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2012年1 月12日 (木)

乳癌の骨髄転移のメカ

乳癌の骨髄転移のメカ

今年度、第1号朝ゼミは、Cancer Cell 2011からM1のOkaちゃん。年間約4万人の乳癌患者が発生し、約1万人が死に至るという。患者の約3−4割が転移性再発するという。特に骨髄への転移は、骨折や激しい痛みがある大変つらいものであり、これらの症状は骨細胞の活性化による溶骨であることが2011年に報告されている。今回の報告は、遅発性の乳癌骨髄転移マウスモデルの作成に成功したことが大きなポイントである。過去に報告されている骨髄転移に関わる遺伝子をノックアウトした乳癌細胞を用いたところにこの実験のユニークさがある。上記の遺伝子以外に遅発性に骨髄転移に関わる分子を発見した。それがVCAM-1である。VCAM-1は様々なガン細胞に高発現することは知られていたが、骨髄に転移し、破骨細胞を活性化し、骨をぼろぼろにしていく分子の本体がVCAM-1であるという。VCAM-1抗体あるいは、破骨細胞側の相互作用分子であるintegrin alpha4抗体が遅発性の溶骨現象を抑制した。臨床的に示唆するデータも掲載されており、骨髄転移性乳癌細胞に発現するVCAM-1が前駆破骨細胞の遊走、活性化が重要であることは間違いないが、vivoにおける関与の程度(本当に治療的なターゲットになりうるか)についてはさらなる検討が必要であると思う。vivoの実験において抗体の投与は静脈内ではなく心室内投与をしていることはテクニカルなポイントかもしれない。ただ、心臓にダメージを与えず、週2回の頻度で連続投与していくことはテクニカルに難しいと思う。

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