2014年12 月 2日 (火)
解糖系をターゲットにした副作用が少ない白血病治療薬開発のために解糖系をターゲットにした副作用が少ない白血病治療薬開発のために
Cell 9月号から。B3のMaru-chanのプレゼン。解糖系をターゲットにした白血病治療薬を開発する際に、正常な血液系細胞への分化、増殖に影響しない(副作用がない)ように、白血病細胞の増殖を抑制させるためにどうすれば良いかを示唆した論文。以下の図を基に、この研究で実施したことをまとめる。通常、造血幹細胞(Stem cell)、造血細胞(progeniter cell)の分化•増殖、白血病細胞(がん細胞)の増殖には、乳酸への好気的解糖が必要であるが、PKM2(M2 pyruvate kinase isoform:ホスホエノールピルビン酸をピルビン酸に代謝する酵素)をノックアウトすると、代償的にPKM1の発現が増えるが、元々、発現量が少ないため、その影響が少なく、ピルビン酸の量が少なくなり、乳酸量も減るという。その場合、造血幹細胞は影響は少ないが、造血細胞および白血病細胞は増殖等が抑制される。また、LDHA (Lactate dehydrogenase A:ピルビン酸を乳酸に代謝する酵素)をノックアウトすると、乳酸が全くできなくなり、酸化的リン酸化が顕著に促進され、活性酸素が大量に産生され、造血幹細胞、造血細胞の分化•増殖、白血病細胞の増殖が顕著に抑制されるという。このことから、解糖経路をターゲットにした抗がん薬の開発において、造血幹細胞の機能を保持しながら、白血病細胞を治療するためには、解糖のレベルをfine-tuningすることを考えないといけないことを示唆している。
本論文のまとめの図