2015年6 月 3日 (水)
MEK阻害薬とプロテアソーム阻害薬の併用によるガン治療MEK阻害薬とプロテアソーム阻害薬の併用によるガン治療
Cellの2月号から。ジョンのプレゼン。この論文は、BRAF変異のある悪性黒色メラノーマに対する抗がん薬として認可されているMEK阻害薬と多発性骨髄腫に対するプロテアソーム阻害薬を併用すると、単独で使用しても全く効かないガンが劇的に効果を示すようになるということを示した基礎的な研究成果である。その併用のメカニズムとしては、がん細胞においては、MEKがERKをリン酸化し、タンパク質の翻訳を促進をすると共に、リン酸化されたERKがMEKをリン酸化し、そのMEKがHSF1を活性化し、分子シャペロンHSPの発現誘導を促進し、過剰なタンパク質をも構造的に安定化させ、がん細胞の増殖及び生存を促しているという。一方、MEKを阻害すると、HSPの発現誘導が抑制され、異常構造のタンパク質が増えた結果、細胞内に凝集体(アミロイド?)が形成され、がん増殖を抑制してしまうという。この際に、プロテアソーム阻害薬を併用しておくと、さらに凝集体形成が促進され、がんが完全に抑制されるという。この分野の研究をやってきただけに、何となく、なぜCellに受理されたのか、あるいはガンの専門誌ではなく、Cellだから認められたのかという気持ちもある。担ガンモデルマウスに劇的に効くが臨床的には効かないガン治療法は過去、数多く報告されてきた。担ガンモデルマウスは、臨床とは異なり、ガンの成長が極めて速いだけに、これらの現象が捕まった可能性も否定できない。この論文の評価は、今後の臨床的な視点での研究および考察次第であると思う。