2012年5 月23日 (水)
チアゾリジン誘導体の抗糖尿病効果に影響する分子チアゾリジン誘導体の抗糖尿病効果に影響する分子
Cell 2月号からの論文をMoriuchyが紹介。朝ゼミのデビュー戦。FGF21という分子はインスリン抵抗性を改善することやPPARγアゴニストの作用を増強することは知られていた。しかし、そのメカニズムはあまり分かっていなかった。本論文により、チアゾリジンを投与すると白色脂肪細胞のPPARγを介して、ターゲット遺伝子の転写を活性化し、その中のひとつにFGF21があり、FGF21がオートクリン的に作用し、PPARγのSUMOが抑制され、PPARγの分解が抑制され、チアゾリジンの効果を増強するという。
FGF21は、これまでの研究で、絶食により肝臓からFGF21が産生され、肝細胞に血液を介して糖新生を促進することはわかっていた(PPARαの関与)。今回は、食後に、白色脂肪細胞からFGF21が産生され、PPARγ存在下でオートクリン的に白色脂肪細胞の増加することがわかった。FGF21の作用がなくなった状態では、PPARγアゴニストは主作用も副作用もなくなるという。2型糖尿病患者のFGF21の血中濃度は高いという。
昨年の5月のNature Med.に脳におけるPPARγをノックアウトするとチアゾリジンの肝臓におけるインスリン抵抗性改善効果が見られなくなるという報告があった。このノックアウトマウスは高脂肪食を与えても体重は増加しないという。2010年7月のDiabetesに、脳内のFGF21が肝臓におけるインスリン抵抗性を改善するという報告があった。今回の報告と関連付けると脳においてもFGF21がニューロンのPPARγの分解を抑制しているかもしれない。さらには、チアゾリジン誘導体の中でも、BBBを通りやすいものとそうでないもので有効性に差異が出ているかもしれない。