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2011年6 月 1日 (水)

炎症によるマウス大腸がん発生のメカ

炎症によるマウス大腸がん発生のメカ

Journal of Clinical Investigationの5月号から。Mikiちゃんの発表。

大腸がんを促進する慢性炎症をheparanaseが増強する。潰瘍性大腸炎は日本では10万人ですが、毎年約5000人の割合で増加している。長期に及ぶ炎症はガン化につながるという。マクロファージの活性化により産生された炎症性サイトカインが結腸上皮細胞におけるheparanaseの遺伝子発現を上昇させる。不活性型のheparanaseが分泌され、マクロファージから産生されたカテプシンLが不活性型のheparanaseを活性型へと酵素分解し、活性化されたheparanaseが上皮細胞のヘパラン硫酸を分解する。その結果、ガンの浸潤や転移、血管新生を促進するという。臨床的には、炎症性腸疾患であるクローン病や潰瘍性大腸炎の結腸上皮細胞でheparanaseの発現が上昇しているという。今回は、マウスでの実験であり、かつ、大腸がん誘発法がアゾキシメタンという薬剤とデキストラン硫酸ナトリウムの投与によって誘発したモデルであるため、このheparanaseの影響があったかもしれない。厳しい見方をすれば、上皮細胞表面のヘパラン硫酸が少なくなったことにより、これらの薬剤の細胞への移行を促進された結果なのかもしれない。in vitroでLPSによるマクロファージの活性化がheparanseにより劇的に増強されるというデータがあるが、これもLPSのTLR4へのアクセスを単に増加しているだけかもしれない。論文を否定的に見ることも必要である.

 

今朝のメールからの情報:JAK阻害薬の第三相試験が終わり、難治(抗リウマチ薬に不応)の慢性リウマチに著効を示したという報告がEUリウマチ学会であったらしい。TNFαの抗体やIL-6の抗体医薬に加え、新たな武器が追加されたのは朗報かもしれない。

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