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2010年6 月 3日 (木)

喫煙による肺気腫発生に関わる因子を同定

喫煙による肺気腫発生に関わる因子を同定

 Nature Medicineの5月号から喫煙による肺気腫発生のメカニズムについての論文をTomyが紹介してくれた。マスター1年になったばかりでもう8回目の論文紹介である。かなり良い感じになってきた。肺気腫の多くは、喫煙が原因であり、かつ不可逆的な病変のために、何よりも予防(禁煙)が大切である。1日20本以上の喫煙者7人に1人の割合で発症する。今回の論文では、まず、最初のfigで臨床サンプルにおけるRTP801という分子が肺気腫の進行に伴い増加していることが示され、その後、マウスや細胞を用いたデータが提示されていた。RTP801のノックアウトマウスでは、喫煙による肺障害が起こらなかった。RTP801は、免疫抑制薬rapamycinの標的分子mTORを抑制し、炎症反応を増強するという。今後の展開として興味がもたれることは、ヘビースモーカーあるいは50年以上の喫煙でも肺気腫にならなく元気でいる人たちの肺のRTP801の発現量が低いままか、あるいは、SNPsがあるのかなどの知見が発表されてくるかどうかである。

 ある大学病院では、分煙から敷地内禁煙、そして、入院患者に対して入院時に喫煙した場合は直ちに退院させるという誓約書を出させるという状況にまでなってきているという。我々の研究室でも禁煙を長らく勧めて全員実践してきたが、ここ数年は、いくら言っても、いくら警告しても喫煙をやめない学生が数名いるのは大変残念である(スモーカーの一人が今朝のセミナーに遅刻した!)。彼らの肺でRTP801の発現が恒常的に増加していないことを祈るばかりである。酸素ボンベに頼る生活を送らないためにも、家族に迷惑をかけないためにも、少ない小遣いを無駄にしないためにも、禁煙してほしい。このホームページを見てほしい。

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