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2012年2 月10日 (金)

本日の話題の続編

本日の話題の続編

本日話題にした、Scienceの論文が手に入りました。単に、抗体等でAβの量を減らすだけでは、行動異常の改善は認められなかったという過去の報告から、今回の知見は大変意味あるということらしいです。論文の最後は以下の一文で締めくくられていました。私がアンダーラインを引いたところがポイントですね。

 

「The ability of bexarotene to rapidly reverse a broad range of deficits suggests that RXR agonists may be of therapeutic utility in the treatment of AD and its antecedent phases.」

 

 

また、経口投与量は100 mg/kgであり、bexaroteneは脳への意向性が高く、副作用も許容範囲であるとのことなどの理由で選択されたRXRアゴニストのようです。また、マイクログリアやアストログリアを活性化するということです。100 mg/kgより少ない投与量ではどうかなど用量依存性の実験は行なっていませんでした(掲載していないだけか?)。この投与量は、実際の臨床用量からすると体重換算で考えればかなり多すぎるが、動物とヒトで投与量に乖離があるのはよくあること。ただ、投与量をグッと減らしても作用が弱いながらでもあれば、40歳代から予防的に、いわゆるサプリメント的に飲むと良いという可能性があるらしい。

 

アルツ研究者のSaito君から早速、以下のような大変有用なコメントをもらいました。

「bexaroteneは 統合失調症も改善できる可能性があるとして一時期(数年前だったか)少し話題に上った事があるのですが(その後 追跡されてるか分かりませんが)今回の論文は結果としては、大変興味深いです。あとは、Tauへの影響があるかないか知りたいところです。臨床への橋渡しとして考えると bexarotene の即効性は確かにありそうですが、アルツハイマー病治療での、Aβを標的とした治療薬の場合、Aβワクチン等の使用時期をpre-symptomaticな時期から行う方向へ考え方がシフトしています。ある程度Aβが溜まってしまったら(どの時点かは未だ不明ですが)、不可逆的な tau凝集へのスイッチが入ってしまうと考えられているため(しかもかなり早い段階で)、できるだけ早い時期で Aβを減らすような「予防的措置」を執らなければならない というような考え方に移行している状況です。逆に言えば、ある程度年齢が進んでから Aβを標的とした治療を行っても、時すでに遅しということです。その時点では tauを標的にした治療が必要になると考えられています。bexaroteneの毒性・副作用が低くくて、statinのように長期投与(予防的に服用)する事が可能であれば、効果が期待できると思いました。」

 

また、ネットで以下のようなコメントを見つけた。彼らは、次に、ヒトで試験を実施していくと明言しているとのこと。

 

"This is a particularly exciting and rewarding study because of the new science we have discovered and the potential promise of a therapy for Alzheimer's disease," study senior author Gary Landreth, a professor of neurosciences, said in a university news release. "We need to be clear; the drug works quite well in mouse models of the disease. Our next objective is to ascertain if it acts similarly in humans. We are at an early stage in translating this basic science discovery into a treatment," he added.

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