2011年6 月 8日 (水)
細胞が生きたままでX染色体のランダム不活性化機構を観察細胞が生きたままでX染色体のランダム不活性化機構を観察
Cellの4月号から。薬学科6年のYukarin。タイトルは「Live-Cell Chromosome Dynamics and Outcome of X Chromosome Pairing Events during ES Cell Differentiation」
X染色体ランダム不活性化の機序を視覚的に証明した論文.X染色体不活性化の開始に重要であるXist RNAが片方のX染色体にのみ蓄積し、X染色体をサイレンシングする。時系列に考えると、未分化ES細胞が分化するとX染色体が動きだし、ふたつのX染色体のXic領域同士が近接(対合)すると、Xist RNAを抑制しているアンチセンスであるTsix RNAの発現を制御する因子が片方のX染色体から解離し、Xist RNAが片方のX染色体においてのみ蓄積するという.二つの染色体が、細胞分化の初期に、一時的に互いに連絡(trans-interaction)しあいながら、片一方をサイレンシングする。これを生きた細胞のまま、経時的に観察(イメージング)したところがこの論文のすごいところらしい。ふたつのX染色体のXic領域同士が近接(対合)する時に関わる因子の同定、Tsix RNAの発現を制御する因子の同定が今後の研究テーマである。300以上の遺伝病がX染色体に関連しているという。この数は、染色体の中でも群を抜いて多い。X染色体に関連する遺伝病は、色覚異常、自閉症、筋ジストロフィー、白血病、血友病など多岐にわたり、こうした疾患の多くは、女性よりも男性にはるかに多く見られるという。X染色体の研究が、これらの病気の治療への展開へと繋がることを願いたい。