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2014年12 月 3日 (水)

アルツハイマー病の新たな治療薬?!:GABAが悪玉

アルツハイマー病の新たな治療薬?!:GABAが悪玉

Nature Med. 7月号から。Wakkyの紹介。反応性アストロサイトからのグリオトランスミッター(ATP, D-serine, GABAなど)のうち、GABAがアルツハイマーモデルマウスの記憶を低下させることを明らかにした論文。韓国のグループの発表。反応性アストロサイトにおいて、アミロイドβ(Aβ)が作用するとプトレシンがMAOBによってGABAが合成され、Bestrophin 1を介して細胞外へ放出されることが明らかになった。MAOB阻害薬であるセレギリンを処理すると記憶障害などが改善するという。アルツハイマー患者脳において、MAOB発現レベルとGFAP (glial fibrillary acidic protein:反応性アストロサイトマーカー)の発現レベルが高い相関性を示すことも明らかになっている。これまで、アルツハイマーの患者の脳脊髄液のGABA濃度が高いという知見もあり、興味深い。ただ、用いられているモデルマウスが昔のタイプであること、GABAという抑制性の神経伝達物質がだらだらと放出されるだけで、進行性の神経脱落が起こりうるのかなど、どこまで、ヒトのアルツハイマー病の治療薬開発に貢献できる知見であるかどうかは不明である。2008年にGABA受容体抑制薬がアルツハイマーモデルマウスに有効であるという報告が、理研のグループによりPLoS ONEになされていた。今回のNature Med.はそのGABAの産生機序を明らかにしたというところに価値があるのかもしれない。Discussionには、現存のMAOB阻害薬の臨床試験では効果はなかったようであると記載してあったという。

 

追記:同じ時期に、Nature Communicationsにもペンシルベニア州立大学から同様な報告があった。この論文の結果は、少なくとも使われたモデルマウスでは間違いないだろう。

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