2012年10 月16日 (火)
病態時の血管新生と活性酸素病態時の血管新生と活性酸素
活性酸素は悪玉の代表である。今朝紹介されたNature Med.8月号の論文では、血管内皮細胞中のROSなどの活性酸素が、癌や網膜症における血管新生を抑制することがわかった。DNAダメージにより活性化されるATMはROSを抑制し、血管新生を促進するという。一方、内皮特異的にATMを抑制するとROSが産生され、p38αを活性化し、この活性化は内皮細胞の増殖抑制やアポトーシス促進を起こし、病的な血管新生を抑制するという。また、ATMの阻害は正常な血管新生には影響しないという。したがって、ATMの阻害薬がVEGFのモノクローナル抗体bevacizumabに代わる、あるいは併用する血管新生抑制薬になるのではという。実際に、論文の中ではbevacizumabの併用により、癌の抑制作用がさらに増強されている。ATM欠損マウスにおいて、異常な血管新生は起こらないが、抗酸化剤N-acetylcysteinを投与すると異常な血管新生が起こってくるという知見は、抗酸化剤の臨床的有用性という観点から衝撃的である。悪玉因子が場所と場合と量によって善玉になりうることはよくあるが、それを体に良いようにコントロールすることは難しい。我田引水であるが、我々が行っているバイオメトロノームの慢性腎臓病に対する効果のメカニズム解明で、最適化した微弱パルス電流が腎臓組織においてp38を活性化し、腎炎を抑制することを明らかにしてきたが (PLoS ONE, 2012)、ROSの産生に影響せずにp38を程よく活性化するという点でATM阻害より有用であるかもしれない、と良いように考えてみた。