2011年7 月 5日 (火)
講演講演
先月、横浜で開催された第2回賢人会議に特別講演者として招待され、医師向けに、我々のプロジェクトを紹介する機会があった。8月末にも大分での代替医療研究会にて教育講演をする機会を頂いている。また、この研究会の前には、カナダの大学でも講演する。少しずつであるが、我々が提唱する新たな概念を浸透させていき、臨床における患者のQOL向上につながればと思う.
教育講演タイトル: 慢性疾患に対する新たな物理療法の科学的エビデンス
(要旨)慢性炎症に対する治療薬開発については、慢性炎症に関わる因子を個々にターゲットにする創薬戦略がメインストリームである。しかし、慢性炎症には多くの因子が複雑に関わるため、一分子標的の創薬は戦略的に難しいこと、また、もし、重要な分子を同定したとしても、その分子標的薬を慢性的に服用することの妥当性、同様に、軽微な変化が継続的に進行する慢性病態に対して、薬物治療を老齢化した患者に半永久的に実施することの妥当性など、今一度、従来のアプローチを再考すべきではと考えている。生体は、薬物等の化学物質に反応する機構だけでなく、物理的な刺激にも反応する機構を有している。生体において機能的な意味を有する物理的な刺激には、shear stress、osmotic stress、heat stressなどがあり、近年、様々な病態における物理的刺激の影響についての報告が散見されてきている。我々は、これまで、種々の炎症病態や熱ショックタンパク質に関する病態生理学的および薬理学的な研究を遂行してきた。その過程で、生体反応を指標にしながら最適化した、ある物理的刺激が思いがけない、極めてユニークな生体反応を惹起することを発見した。さらに、このメカニズムをベースにした医療機器「Bio Metronome」を開発し、熊本大学代謝内科学分野の荒木教授らのグループとの共同研究により、基礎的・臨床的な研究を実施し、その有効性に関した多くの科学的エビデンスを蓄積してきた。この研究をさらに深化させることにより、新たな研究分野の提起につながるだけでなく、医薬品を使わずに、あるいは、併用することにより、慢性炎症を制御できる新たな物理療法を確固たる科学的根拠を示しつつ、国民のQOL向上に貢献できるものと確信している。本講演においては、特に、糖尿病ならびに慢性腎臓病に関する基礎的・臨床的な知見を紹介したい。