Cell3月号から。春キャンのプレゼン。ガン化においても重要なEMT(上皮−間葉転換)誘導においてcircRNAが増加することがわかり、その増加に、RNA結合タンパク質であるQuaking (QKI)という分子が関わっていることが明らかになった。この研究成果は、circRNA発現制御因子検出スクリーニング系(circScreen)を確立したことによることが大きい。今からの研究分野である。今後の展開が楽しみである。
2015年4 月30日 (木)
2015年4 月28日 (火)
AMPKの活性化と免疫能の維持
Immunityの1月号から。ツレのプレゼン。AMPKが炎症病態組織におけるT細胞の代謝や応答において重要な役割をしていることをin vivoで証明した。T細胞の活性化と代謝シフト、すなわち、ナイーブT細胞(好気的な解糖系によるATP産生)からエフェクターT細胞(嫌気的解糖経路が主)への分化にはエネルギー供給過程が異なっているという。さらに、ガンや炎症時では、エフェクターT細胞の代謝経路が変化していることは知られていた。本論文におけるin vitro実験において、グルタミンがグルコース欠乏時のエフェクターT細胞の代謝と生存に中心的働きを有することも明確になった。また、AMPKの欠損マウスにおいて、各組織中のエフェクターT細胞数が減少、T細胞におけるAMPKの欠損により細菌クリアランス能が低下、AMPK欠損によりT細胞の生存率低下、好気的代謝低下、細胞内ATP量減少というin vivoの実験で示されている。AMPKはグルタミントランスポーターの活性化にも関わっているらしい。AMPKの活性化は病態時の免疫機能においても重要であるという。
投稿情報: 08:19 | 個別ページ
2015年4 月27日 (月)
チャリティー プレコンサート
昨日は、薬学部の宮本記念館で、東日本大震災の被災児に対する支援のためのチャリティープレコンサートがありました。本番は3日の日曜日ですが、昨日のコンサートは感動でした。N響のコンサートマスターがバイオリンを弾いてくれましたが、生で、かつ、身近に聴く、プロの音は透明感があり、本当に心に響くものでした。マロ氏は熊本とも縁が深いということも夜の食事で知ることができました。
マロオーケストラは指揮者を置かずに、演奏者たちの心で奏でられているとのことです。今年は、9月25日に熊本で開催されるとのことです。是非、行く価値が十分あります。
投稿情報: 15:30 | 個別ページ
2015年4 月26日 (日)
2015年4 月23日 (木)
ミトコンドリアストレス
Mol. Cellの4月号から。Misatoちゃんの紹介。ミトコンドリアストレス時にATFS-1という核内分子がミトコンドリア保護遺伝子の転写を直接増加させているメカニズムを解明したという論文。ミトコンドリアの機能異常は様々な病態発症に関わることは知られている。ATFS-1は酸化的リン酸化(OXPHOS)の転写産物の蓄積を抑制する作用もあることがわかり、ミトコンドリア障害が起こった時に恒常性維持力を上げるために重要な役割を果たしているという。この現象と我々が検討しているアルポート症候群の知見との関連性がどうか検討してみる価値はある。
投稿情報: 08:24 | 個別ページ
2015年4 月22日 (水)
最適な抗がん薬の選択のためのファンクショナルテスト
Cellの2月号から。B6の高木君による紹介。"Drug-induced death signaling strategy rapidly predicts cancer response to chemotherapy."というタイトルが全てである。アポトーシス誘導において重要なBH3ペプチドを用いてがん細胞のアポトーシスをミトコンドリア膜透過性(脱分極=プライミング)から予測する方法が開発された。抗がん薬カルボプラチンを投与しているがん患者から生検したがん細胞にこの方法を適用して、ポジティブとネガティブとして予測された患者では、生存率に明確な差が現れている。問題は、がん組織中のがん細胞はヘテロな細胞集団であることから、ネガティブだから、この抗ガン薬は使えないという判断は難しいように思えることである。ネガティブであっても効く場合もあるのでは。ただ、治療設計において、最適な薬剤の組み合わせを確信を持って選択するためには有用な方法であることは間違いない。
直截、アポトーシスを起こすかどうかみれば良いのではという意見もある。通常、摘出したがん細胞を培養して、アポトーシスを調べることは色々な問題があったため、本法のメリットは、早期に感受性を高感度に安定してライブセルで検出できることであるという。
投稿情報: 07:59 | 個別ページ
2015年4 月21日 (火)
サナダムシの薬が抗糖尿病薬に?
