2012年10 月12日 (金)
iPS細胞の研究に役に立つ成果!?iPS細胞の研究に役に立つ成果!?
今年のNature の9月号に線虫とヒトES細胞をそれぞれ用いた同一グループによる論文2報が発表され、Chosanが紹介してくれた。まず、線虫の論文では、生殖系列細胞への分化を阻害して寿命を延長している変異体について詳細に調べた結果、体細胞におけるプロテアソーム活性が上昇していること、DAF-16がプロテアソームのサブユニットであるrpn-6.1のイントロンに結合し、発現を上昇させること、さらにrpn-6.1の過剰発現により、様々なストレスやポリグルタミン病様モデルにおいて寿命が延長することを明らかにした。
ヒトES細胞を用いた論文では、ES細胞が不死であり、プロテアソーム活性が高いメカニズムとして、上記の線虫と同様のメカニズムが関わることがわかった。プロテアソーム阻害薬がES細胞のマーカー遺伝子を発現低下すること、線虫のrpn-6.1のオルソログであるPSMD11が寿命延長(不死)に関わることを明らかにし,これらが、寿命延長の普遍的なメカニズムであることを示した有用な知見である。iPS細胞でも同様であるという。両論文とも第一著者が一緒であるというのも珍しい。
我々が明らかにした最適化された微弱電流のES細胞の膵前駆細胞への分化促進効果とその微弱電流が有するプロテアソーム阻害作用で説明できるかもしれない。現在、抗ガン薬として臨床で使われているプロテアソーム阻害薬の副作用として、今回の寿命の延長抑制あるいはストレス感受性低下という影響は何らかの表現型としてヒトで認められないのだろうか。iPS細胞にプロテアソーム阻害薬を用いて、分化制御を行ってみるのも有用かも。