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2013年10 月24日 (木)

動脈硬化症に新たな光

動脈硬化症に新たな光

Immunityの4月号から。D1のTasaki君のプレゼン。動脈硬化において、善玉として扱われていたHDL。現在は、HDLを増やせば良いのではなく、HDLの質が重要であることが言われている。今回の論文では、慢性腎臓病の患者におけるHDLに、多くのSDMA(symmetric dimethylarginine)が結合しており、このHDLSDMAが内皮細胞上のTLR2に作用し、HDL自体で認められていたAKTの活性化がおこらなくなり、eNOSの活性化を抑制し、内皮からのNO産生を抑制することが明らかにされた。さらに、内皮細胞上のTLR2の活性化は、SAPK/JNKの活性化を促し、NADPHオキシダーゼを介したROSを産生させ、NO産生を抑制することもメカニズムであるという。面白いのは、マクロファージなどTLR2の活性化には、TLR1やTLR6とのヘテロダイマーが必要であるが、この内皮におけるHDLSDMAの作用にはTLR2のみが関与しているという。慢性腎臓病患者では、内皮機能障害や高血圧の罹患率が高く、その症状を有する患者は、心血管イベントのリスクや死亡率が高い。もし、HDLとSDMAの結合を阻害する薬ができれば、あるいは、高血圧治療に使われている既存薬にそういう作用があれば、有用であろう。また、臨床血液検査において、単なるHDL量を測定するのではなく、HDLSDMAなどのサブクラスのHDLの測定をするようになる時代がすぐそこに来ているのかもしれない。SDMAの産生部位、産生機序などはどうなっているのか興味が持たれる。このSDMAに関する研究成果の重要性はは、最新の臨床系論文で明確に裏付けられて来ている。SDMAでPubMedを検索してほしい。

1-s2.0-S1074761313000885-fx1.sml

1-s2.0-S1074761313001441-gr1.sml

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