2011年7 月 6日 (水)
未来の糖尿病治療薬に繋がる発見未来の糖尿病治療薬に繋がる発見
今日からは創薬生命薬科学科の学部3年生のデビュー戦。まずは、Kohei君。
イノシトール三リン酸は細胞内シグナル伝達物質として有名であるが、イノシトールに7個のリン酸基を持つものが発見されており、 IP7と呼ばれている。最近は、IP7がアポトーシス促進やインスリン分泌を促進作用を示す報告がなされてきている。 IP6がIP7になるためにIP6K1というリン酸化酵素が関与している。今回紹介した論文は昨年の12月号のCellに発表されたもの。IP6K1のノックアウトマウスを活用しながら、IP7がインスリン刺激後のAKTの活性化を抑制することを明らかにした。IP6K1ノックアウトマウスは高脂肪食を与えても正常レベルの耐糖能と体重を維持できるという。インスリン受容体が刺激されるとIP6K1が活性化され、IP7が産生し、IP7がAKTのPIP3結合ドメインに前もって結合することにより、それ以降のAKTの膜移行やPDK1によるリン酸化が起こらなくなるという。重要な点は、肥満になったり、老齢化していくとIP6K1タンパク質自体が増えてくることである。年取って肥満になると糖尿病等の代謝性疾患によりなりやすい主因がこれであれば、この酵素阻害薬は未来の糖尿病治療薬になりうる。ただ、AKTの活性化を伴うため発ガンとの関係を考慮する必要があるが、IP6K2は全身に分布し、 IP6K1は代謝系臓器に分布するということから、IP6K1特異的に阻害する薬が開発できれば、その可能性を低くできるという。
発表は落ち着いてうまくできていた。今度はスーパーバイザーである先輩のアドバイスなしにどこまでやれるか。その次は、実験に影響しないよう、如何に短い準備期間でパーフェクトの発表ができるかである。さらに力を付けていってほしい。