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2013年6 月15日 (土)

第8回トランスポーター研究会年会シンポジウム2

第8回トランスポーター研究会年会シンポジウム2

シンポジウム2:チャネル・トランスポーター研究の最前線1

 1)黄川田先生(農業生物資源研究所):培養細胞の常温乾燥保存は可能になるのか?ー極限乾燥耐性昆虫ネムリユスリカのトレハローストランスポーターの応用ー

 トランスポーターを使ってどのような応用研究が可能か。極限乾燥耐性に関わるTRET1は昆虫の脂肪体(ほ乳動物の肝臓に相当する組織)で多く発現し、乾燥時に大量合成される保護物質であるトレハロースを体液に効率的に放出させる。このおかげで全ての細胞が乾燥から保護される。TRET1を培養細胞に発現させると乾燥保存が可能かという話。ネムリユスリカの培養細胞は乾燥耐性能を有していた。CHOやHepG2がトレハロース存在下で乾燥耐性が増強されているという。培養細胞にTRET1を発現させるとどうなるか。TRET1を高発現させるとトレハロースが細胞内に輸送される。ある程度は乾燥耐性を獲得したが、ネムリユスリカと同レベルには行かないため、プラスαの因子を現在、同定中。いくつかの因子を共発現させると将来は可能かも。

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 2)中島先生(大阪大学):多剤排出タンパクAcrB, MexBの阻害剤結合構造

 グラム陰性病原細菌の多剤耐性の主因として、多剤排出タンパクAcrBおよびそのホモログが知られていた。この阻害薬は多剤耐性対策として有用である。ABI-PPは大腸菌AcrBおよび緑膿菌MexBの特異的阻害薬であるが、一方で緑膿菌の多剤耐性に重要なもうひとつのMexYを阻害できない。タンパク質の構造解析を実施し、ABI-PPの阻害特異性を同定した。

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 3)山地先生(岡山大学):イネの節におけるミネラルの維管束間輸送と分配制御機構

 イネの”節”に注目し、節の発達した維管束系と、そこに高発現するトランスポーター群がミネラルの分配に重要な役割を果たしていることを明らかにしようとしている。節はイネ科植物の構成単位である。その節の維管束間輸送において、ケイ酸、マンガン、亜鉛、銅、カドミウムなどのトランスポーターを介した分配システムが明らかになりつつあり、様々な土壌環境条件における生産性の向上や、コメのミネラル蓄積量の制御による栄養価・安全性の向上に貢献しうるという。

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