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2013年6 月15日 (土)

第8回トランスポーター研究会年会シンポジウム3

第8回トランスポーター研究会年会シンポジウム3

シンポジウム3 異分野の先端研究

 

 1)手老先生(九州大学):粘菌の迷路解きに学ぶ生物の適応ネットワーク

 粘菌の出てくる作品「風のナウシカ」。粘菌の管形成に関する研究で迷路解きは有名である。粘菌が作る管ネットワークは状況に応じて様々な形となる。ある場合はネットワークの最短性を重視し、迷路を解き、ある場合はネットワークの頑強性も考慮したネットワークとなっている。これらのネットワーク形成をモデリング(数式化)することにより、生物から得られる輸送ネットワークについて考察している。

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 2)久保田先生(東京大学):AKT経路の情報多重化によるインスリン作用の時間情報コード

 システムバイオロジー研究。細胞内シグナル伝達経路の多彩な応答をモデル化する研究。以前、本ブログでも紹介した内容。インスリン刺激によってAKTがリン酸化される。その下流分子への影響は、活性化の時間のファクターに応じて変化してくることをきれいに明らかにされている。刺激の時間パターンに応じて作用が異なっている:時間情報コード

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 3)小柳先生(九州大学):転写因子ATF4によるトランスポーター発現リズムと抗がん剤感受性の制御

  昨年のNHKのクローズアップ現代に紹介された話題。ATF4の発現は腫瘍細胞内においても概日リズムを示し、抗ガン薬への感受性に時刻依存的な変動を引き起こしているという。服用する時間を変えるだけという、時間薬物療法の実施は、効果の増大や副作用の軽減が期待できる。ATF4は腫瘍細胞において過剰発現し、BCRPやMRP2などの発現を亢進させ、薬剤耐性化に関与しているだけでなく、ガン抑制遺伝子p53の分解を促進し、抗ガン薬に対する感受性を低下させるという。

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 4)久米先生(京都大学):脳疾患の予防・治療を目指した薬食相互作用

  生体内に存在する神経保護活性物質を用いた治療戦略へのアプローチと食品に含まれる機能性成分基づいた予防的アプローチについて、特に薬と食品を相互活用することによる新しい予防・治療戦略に向けた取り組みを紹介。Nrf2を活性化して抗酸化酵素を誘導する物質を野菜や果物から探索したところ、その結果、青じそに強い活性があることがわかった。この青じそには、DDCという化合物が新規活性体として含まれていることがわかった。

 

 

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 5)池谷先生(東京大学):脳回路のメゾスコピック挙動を捉える。(メゾスコピックとは:ミクロ以上、マクロ未満。)

 機能的多ニューロンカルシウム画像法 (functional multineuron calcium imaging: fMCI)を用いて、1万個以上の多数のニューロンの発火活動を一斉に記録することを可能にし、さらに、シナプス活動の可視化に成功した研究成果を紹介。

を発表する予定が急遽変更。タイトルは

 

 5’)池谷先生(東京大学):「空気を読む」  となった。

 ヒトの脳は電磁波のごく一部しか感知できない。コウモリは小さい脳で超音波を感知できる。人間のセンサーは能力がいかに貧しいか。鳥の脳幹に地磁気に反応するニューロンがある。発表者は、磁気センサ脳チップを自作した。それをラットに装着し、北を向いたら報酬系(外側視床下部)を刺激するようにすると、ラット羅針盤ができた!?。磁気センサを使うことで脳内に認知地図を形成することができるという。つまり、ラットは地磁気情報を間接的に活用でき、失われた機能は代替することができるという。将来の研究は、その神経ネットワークの解明と共に、ヒトとネズミの脳をつないだら、理想的な病態モデルマウスが作成できるか!?という大変夢のある話。

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