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2010年6 月 2日 (水)

サリドマイドの催奇形性に関わる分子の同定

サリドマイドの催奇形性に関わる分子の同定

 MOMOチャンが紹介したのは、今年のサイエンス三月号に掲載された論文。サリドマイドの催奇形性のメカニズムがわかっていなかったが、東工大のグループがサリドマイドを化学的に結合した磁性ビーズを用いて、Cereblonという直接結合する分子を見いだした。Cereblonにサリドマイドが結合することで、あるユビキチンE3リガーゼの活性を抑制し、結果的にFGF8という前肢の伸長に関わる分子の発現を下げているという。Cereblonのサリドマイド結合領域に変異を入れて、かつ、ユビキチンE3リガーゼの活性は影響を受けない分子を強制発現するとサリドマイドによる催奇形性は抑制されてくるという。Cereblonと相互作用せずに、多発性骨髄腫に対する有効性が維持されるような誘導体は可能かどうか今後の展開が楽しみである。

 昨日、医薬品医療機器総合機構で活躍されている、熊薬OBの先輩(女性)の特別講義があった。貴重な経験に基づいた多くのためになるお話があった。その講義の中で、医薬品情報のリテラシー能力の重要性が強調されていた。医薬品が市販された後に見つかる有害作用により、一生を台無しにされる場合がある。サリドマイド事件も日本の関係者の医薬品情報のリテラシー能力が高ければ、かなり防げたのだろう。「情報が必要となる時期を知っている人、問題解決にどんな情報が必要か分かる人、必要な情報を見つけられる人、問題を効果的に処理する情報をすぐに評価してまとめることができる人」がインフォメーション リテレートな人だとあった。このような力は、高度な薬剤師(研究者)に求められる能力であるが、リテレートな人になるためには研究の経験が必要であることも言われていた。さまざまな知見の本質を見抜ける力はどこにいっても重要である。また、「ComplianceからConcordanceへ」という、「パートナーシップに基づき、医療者と患者間で医薬品について情報を共有した上で、治療の決定を行ない、そこには患者の知識および意見が充分考慮されること」という上から目線ではない医療の重要性についての話にも共感した。

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