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2015年7 月23日 (木)

癌性疼痛における末梢感覚神経VEGFR1の機能的役割

癌性疼痛における末梢感覚神経VEGFR1の機能的役割

Cancer Cell 6月号から。Takadaのプレゼン。癌性疼痛、膵管線がん、骨肉腫は痛みが強い。がん患者のQOL低下をもたらす。鎮痛薬での対応は不十分な場合が多い。これまで、癌性疼痛にVEGFR1が関与していること、VEGFR2は血管新生促進作用により腫瘍形成促進があることはわかっていたが、VEGFR1の役割は曖昧のままであった。本研究において、VEGFR1の選択的なアゴニストで疼痛促進作用が現れたという。痛覚刺激を受容するTRPV1,TRPA1ノックアウトでは、疼痛促進効果は消え、VEGFR1の下流の様々な細胞内シグナル分子 (PI3K, NOS, PLC-γ, Scr, MEK, ERK)によりTRPsの発現に影響していることがわかった。感覚神経特異的なVEGFR1欠損マウスでは、癌性疼痛軽減、神経新生が抑制されていた。がん細胞から産生されるVEGFは、末梢感覚神経細胞に存在するVEGFR1に作用し、神経新生を促すとともに、癌性疼痛を促し、可溶性VEGFR1をマウスに局所投与すると疼痛抑制が認められるという。膵臓がん患者において、膵臓における内臓感覚神経におけるVEGFR1の発現が健常人に比較して高く、また、癌性疼痛の程度に依存して発現が高かったという。現在承認されている、VEGFR1,2,3を阻害するアキシチニブは癌性疼痛に効いてくれているのだろうか?VEGFのモノクロ抗体であるベバシズマブ(アバスチン)に疼痛緩和効果はどうだろう。あまり話は聞かない。この実験においては、マウスの足にがんを作り、熱等に対する痛覚過敏を評価している。この微小環境と、ヒトの膵臓がんにおける微小環境は大きく異なり、マウスだから作用が認められたのかもしれない。

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