忘れた」だけ。そして、悩まずに新しく生まれた時間を次のステップへの前進に使うように意識しただけ。忘却という神経回路は、自分を本当に楽にしてくれた。そして、前向きにチャレンジするタイプへと変身させてくれた.単に「忘れる」ということだけで。
この「忘れる」ということは、問題の答を求めるより簡単な神経操作であった。そして、この神経回路の活性化を助長させてくれるのが、スポーツであり、お酒であり、気の合う仲間との馬鹿話であり、趣味であった。悩みや苦しみをお酒の場まで引きずるのではなく、お酒の場では、関係ない楽しい話題で盛り上がると良かった.いわゆる気分転換は「忘れる」の触媒であるかのように。
多くの問題に真摯に向かい、一生懸命に努力し、真剣に考える、良くできるタイプほど、また、学生の頃から自分はずっと成功してきたという自信がある人(そう思うことで自分を擁護している)ほど、社会で遭遇するほとんどの正解のない問題に悩み苦しむ確率が高いように思う。一方、一般に、100点満点中、60点取れれば良しとするようなタイプは生き抜けていると思う。ひとつひとつを程々にこなしていくタイプは生き抜ける。多趣味であるタイプも生き抜ける。生き抜けるタイプに共通する特徴は、「切り替えの早さ」かもしれない。「切り替えの早さ」を言い換えると、「忘れることの早さ」ではないかと思う。悩み苦しむくらいなら、一刻も早く忘れよう。自分はこの問題を乗り越えることができるという変なプライドなど、まずは、かなぐり捨てよう。今、正解がわからなくてもいいではないか。長い時を経て、たとえば、30年後に、あの時の悩み苦しみかけた問題の答えは、何となくこんなのが正解だったかなと思う時が来るものだから、それでいいのではないか。失恋しても、歳とって、あとで振り返れば懐かしい思い出に変わるものだから。
つらいことに遭遇したら、悩み苦しむ前にその日の内に忘れよう.そして、良い思い出はしつこいぐらい忘れないようにしよう。脳に刻み込もう。そうすると人生が楽しくなれる。一歩前進できる。チャレンジする勇気が持てる。99%失敗、でも1%の成功があれば良いではないか。そう強く思う.
今、悩み苦しんでいる多くの仲間たちに「忘却の重要性」を心から伝えたい。そして人生を一緒に楽しもうよ。
投稿情報: 11:58 | 個別ページ
乳ガンの創薬ターゲット分子!?悪性度マーカー分子!
Cell 5月号からShoちゃん。E3 ligaseが創薬ターゲット分子になりうることで注目を集めている。乳癌細胞において、Aktというリン酸化酵素が細胞膜へ移行し、糖取り込みトランスポーターであるGlut-1の膜上発現を増加させ、ガン細胞への糖取り込みを促進し、解糖系を活性化し、ガン細胞の生存、増殖を促すという。IGF-1によるE3 ligase TRAF6の活性化がAktのユビキチン化(分解ではなく活性化に働くリジンを)を行い、細胞増殖シグナルを活性化することは知られていた。今回の論文は、乳癌治療薬であるハーセプチンのターゲットであるEGFの受容体を介した経路にはTRAF6は介しておらず、Skp2-SCFというE3 ligase複合体を介してガンの悪化が起こっていることがわかった。大変興味深いことに、Her2陽性ガン患者80名の組織を調べたところ、Skp2の発現が高いと転移や予後不良が明確にみられ、Skp2を抑制すると、ガン細胞の増殖を抑制するだけでなく、ハーセプチンの抗ガン効果を増強し、ガンの劇的な消滅を引き起こすという。Skp2は他のgrowth factorシグナルの下流でも関与するらしい。特定のE3 ligaseをターゲットにしてガン細胞の解糖経路に影響するという新たなガン治療戦略は面白い。
投稿情報: 08:32 | 個別ページ
2012年6 月 6日 (水)
記憶の維持
