2016年7 月20日 (水)
前頭側頭型認知症、progranulin、バイオマーカーとしての補体前頭側頭型認知症、progranulin、バイオマーカーとしての補体
Cell 5月号から。Kojiharuのプレゼン。前頭側頭型認知症の原因遺伝子としてProgranulinが重要であることがわかっていたが、そのメカニズムは不明であった。リソゾーム異常は過剰ミクログリア活性化と関連していることは知られていた。さらに補体が神経変性と関係していることも知られていた。この論文では、ProgranulinがLate endosomeからLysosomeへの補体輸送を阻害していること、Progranulin欠損ミクログリアは補体分子の産生を促進すること、補体はシナプス剪定は神経回路機能を調節するために重要であること、Progranulin欠損マウスは抑制性シナプス数を抑制し、相対的に興奮性シナプス数が増加すること、さらに、この状態のマウスの補体タンパク質欠損により抑制性シナプス数が増加したということが明らかにされた。つまり、通常時、ミクログリアは年齢と共に活性化されるが、その際に補体を分泌し、シナプス剪定を促進するが、Progranulinはこの補体分泌経路を抑制しているという。Progranulinの遺伝子変異は、前頭側頭型認知症で認められているが、本研究において、前頭側頭型認知症患者の脳において、ミクログリアと補体の活性化も認められ、前頭側頭型認知症は精神機能の低下に伴って、脳脊髄液の補体タンパク質の量は増加し、記憶障害が主として現れるアルツハイマー病患者では低下していたという。このことは、前頭側頭型認知症のバイオマーカーとして、脳脊髄液中の補体量が重要であることを示している。前頭側頭型認知症の治療法はないため、その患者を受け入れる環境と支援体制が必要とのこと。前頭側頭型認知症の症状を知っていることは重要。