2009年10 月15日 (木)
核内リゾリン脂質による遺伝子発現制御核内リゾリン脂質による遺伝子発現制御
今朝は、Science 9月号の論文をEriちゃんが紹介してくれた.マスター最後のセミナーとのこと。リゾリン脂質であるスフィンゴシン1リン酸(S1P)はスフィンゴシンがスフィンゴシンリン酸化酵素(SphK)によってリン酸化されることにより産生される。SphKにはSphK1と2が存在し、両方のノックアウトマウスでおいてのみ表現型が現れ,血管形成不全により胎生致死になるという。今回は、機能がよくわかっていなかったSphK2がHDAC1/2などと核内でコンプレックスを形成しており、SphK2がPKCによりリン酸化を受けて活性化されるとS1Pが産生し、そのS1PがHDAC1/2に直接結合することによりヒストンの脱アセチル化を抑制するということを見いだしている.この知見は、核内S1Pの役割を明らかにしただけでなく、PKCによる新たな転写制御機構を明らかにした重要な知見でもある。面白い内容であった.SphK2ノックアウトマウスに様々な刺激を与えると面白い表現型が得られるのではないだろうか。また、細胞系の実験においてPKCの活性化剤を添加して遺伝子発現に変化があった場合に,SphK2のsiRNAを処置して変化があるかどうかをみたらよいかも。ただ、注意しないといけないのは、この現象が細胞特異的である可能性があること。