2010年5 月27日 (木)
血管内皮細胞におけるインスリンシグナル血管内皮細胞におけるインスリンシグナル
血管内皮細胞のみのインスリン受容体を欠損すると動脈硬化病態はどう変化するか?今朝のセミナーの論文がこの答えを出した。Cell Metabolismの今月号からShingo(M2)がうまく紹介してくれた。アポリポプロテインEの欠損マウスは動脈硬化の病態を示すが、このマウスの血管内皮細胞のみのインスリン受容体を欠損させると全身のインスリン抵抗性などは変化せずに、動脈硬化症状だけが影響を受け,病態が悪化したという。血管内皮細胞のみのインスリン受容体欠損マウスは以前の報告で、高血圧との関連が示唆されていた。今回は動脈硬化症である。血管内皮細胞のインスリン受容体が活性化されるとeNOSが活性化され、一方、マクロファージの浸潤に関わるVCAM-1は減少させるという。個人的には、今回のような動脈硬化の悪化に関する論文は、組織染色像の定量化など、データの解析に工夫がいるため、結果の解釈は慎重にしている。しかし、インスリンが糖代謝だけでなく血管病変にも重要であることはこの論文でもってクリアに証明されたのかもしれない。今後、この分野の研究の展開はどうなるのだろうかという点も興味がある。