2012年4 月12日 (木)
難聴とミトコンドリアストレス難聴とミトコンドリアストレス
ミトコンドリアのDNAに変異があっても全身の症状が現れる訳ではなく、組織特異的な症状が現れる。たとえば、ミトコンドリアのリボソーム小サブユニット (28S)の 12SrRNAにあるA1555G変異が難聴を引き起こしているが、そのメカニズムを解明することができたという論文がCellの2月号に発表された。今朝の朝ゼミでM1のYukiちゃんが紹介した。A1555G変異がその周囲の配列の12rRNAに過剰なメチル化を引き起こし、その結果、リボソームに構造変化が起こり、ミトコンドリアで活性酸素が過剰産生され、組織特異的にアポトーシス促進性ストレスシグナルを活性化し難聴を起こすという。まだまだ不明な点が多いが、ミトコンドリアのリボソームRNAのメチルトランスフェラーゼのトランスジェニックマウスでも同様な難聴が起こるという。A1555G変異部位はこのメチルトランスフェラーゼの選択的認識部位という。興味深いことに、アミノグリコシド系抗生物質が有毛細胞に活性酸素を産生させるという以前の報告と、A1555Gの変異があると過剰メチル化により活性酸素が増加するという今回の知見を併せ考えると、A1555Gの変異がある人では、アミノグリコシド系抗生物質が難聴を引き起こしやすいというメカニズムとして納得がいく。となると、内耳の活性酸素の除去により、難聴が改善する可能性があるのか、あるいは、脱メチル化薬を処置するとどうなるのかなど興味がある。