Cellの4月号からJyuriaが紹介。small RNAにはsiRNA, miRNAだけでなくpiRNAというものがあり、piRNAは生殖細胞特異的と考えられていたが、今回、中枢神経系にもpiRNAが存在し、エピジェネティックにシナプス可塑性を制御し、記憶の保持に関与していることが明らかにされた。そのターゲット分子はほ乳類でも記憶に関与することが証明されていたCREBであり、CREB1の抑制分子であるCREB2の発現をDNAメチル化により抑制し、その結果、CREB1による転写を持続的に増強することにより記憶の保持をするという。piRNAは2006年にPiwi proteinと結合するsmall RNAとして発見され、生殖細胞の維持・形成に重要な役割を果たしていることが分かっていた。今回の論文はAplysia(アメフラシ)での知見であり、今後、マウスやヒトでも同様であるかについての知見が発表されてくることを期待したい。
投稿情報: 08:17 | 個別ページ
2012年6 月 5日 (火)
だらだら夜食、食っちゃ寝は病気のもと
Cell Metabolismの最新号からIhorinの紹介。カロリー制限すること無く、「いつ食べる」を調節することで肥満が解消されるという話。体には、約24時間周期のリズムの自律的代謝サイクルが存在し、時計遺伝子によって調節されていることは、時計遺伝子の欠損マウスが糖代謝異常、脂質代謝異常になることからも証明されている。この論文では、マウスの活動時間のみ餌を与えた場合と1日中餌を食べれる状況にした場合で比較し、カロリー制限をすることなく、摂取時間の制限で充分効果があったということが示されている。面白いのは、摂取時間を制限した結果、時計遺伝子の発現変動の振幅が大きくなったということ。夜7時以降は食べない方が良いということの科学的根拠であり、朝ご飯をしっかりとって、夕ご飯は軽めにが一番良いのでしょう。規則正しい食生活が一番の健康のもと。昔、夕方6時には夕飯を食べ、テレビも9時までで早めに寝るというのが一般的な生活。もっと昔の電灯が無い時代は言わずもがな。しかし、高度成長期以降は、ネオンが赤々とした町に繰り出し、遅くまで飲食したり、深夜までテレビをだらだらと見ながらスナックを食べるという生活。それが生活習慣病の根本であることは疑う余地はないだろう。
最高の薬は、「早寝、早起き、朝がっつり、昼普通、夕腹八分。昼はしっかり活動し、夜は熟睡」ですね。天気のいい日は家でゴロゴロしているのであったら、食事時間を制限しても意味が無い。また、朝しっかり食べることにより、午前中の授業で眠ることもなくなる。
「時計遺伝子の発現変動を大きくすることを意識した生活=生活習慣病の妙薬」
投稿情報: 08:16 | 個別ページ
2012年6 月 1日 (金)
IL-25 (IL-17E) と喘息
Nature Med. 5月号からYukiちゃんの紹介。喘息病態を悪化させるステロイド抵抗性のIL-17受容体RB陽性骨髄細胞におけるType2サイトカインの産生をインターロイキンIL-25が増強することが明らかになった。このIL-25はIL-17Eとも言われ、上皮細胞から産生される。従来は、IL-25はT細胞に対する作用はよく研究されていたが、T細胞以外の細胞の関与が示唆されていた。今回の論文では、慢性アレルギー性喘息において、ステロイド抵抗性のIL-17受容体RB陽性骨髄細胞におけるIL-25(IL-17E)が病態を左右する重要な分子であること、そして、喘息患者においてこのターゲット細胞が増えていることも明らかになった。自然免疫と獲得免疫にも影響する重要な分子であると言う。IL-25はアレルゲンを慢性的に曝露した時のみ増えてくるため増悪における関与が大きいという。上皮由来の2型サイトカインは、IL-25の他にもIL-33, TSLPがあり、分子間の機能的相互作用はどうであろうか。IL-17RBの抗体は治療に有効である可能性があるとのこと。IL-25による病態モデルはステロイドが無効であることも面白い。
投稿情報: 08:06 | 個別ページ