2013年6 月26日 (水)
放射線療法の副作用を軽減するために放射線療法の副作用を軽減するために
Nature Med. 2013年4月号から創薬生命薬科学科4年のNormanが紹介。がん治療や骨髄移植などで活用される放射線療法において、口腔粘膜炎が副作用として問題となってきた。米国では第一選択薬としてPalifermin(ケラチノサイト因子)が前投与による予防薬として用いられている(日本は未承認)。今回の論文は、放射線の照射時に活性化されるTGFβシグナル経路は明らかにされていたが、今回の論文は、TGFβシグナル経路を増強するCtBP1という新たな経路を明らかにしただけでなく、これらの経路を多面的に抑制するSmad 7分子を同定した。このSmad分子を細胞内に導入すると予防的だけでなく、抗炎症、抗アポトーシス作用、粘膜上皮増殖促進作用、治癒促進作用などの多面的な作用を示し、治療的にも有効であることがわかった。また、本論文ではTat-Smad7を用いているが、もし、このタンパク質を臨床で使うにしろ、口腔粘膜への局所投与が可能であり、かつ速やかに細胞膜透過するため、他の組織に対する副作用も少ないことが期待されているという。Paliferminには治療的効果は全くないが、Tat-Smad 7の治療的効果が劇的。今後の研究の展開が楽しみな成果である。