2013年4 月19日 (金)
論文受理論文受理
昨日の今日で、大変タイムリーであるが、今朝、Journal of Biological Chemistryから論文受理のメールが来た。医療機器プロジェクト関連の論文である。内容は、我々の最適化した微弱電流が、p53(ガン抑制遺伝子として有名であるが、慢性炎症抑制因子として注目を集めてきている)を活性化すること、この活性化はアポトーシスの誘導を起こさないレベルであること、この作用は0.1ミリ秒のパルス幅を最大反応とすること、p38MAPKの活性化経路を介すること、G2 arrestが誘導されること、p53のノックアウト細胞では、p21などの発現上昇等は認められないことなど、徹底した多くのデータにより裏付けられている。昨日は、主たる研究者であるFukuda君は誕生日であったが、いいタイミングでの論文受理であった。バイオメトロノーム開発プロジェクトにおいて、このようなレベルの国際誌に論文が掲載されるようになったことは、私にとって大変感慨深いものである。PLoS One、Diabetes、J.Cell.Sci.、J.Biol.Chem.などインパクトが高い国際誌に科学的な裏付けが示された医療機器はあるだろうか。私は、薬(化学的な刺激)を用いて治療する手段をChemical Medicine、物理的刺激を用いて治療する手段をPhysical Medicineとして、様々な学会の講演で提案してきた。物理的刺激も科学的エビデンスを持って、医薬品と同様に扱う時代が本格的に始まりつつあると思う。その先頭に我々がいる、いわゆるパイオニアであるといってもいいのかなと思う。明日の熊本県病院薬剤師会の総会にて特別講演を依頼された。Chemical Medicineしか頭に無い薬剤師にPhysical Medicineというalternative wayがあるのだということを示してほしいという、いわゆる、薬至上主義になりがちな職務に、患者のために新たな考え方を!ということである。
多くの研究者が取り組んでいる時流の研究(本流)と異なり、異端的な研究が認知されていくには、強い信念と長い時間の地道な活動が必要である。認知されていない時は、研究費も取りにくい(研究費の審査委員が評価できない)ものである。このような研究こそ、他者の評価が必要ではない、基盤的な研究費で支援されていくべきであると思う。昔とは異なり、昨今の国立大学の基盤的研究費は年々削減され、ほとんど電気代でなくなっているのが現状である。時流の研究は競争的研究資金を獲得しやすいため、そのような研究分野の大学研究者ばかりになってしまって良いのだろうか。論文実績(数やIF)で教授を採用するのではなく、研究内容や研究分野のユニークさをメインに評価して採用することが必要である。どうしても、いわゆるビックラボ出身者の方が論文実績はある。しかし、そのような人ばかりが採用されると、どの大学も同じ色になってしまうように思う。各研究機関の色を出すことは重要である。今、熊大マグネシウム合金が大変注目を集めている。新聞の記事通り、全ての飛行機に使われるようになったら大変すごい話である。熊大合金については、熊大から多くの関連特許が出されている。成功すれば多くの特許収入が大学に入る。国の税金に依存しない、独立した運営・経営体制を構築していくことを意識することは、地方大学が生き残る術でもあるだろう(基盤的研究環境を独自に確立)。