Nature Med. 昨年の11月号から。Mokkunのプレゼン。Niclosamide ethanolamineという軟体動物(サナダムシ)除去の目的で用いられている薬が、ミトコンドリアの脱共役を起こし、ATPの産生を抑制し、かつ、AMPKを活性化し、抗糖尿病作用を有することが明らかになった。本化合物は肝臓に蓄積し、マイルドな作用を示し、副作用を示さないという。元々の化合物Niclosamideの水溶性を上げたことが副作用の軽減に繋がっているという。メトフォルミンで見られる乳酸アシドーシスも認められないという。本薬は、低価格であり、発展途上国における糖尿病に対する治療薬としての候補になるのかもしれない。
投稿情報: 08:08 | 個別ページ
2015年4 月15日 (水)
処方箋監査:医療の監査役としての薬剤師の役割
昨日、学部1年生向けの薬学概論の講義があった。永井先生には長年、ご講義をお願いしている。薬学教育が世界標準の6年制になり、薬剤師の資質向上も期待されているが、実態はまだまだであるという。現在、敷地内薬局がどうのこうのというのが、まるで医薬分業の問題のようにすり替えられているが、本来は、そうではないという。薬局が病院の敷地内外にあるかどうかではなく、薬剤師の処方監査という、医療の現場のダブルチェッカーとしての機能を果たしているかどうかが重要であり、そのためには、医師や歯科医師が、薬剤師無しに、例外的に調剤できるという法律を改正することが国会において議論すべきことであるという。薬による医療過誤から患者を守ることこそが使命であり、決して、便利さや経営的なことを問題にすべきではないことは言うまでもない。先進国において、医師や歯科医師でも調剤できるようにしている国は日本くらいだという。本来の医薬分業という観点から後進国である。日本は、処方監査が無くても良いと言っているのと同じである。本来の医薬分業は何なのか、薬剤師は処方のダブルチェッカーとしての力量が備わっているのか、6年制の薬学教育における実習等で、処方監査力を付ける教育がなされているのか、医師側も処方監査の重要性をどう認識しているか、などなどを、今一度、考えるべきという。最近、大規模病院の薬局長などから、最近の6年制教育を修了した学生より、4年+修士2年を修了して薬剤師になった昔の学生の方が力量があり、問題解決能力などが良かったように思うという話を聞いた。6年制卒が、数がまだまだ少ないので、どちらの教育体制が良いか悪いかは、一概には言えないだろうが、「医療現場において、客観的な視点を有する科学者=薬剤師」を養成することこそが、本来の医薬分業の成立に貢献するのであろう。科学を実務体験するためにも、最先端の研究を薬剤師を目指す学生に課すことは極めて重要であることは言うまでもない。本来の医薬分業のためには、医師法、歯科医師法、薬剤師法の該当法律の例外規定の削除という法律改正と、可能なら薬学博士の義務化が良いのだろう。フランスなどでは、薬剤師になるのに10年かかるという。医師と同じレベルで議論でき、監査もできるためにはこのくらいの期間が必要なのだろう。
大学生の角帽の本来の意味も学んだ。4つの角は、哲学、法学、天文学、薬学であるという。人類の歴史において、極めて重要な学問の一つであるという。薬師寺など、薬に関わる歴史的な建造物は多いという。薬学は、そのような背景がある学問であり、人類を守るという大義がある。今こそ、資質が問われている。
「薬剤学」に掲載された、崇城大学薬学部学部長の 巻頭言も重要な内容を含んでいます。ファイルはこちらをクリック 75-3_135-136をダウンロード
投稿情報: 08:46 | 個別ページ
心筋梗塞に朗報!?骨髄由来前期細胞由来の新しい組織修復タンパク質
Nature Med.2月号から。ノーマンのプレゼン。心筋梗塞は日本で年間25万人が発症するという。心筋梗塞発作後、再開通療法によって回復しても、虚血性再還流障害などにより、心筋はダメージを受けているという予後不良が問題となっている。予後不良時の心筋の回復のために、これまで、骨髄由来前駆細胞の冠動脈への注入療法が行なわれていたが、その有効性、安全性、医療費を含め、色々と議論があり、その普及は十分ではない。今回の論文は、骨髄由来前駆細胞の心筋回復メカニズムを解明するために研究を実施し、骨髄由来前駆細胞からの分泌タンパク質について、網羅的に詳細に調べた結果、心筋保護作用、血管新生作用を有するC19orf10という新しい分泌タンパク質を見いだした。このタンパク質は、MYDGF (Myeloid-derived growth factor)と命名され、骨髄由来前駆細胞の代わりにMYDGFを投与したところ、劇的に予後不良を改善することがわかった。様々な虚血性疾患に対しても有用である可能性があり、大変重要な研究成果である。今後の研究のさらなる進展が期待される。
投稿情報: 07:59 | 個別ページ