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2009年5 月 7日 (木)

今日のNature

今日のNature

本日公開のNature誌に創薬に関する話題があった。前回のブログにもあったヒストン脱アセチル化酵素のファミリーのひとつであるHDAC2についてである。HDAC2の特異的な阻害薬が記憶力増進に有効である可能性を、HDAC2の阻害薬、ニューロン特異的な高発現マウスやノックアウトマウスを使ってきれいに証明している.記憶障害を伴う疾患に対する薬になるだけでなく、受験生などにも嬉しい話だろう.酵素阻害薬であることも創薬的に魅力。これまで、非特異的なHDAC阻害薬が記憶増強に関わることは知られていたが,HDACのファミリーのどのタイプが関与しているかはわかっていなかった。HDAC2はニューロンに多く存在するということ、さらには、S-NO化などの翻訳後修飾を受けることなどが、HDAC1とは異なる表現型を示すのかもしれない。HDAC2の特異的な阻害薬は副作用も少なく有望かも。この論文は,Supplementary Figもかなり多く、読み応えがあるが、ノックアウトマウスのヘテロマウスのファンクショナルアッセイの結果が示されていないのが気になる.発現が半分になった時に効果が現れているかのデータは、創薬の際,薬で50%抑制すれば効果が現れるのか、100%抑制しないと効果が現れないのかということを判断する上で重要である.創薬研究者は、論文を読む時,ホモではなく、ヘテロの結果がどうかを常に意識すべきであることは学生たちにいつも伝えている.ただ、メカニズムがどうであれ、薬が効けばよいのも事実.今後,この論文の内容に関する動向を注目してみたい。

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