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2011年5 月19日 (木)

加齢黄斑変性症の予防、進行抑制に光か!?

加齢黄斑変性症の予防、進行抑制に光か!?

加齢黄斑変性症は、加齢に伴い、網膜の黄斑部が変性することで視力が低下する疾患である。日本の推定患者数は40万人を超え、米国では失明原因の1位という。原因には加齢、喫煙、遺伝、酸化ストレスが言われているが詳細は不明である。加齢黄斑変性症のうち、網膜色素上皮細胞が萎縮するというタイプが90%を占めるという。今朝の話題は、Nature 3月号にて紹介された、萎縮型加齢黄斑変性症の機序を解明したという話である。学部4年のKoyama君が紹介してくれた。現在、熊本のエピジェネティクス学会に参加している関ラボのメンバーも朝ゼミに参加した。本日の主人公分子は、Dicer1とAlu RNAである。Dicer1はmiRNAやsiRNAの産生に関与する。Dicer1のノックアウトは胎生致死であり、発生に関わる多くのmiRNAの生成を抑えた結果であることは既に報告されていたが、細胞の運命が決定された後に網膜色素上皮細胞でDicer1を特異的にノックアウトすると、Dicer1はAlu RNAを分解できず、Alu RNAの蓄積を促し、網膜色素上皮細胞に細胞死を引き起こすという。また、Alu RNAの過剰発現が実際に萎縮型加齢黄斑変性症を引き起こすという。治療的にも、網膜色素上皮細胞において二本鎖Alu RNAを抑制することで萎縮型加齢黄斑変性症が改善するという知見も得られている。予防的な目的で医薬品を開発する場合、アンチセンス療法がどこまで展開可能なのだろうか。今後、臨床応用に関する報告が出てくるかが楽しみである.関君の方法に関する質問に学生が戸惑っていたが、自分で実際に実験をする、あるいはこれを応用するという感覚で論文を読まなければならない。方法のパートこそ、きちっと読み込むことで、そのデータの本質がわかる。論文の流れについてプレゼンするレベルから、論文の裏(本質)を読み取る、次のレベルへとステップアップすることが大切である。関ラボは来年2名がドクター進学希望という。良い雰囲気のラボが構築されてきている。OBの活躍は後輩達の良い刺激になる。

 

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