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2013年10 月17日 (木)

祝 Development

祝 Development

関西学院大学で独立して頑張っているSeki先生から論文受理の連絡です。自ら切り開いて来た、発生学の研究が花を開いて来ています。さらに、新たな概念に基づく、新規治療法の開発という言葉に惹かれます。良いですね。ますますの活躍を祈ります。

 

恒例により、論文の内容について、以下のように解説してもらいました。

 

生殖細胞による細胞記憶消去機構の解明』

 
論文の概要
 私たちを構成する細胞は『体細胞』と『生殖細胞』の2種類に大別することができます。体細胞は個体の死とともに朽ち果てる細胞ですが、生殖細胞は受精を経て再び新たな個体を形成できる極めて特殊な細胞で、生殖細胞のみが持つ『細胞の若返り機構』の1つとしてゲノム全体の脱メチル化が挙げられます。生殖細胞の起源である始原生殖細胞においてゲノム全体の脱メチル化が誘導されることは、約25年前から分かっていましたが、その詳細な分子機構は現在に至るまで不明な点が多く残されていました。前回の論文では、始原生殖細胞の活発な細胞増殖が、DNA複製依存的な脱メチル化(受動的脱メチル化)を誘導することを明らかにしました(Ohno et al., Development 2013)。今回の論文では、始原生殖細胞特異的に働く因子PRDM14をES細胞に高発現させることで、DNA脱メチル化を誘導できることを発見しました。また、メチルシトシンの酸化酵素TETの機能をノックダウンで、塩基除去修復経路を薬剤阻害および構成因子のノックダウンで機能阻害した結果、PRDM14によるDNA脱メチル化反応が完全に阻害されたことから、PRDM14がメチルシトシンの酸化—塩基除去修復による能動的脱メチル化反応を促進することが明らかとなりました。前回の論文と今回の論文から始原生殖細胞が受動的脱メチル化と能動的脱メチル化を併用することで広範囲かつ高効率でゲノム全体のメチル化を消去していることが分かりました。始原生殖細胞によるDNA脱メチル化に異常が起こると、DNAメチル化異常が世代を超えて蓄積してしまいます。したがって、始原生殖細胞は2つの経路を駆使してDNA脱メチル化を行うことで、世代を超えるメチル化異常の蓄積を防いでいる可能性が考えられます。
 DNAの異常メチル化は、iPS細胞作製の阻害要因や癌を含む様々な疾患の要因となっています。したがって、今後PRDM14の脱メチル化誘導活性を人為的に制御し、高品質iPS細胞の作製およびDNAメチル化異常を起因とする疾患に対する新規治療法の開発への応用を推進していく予定です。
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