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2013年6 月20日 (木)

ビタミンDが肝臓の繊維化を抑制

ビタミンDが肝臓の繊維化を抑制

Cell 4月号から。Takagi君のセミナー。肝障害によって引き起こされる結合組織の蓄積など損傷治癒反応が肝の線維化であるが、再生機能が追い付かないと、線維化は肝硬変など肝機能の低下に繋がる。この線維化に関わるシグナル経路がTGFβ系である。TGFβは肝臓の星細胞に作用し、活性化するとSMAD2,3をリン酸化し、核内移行を促し、線維化に関わる遺伝子の転写を促す。しかしながら、TGFβを直接抑制する手段はなかった。今まで、肝線維症とビタミンD欠乏との関連について報告されていた。本研究では、ビタミンD誘導体がTGFβ誘導の肝線維化遺伝子を抑制し、線維化を抑制すること、ビタミンD受容体とSMAD3がゲノム配列上で拮抗し、SMAD3の転写活性化作用を抑制していることがわかった。TGFβがヒストンリモデリングを起こして初めて、ビタミンD受容体のゲノムへの結合が促されること、ビタミンD受容体のノックアウトで肝線維化が起こることが明らかにされた。本研究の知見は、ビタミンDが病態の進行時(TGFβが作用している時)のみ作用するということを示しており、副作用が少ない可能性を示唆し、大変重要である。ビタミンD誘導体であるcalcipotriolは、ビタミンDより安定であり、ビタミンD過剰症(高カルシウム血症など)の副作用が少ないことから、肝線維化だけでなく、肺線維症や腎線維化などにも有用である可能性が高いという。積極的な大規模臨床試験の結果が楽しみである。肝癌の転移抑制に対する効果も期待できるとの研究もあるという。

 

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