2012年1 月17日 (火)
心不全とp53心不全とp53
心不全がインスリン抵抗性を引き起こす分子メカニズムに脂肪細胞におけるp53の活性化が必要であることを明らかにした論文の紹介をM1のjyuriaがしてくれた。心不全が交感神経系を活性化し、その結果、脂肪分解が起こり、その際、ROSが産生され、脂肪組織の p53を活性化し、 NFkBを介して炎症性サイトカインの産生を促し、インスリン抵抗性を上昇させるという。それぞれの阻害薬で心不全によるインスリン抵抗性が改善するという。正常時の心筋では遊離脂肪酸をエネルギー源としているが、心不全時の心筋では、グルコースが使われる。ただ、インスリン抵抗性が引き起こされると心不全時の心筋はエネルギー源としてグルコースを使えなくなり、遊離脂肪酸だけをエネルギー源として心機能低下を賄えなくなるという。大動脈狭窄による心臓への圧負荷によりインスリン抵抗性を誘導するところが面白い。p53は両刃の剣であり、強い刺激(病態)により活性化されるp53は、病態の悪化に繋がるが、p53をほどよく活性化すると病態の進行抑制に繋がると思う。非選択的なβブロッカーを心不全時の心負荷を軽減するために使えば、心臓だけでなく、脂肪細胞にまで影響して、心不全の進行を抑制することができるかもしれないという点が重要かもしれない。